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お妃さま誕生物語  作者: violet
本編
24/102

始動

ブリューダル王国の革命もこの為の布石でした。

護衛の一部が怪我したらしい、屋敷が慌ただしい。

リヒトールが帰宅したはずなのに、緊張した空気にシーリアは気が付いた。

「リヒトール様はご無事なの?」

護衛の一人に聞いてみると、

「もちろんです、我々がそのような失態をするはずがありません。」

彼らの自信に安心する。

でも、護衛が負傷するような何かがあったと思うと、リヒトールが心配で仕方ない、早く姿を確認したい。


たくさんの人が動いてる、何かが起こる、誰も何も教えてくれない。

伝令馬や伝書鳩が放たれている、ここに来てから商会の仕事で見慣れたものだが、何かが違う。

今、私のすべきことは待つことだ、私が騒いだら邪魔になる。

リヒト様が、私の全て、この恋を得た時から、穏やかな人生ではないと知っていた。


私兵隊と武器庫の方が特に騒々しい、侍女達も普段と変わりないようにしてるけど、わかる。



かがり火が用意され、大量の馬の(いなな)きがする、火薬の臭い。


「シーリア」後から声をかけられた。

「リヒト様」お帰りなさいのキスをする。

リヒトールは軍服らしきものを着ていた、マクレンジー軍の軍服なのだろう、この国の軍服ではない。

黒地に金ボタン、機能性重視だが、詰襟に腕章、腰には剣、黒髪のリヒトール自身が黒い獣のようである。

「かっこよすぎ、ドキドキが止まらない。」

シーリアの赤い顔を見て、リヒトールの機嫌が良くなったのがわかる。

「もう一度出かける、しばらく帰れないと思う。」

一体何をしようとしているのか、商人が軍服を着るなんて、危険なことに違いないのだ。


リヒトールはシーリアの手をとり、騎士のキスをした。

「私に幸運を願ってくれ。」


リヒトールに連れられて玄関先に行くと、すでにリヒトールの黒い大きな軍馬が用意されていた。

馬にまたがると、リヒトールはシーリアに振り返り大声をあげた。


「我妃に国を盗ってこよう!!!」

兵士たちの歓声があがる、それは大きく振動しているように聞こえる。


我妃と言った、クーデターだ!

ヒステン王国を潰して乗っ取るつもりなんだ。

リヒトールにとって、ブリューダル王国の革命は実験だったんだ、この為の。

瞬時にさとり、リヒトールに答えるように声を張り上げた、

「私の全ての兵に幸運を。必ず生きて戻ってきなさい。」

私の役割は、兵士を鼓舞することだと。

私の言葉に答えるように、大地が震えた、それは兵士達の息吹だ。


国なんていらない、リヒト様だけでいいのにと思っていても口にだせない。

これがリヒトール・マクレンジーなんだ。

長い夜が始まる。


どこから集まったか、長い軍列がすべて王城に向かった後、パトリシア達侍女に周りを守られて自室に戻った。

これからマクレンジー邸は警備が手薄になる、行動は最低限に抑えねばならない。

毎夜、リヒトールに愛された部屋で今夜は一人無事を祈る。


自分に武力があったなら、一緒に駆けていけただろうに、もしなんて考えても仕方ない、武術は訓練したけど、人並み以下だった、付いて行っても足でまといだ。

信心深いとはいいがたいが、この時ばかりは神に祈りたい。

どうか、あの人を守って。


クーデターで無血というわけにはいくまい、その犠牲はどうなるの。その誰かにも私のように大切に思っている人がいるはず。

リヒトール様が私に妃を与えるなら、その犠牲はどれほどのもので、私にその価値があるのか。


考えて答えがでるものではない、やめた、考えるのやめた。

できることをするだけだ、これから私はその犠牲の上に生きていくんだから、私が後ろ向きになってどうする。




側近に守られてリヒトールの黒い軍馬は駆ける。

先頭をエメルダ連邦国から戻ってきたシュバルツ、その後をリヒトール、脇をケインズ、ウィリアム、後ろをポール、ダーレンが固めて疾走する。

軍馬の蹴る土煙で辺りがくすんでいく。


夜明け前に城を制圧したい、夜は始まったばかりだ。



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