マクレンジー商会
リヒトール・マクレンジーはヒステン王国で生まれ育ちました。
マクレンジー商会の本拠地もヒステン王国であります。
ヒステン王国にあるマクレンジー商会本部は、広大なマクレンジー本邸でもあった。
それは、王宮がごとく、住居部と執政部に別れており、厳重な警護に守られていた。
ブリューデルから、移ってきて驚いたのは、デュバル公爵邸で働いていた、侍女のアンヌと騎士2名がこちらで待機していたことだ。
「お嬢様、お会いしたかったです、でも言葉とかできないと役にたてませんからこちらで勉強をして準備してました。」
アンヌが抱きつかんばかりに喜んでいる、もちろん私も嬉しい。アンヌも、騎士のジョージ、ロジャーも貴族の子弟だったはず、よく決心してきてくれたことだ。
子供の頃から一緒なので、この3人は、私が思うより早く、私の行動の先回りをしてくれる。
「こちらの地形や習慣も解ってないと、緊急時の対処に不備がでますからね。」
「私達二人とマクレンジー側のものでお嬢様の警護になりますから、ご安心ください。」
3人を派遣してくれて、お父様ありがとうございます。
リヒトールはとても忙しい。
必然的にシーリアは一人の時間をもて余しており、お茶をする相手もアンヌ、キャサリン、セシル、パトリシア達侍女となる。
そして、今日も邸宅の裏手の庭の散歩と称する探検となる、それは警護からリヒトールへ報告がすぐにいくことになってる。
庭のはずれでは警備というよりは軍隊といえる規模の私兵が訓練をしていた。
商品移送の警備だけでなく、ここから精鋭された者が、マクレンジー及び各国のマクレンジー商会幹部の警護になるらしい。
当然、武力だけでなく、言語力、学力も必要とされ、ブリューダル革命にもここからたくさんの精鋭達が回された、そのまま連邦国の幹部となる者もいるらしい。
戻ってくる者が今後、警護だけとは考えにくい、元が優秀なうえに革命の経験者達。商会の諜報機関にいく者も多いだろう、情報を持つものが勝つんだから。
側近になる者も、この部隊を経験させるらしい、元々頭脳が抜きん出てるのに武力もつけるとは、それを統べれるのはリヒトールならばこそと思う。
シーリアは気がついてないが、シーリアが見学していると、兵士の士気があがる。
シーリアの銀の髪は 遠くからでもわかるし、美しい。
ましてや主君の妻なのだ、自分達が守るべき人物がみている。
ここを勝ち抜けば、護衛に付くかもしれないのだ。
演習場が広すぎて、あまりに遠くから見学してるため、子細のわかる大きさではないが、女神のように美しいときくし、ブリューデルでの聖女の話は誰もが知っている。
シーリアにしてみれば、わずか10日程しか、教会に奉仕に行ってないのに、聖女とはおこがましい、我ながら美人は得だ、ぐらいにしか思ってないが、この顔が役に立つなら精一杯使ってやろうぐらい思ってる。
シーリアのキラキラ輝く髪にひかれたのか、大きな鳥が舞い降りてきた、光る物を集める習性のある鳥もいるぐらいだ。
シーリアを保護しようと、兵士達が我さきにと駆けつけるが、それを許すようなシーリアの護衛ではない。
鳥も途中で空へと舞い戻ったが、ある程度の大きさでシーリアを見た兵士立ちが歓声をあげた。
彼らの理想の姫がそこにいたのだ、マクレンジー商会の私兵部隊はダークな仕事が多いが、そこに大義名分ができた瞬間だった。
もともとは、冒険者くずれの警備兵ぐらいしかいなかったのが、リヒトールの時代に強化され、商会の発展と共に造兵、武具の補強、訓練の強化がなされた。
国の軍隊のように貴族の子弟などのお飾り指揮者はいない、完全に実力主義、贅潤な資金をバックに褒賞がでる。出自の怪しい者でも受け入れ、ここで生き延びれることだけが、入隊資格だ。
現在のマクレンジー商会の幹部にあたる者は、リヒトールに心酔しているものばかりだ。
いつの世にも悪魔に魅入られる者がいる、それが、戦闘部隊の拡大に拍車をかける。
その日リヒトールはヒステン王宮に、財務長官から懇意された税調整に来ていた。
ここ数年、ヒステン王国は不作が続いてる、天候の影響もあるが、農地改良もしない、マクレンジー商会の納税に頼りきっている。その莫大な税は王族や貴族が潤うだけで、国民はあえいでる、それがまた、マクレンジー商会の部隊への志願者となる。
「今年は、商会からの納税はないものと思われたい。
何度も言ってきたはずだ、このままでは移動も含めて、マクレンジー商会も考える、と。」
増税を請うつもりが、リヒトールの言葉に王と長官が真っ青になる。
「ヒステン王国のマクレンジー商会はなくなる。」
そう、もうヒステン王国のマクレンジー商会はなくなる、すでにその段階にきている。
突然、ドアが開いて第2王女が入ってきた。
「リヒトール様、いらっしゃってるなら、お呼びくださいませ。」
過去に抱いたことがあったかもしれないが、女の数が多すぎて覚える気にもならなかった類、リヒトールは眉ひとつ、動かさず無視する。
王は娘をあてがって、マクレンジー商会から金をださせようとする、妻にさせたい。
王女の方も、リヒトールの特別だと思っているから、腕を組もうとする。
「触るな。」
まさかの言葉に王女が目をむいて言う、
「今夜は私の部屋に来てくださらないのですか?」
側近のケインズが、王女をリヒトールから引き離す。
「リヒトール様、こやつを叱ってくださいませ、私はリヒトール様の側にいなければならないのに。」
王女に続いて、王も口をだしてきた。
「娘はマクレンジー会長の寵愛を受けてから、ずっと待っております。そろそろ結婚の時期を決めるべきでしょう。」
巨大商会とはいえ平民、王女が降嫁するのだ、ありがたかろうと言ってくる。
「どこに寵愛がある? ただの性処理の女だろうが、しかもたくさんの男のな。」
リヒトールは王を馬鹿にしたかのように、口の端をあげて言った。
王女は真っ赤な顔が真っ青になった。
「私には新婚の愛しい妻がいる、彼女を手に入れるまでの処理するところだっただけ、それさえ、もう必要ないがな。」
リヒトールが爆弾を落とした。
「その者を捕まえろ!!」王の叫びに近衛兵がなだれ込んできた。
「ケインズ、始めるぞ。」
リヒトールは慌てることなく、近衛兵のいる扉に向かって歩いて行く。
剣を抜いた近衛兵が仲間のはずの他の近衛兵を切り捨てた、数人の近衛兵とどこからか現れた私兵に守られてリヒトールとケインズは王宮を後にした。