マリーベル
マリーベルとカルバン
これで5人、最後になります。
突然、革命軍が屋敷に来て、王宮に連れて行かれたかと思ったら、平民に文字を教えることになった。
貴族を壊した平民になんて触りたくない、怖い人達ばかり。
平民が貴族に遣えるのは当たり前のこと、貴族は尊い血筋なのよ。
監視役兼護衛って言ってたけど、なんなの、この大きな体、日に焼けてるのか肌黒い、怖い。
あの女も、聖女って言われて何が目的だか、胡散臭い、外国人だっていうし。
嫌い、嫌い、全部嫌い、平民って臭い、ドレスを握らないで、汚れちゃうでしょ、子供って図々しいんだから。
「マリーベル。」
返事したりしないわ、紳士はもっとスマートだもの、こんな巨体じゃない、嫌いよ。
「すねてるのか、わがままだな。さすが貴族の腐った令嬢。」
なんですってーーーーーーーー!
「お前は、ここに文字を教えに来た、本を読めるようにさせないといけない、
自分の価値をアピールしないと生き残れないってわかってるのか?」
「じゃ、殺せばいいじゃない!」
「俺たちは貴族全部殺したいぐらい憎い、でもそれじゃ貴族と一緒。
他人の命をもて遊んだりしない、必要な人間に必要なものを与える。」
小さな女の子が私の手を握った。
「お姉ちゃん、怖い顔してる、貴族様みたいだよ。
貴族様は怖いんだよ、
お金を払わないで、お店の物を持って行くんだ、だから、食べ物を買うお金がないの。
ここで勉強したら、母さんのお店手伝えるんだ。仕入にだって行ける。
朝と夜にご飯が食べれるようになりたい、汁だけのスープじゃお腹すいちゃうから。」
返す言葉がないとは この事だろう、革命で国の事を知った、
この国では、貴族は悪役だった、自分達の好き放題をし、平民に押し付けた、殺される程のことを長い年月続けてきた、
知らなかった時には戻れない。
声が震える
「私は、私は…」
「マリーベル、泣いていいんだよ。」
「そんなこと、できない、逃げるなんてできない。」
「俺の名前は、カルバン・キッシーニという、カルバンと呼べ。」
「お姉ちゃん、うちのスープは汁だけだけど、母さんが作るの温かいんだよ、すごく美味しい。
今度、母さんに作り方聞いてくる、食べたら怖くなくなるよ。」
「カルバン、私どうしたらいいの、何も知らなかったの、何もしてこなかったの。」
「俺が教えてやるよ、俺のスープも旨いだんぜ。」
「私、料理なんてできない。」
「文字も計算も教えれるじゃないか、それでおあいこだ。」
カルバンが私のほっぺをつまんできた、
「ほら、泣いてるのはほっぺたが痛いからだぞ。」
本当に痛いんだから、このバカ力、泣きたくないのに。
「痛い。」
小さく漏れた言葉に、あわてふためいてる、
そんなに優しくされると辛い。
私は、知らないで、どんなことをしてきたのか、恐い。
「マリーベル。」
カルバンが私の名を呼ぶ。
例え、何をなくしても誇りだけはなくしたくない。
「いらっしゃい、文字の練習をしましょ。」
女の子の手を握り返した。