フリージア
広間に5人の女がいる、俺達は10人。女達が街の教会で子供に文字や算数を教えるから護衛ということらしい。
それぞれが女を選び、余った5人は待機らしい。
俺達が選ぶ側で、女は選ばれる側だ。
王城に攻めこんだ時の武勲のあった10人の若者ばかりだ。
恋人がいるかはわからないが妻はいない、この意味がわからないバカはいない。
女は貴族のお嬢様ばかりで、町娘より見かけは綺麗だ、中身は腐ってるだろうけど。
俺は 一番泣いていて、おとなしそうなのにした。
「あの。」
さっきから、あのあのとうざい。
「手を離して。」
「あぁ?」
「あの手を。」
よくも泣き続けるよな、水分がもつもんだ、と感心さえする。
「おまえみたいなトロそうなのが街ではぐれたらお仕舞いだぞ。」
涙が大量にあふれでた、俺にしては最大限に優しく言ったぞ。
さすがにお貴族様、ついていけん。
「あの。」
「なんだ!」
「おまえではなく、フリージアです。」
へぇ、言い返してきやがる、泣き止まないけどな。
「俺は、ジェフだ。」
「ジェフ様。」
フリージアがにっこり笑った。
まいった、鼻血がでるかと思った。
こんなにひ弱なのに、魔女だ。
「子供達が持ってる、連れて行くから、手を離すなよ。」
子供に文字を教えている様子を覗き見るが、子供にまで振り回されている。
とても悪役に見えない、貴族社会ってこんなのでも、生き残れるのか?
街じゃ最初に淘汰される。
しまいには、子供になだめられて、「俺が守ってやるよ。」
おまえは10歳だろが、フリージアは21だぞ、って俺より年上か、見えない。
あいつが生きていくためには、家がいるな、子供育てられるかな、
あいつ自身が子供みたいだし。
やばい、革命は王政廃止をしただけで、まだ先はどうなるかわからないのに、
未来を考えてしまう、あいつのために。
今まで貴族の生活なんて知らなかったし、触れることもできなかった。
革命があったからこそ、あいつが落ちてきた、俺が登ったところに。
これからも登ってやる、あいつが生きやすいように。
「あの。」
あぁ、あいつが呼んでいる。