表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/1

01話 空気だった俺、異世界に空気として転生する


 死ぬ前にもっと人に触れ合うべきだった。

 人とのコミュニケーションが苦手だからって、あまり空気になりすぎるのはよくない。


 そんなこと死んでから後悔しても後の祭り。俺は異世界に空気として転生した。

 形の無い存在。

 そもそも存在しているのかさえ怪しい所だが、意識はあるのだ。

 しかし困ったことに自力で移動する事が出来ない。

 

 ふわふわ~ふわふわ~


 風に流される、空気。俺。

 

 そんな空気な俺にも不思議なことに五感がある。

 目がないのに視覚ははっきりとしているし、鼻もないのに臭いがする。耳だって付いてないけど音も聞こえる。木に当たれば痛いし、酸素おいしい。

 

 初めは訳が分からなかったさ。

 今年で三十路に差し掛かる独身男性の休日。歩道橋を歩いてたら元気な小学生三人組が走ってきて、避けたらバランス崩して道路にドーン。

 あ、これ死んだなー。俺死んだわー。

 って思ったら、本当に死んじゃったのね。

 で、気付いたらすげー長い列の最後尾に立ってたのよ。

 周り明るすぎて、なんかもくもくしてるし天国かと思ったね。まあ、天国だったんだけどさ。

 それで、どんどん列が進んで行って一時間ぐらい進んだのかな。なんかとてつもなくでかい椅子に白いローブを着たおっさんが座ってるのが見えてきて、なんだあのおっさん! って思った。

 もしかして神様? なんて思いつつ見てたらおっさんの前で人がどんどん消えていくじゃない。怖っ!

 でも止まるわけにもいかなくて、あっという間に前から五番目ですよ。

 そしたらおっさんの声が聞こえて来て言ったんだ。


「はい、お主は第三世界の没落貴族。はい次~。はい、お主は第十六世界の犬。はい次~。はい、お主は第三十二世界の杉の木。はい次~。お主は第九世界のピーナッツ」


 何事かと思ったね。

 しかも次俺の番だし。でもおっさんの胸にクレヨンか何かで雑に『輪廻転生担当、クボタ』って書いてあった時は笑ったよ。


「はい次~ん? はい次! 早く来んか! わしのリズムを狂わすでない!」


 この時から嫌な予感はしてた。

 だって俺、目の前にいますもん。何言ってんだこのおっさんって感じですよ。


「んん? なんじゃおったのか。何何? なるほど道理で気付かんかったわけじゃ」


 手に持った名簿みたいな紙を見ていきなり笑いだすから正直イライラした。


「お主は第五世界の空気じゃ」


 …………。


 当時はそりゃあ唖然としたよ。

 開いた口がふさがらない気持ちだったけど、そんなこと気にする間もなく転生させられた。

 気付いたら暗い森の中にいたんだ。

 空気って感情も何も無機物じゃないですか。だからきっと前世の記憶とか持ってなかったらこうはならずに、意思をもたないただの空気としてやっていけたと思うんですよね。

 でもどうしてか死ぬ前の記憶覚えちゃってまして。

 そのせいか空気の中でも孤立して、意思を持った空気が誕生してしまったわけですよ。


 そんなこんなでこの世界に転生して三日はたったかな。未だに森の中を彷徨っています。

 だって自分の意思で動けないんだもの。

 同じ所をふわふわと行ったり来たりしてるわけですよ。

 しかもまだ一度も人間に会ってない。

 もう、この世界に生物はいるのか――って話です。

 異世界とは言っても元の世界ではないと言うだけであって、ライトノベルとかアニメに出て来る異世界ファンタジーな世界なのかは定かじゃない。

 そうだといいなとは思うけどね。

 いや待って俺空気そのものだからどうしようもないわ。

 でもまあ、いつかはこの森から出たいな~なんて思ったりしてます。


 だから今日も俺は生前同様、流れに身を任せる。


 ふわふわ~ふわふわ~


(……! あ、あれは!? ドラゴン!?)


 驚いた。

 こんな森の奥にドラゴンのような生物が横たわっている?

 遠くてよく見えないけど、きっとドラゴンに違いない! やったぞ! なにはともあれこの世界に転生してから初めての生物だ!


(頼むから近づいてくれ~! 風よ、俺の見方をしろ~!)


 なんて中二病風に呼びかける。音にはならないけれど。

 どうやら俺には力があるらしい。なんてただの偶然ではあるがそよ風がいい具合にドラゴン? の元へと俺を運んでくれる。ありがとう! そよ風!

 もはや自分が空気に転生されたから、そよ風も元は人間の転生者なのではないかと思えてくるのだ。

 そうしてようやくドラゴン? の元へ辿り着いた俺は落胆した。


(し、死んでる……てかちっさ!)


 ドラゴン? の正体はまあ、ドラゴンではあったのだが、無残にも足を食いちぎられて絶命した子供のドラゴンだった。

 実際には食いちぎられたのかは分からないし、子供なのかも定かではないけど。

 しかし残念だ。せっかく初めて生物に会えたと思ったのに。

 でも、ドラゴンがいる世界なのか! それはちょっぴり嬉し――くないか。だって空気だし。


(はぁ……そよ風よ~。もういいよ~。とにかくこの森から外に出して下さいー)


 そう言うと、そよ風が再び吹き始める。

 もしかして俺にはそよ風を扱う力が!? あっても嬉しくないな。

 もういいや。そよ風に身を任せて再び。

 

(ふわふわ~ふわふわ~ってあれ? 動かないな)


 突然、俺の体――と言ってもいいのか分からないが、俺という意思を持つ空気全体がドラゴンの残骸の前で動かなくなってしまったのだ。


(あれ? なんか吸い込まれ――)


 スポンッ!!


 音を立てて何かに吸い込まれた様だ。いったい何が起こったんだ?

 相変わらず視覚ははっきりしているけど――って、


「いってえええええええええええ!!!!!!」


 なんだこれ!?

 足超痛い! なんなのこれ! てか足ってなに!? アイアム空気! 足ないよ?

 え、待って。痛い。死ぬ。死んじゃう。一回死んでるけど、また死んじゃう。てか、空気って死ぬのかな? なんてどうでもいいわ! 


「ぐああああああああああああああああああああああああああああ!!!!」


 気付いた。今気付いた。

 なんか俺今ドラゴンになってる! 目の前で死んでた子ドラゴンになってんじゃん!

 しかも喋れるんかい!

 どゆこと!? てか、痛すぎる! 千切れた足どこよ!


「大変! 今助けてあげるからね!」


 え、何!? 誰――人!? 人だ! 女の子だ! 

 なんて言ってる場合じゃねえええええええええええええええ!!

 助けてくれるって言うなら早くしてええええ。


「大丈夫だから! 暴れないの!」

「ぎああああああああああああああああああああ……ああ、ああああ、あ? 痛く、ない?」


 あれ? 痛くなくなった。てか足生えてる!?

 

「これでもう安心ね。私の回復魔法で治してあげたわよ! おちびちゃん」


 頭を撫でられる。

 ここ、これが人の温もりと言うやつか!? 

 いや、そんなことより誰!? 今、魔法って言った? なにこの世界、魔法もあるの? まじか!

 てか、俺何? 空気じゃなくなった? は?

 訳わかんない。


「立てるかしら」

「……? くふぅ」


 頭が回らず、ただ言われたとおりに起き上がろうとしてみたけど、うまく立てない。

 何度か立とうとしたけど、バランスを崩してし倒れてしまう。

 生まれたばかりの赤子がすぐには立ち上がれない様に、ドラゴン歴ゼロ年の俺にこの体を扱うのは難しい。


「あらあら、おちびちゃん。可愛いわね。一人なの? 家族は?」


 さあ。生前はもちろんいたが、このドラゴンに家族がいたかどうかを問われると、正直いたんだろうなとしか答えられない。

 ただ、首を横に振ってみた。


「そう。なら、私と一緒に来ない? ペットにしてあげる!」


 は? ペット?

 

「ううん。ペットにするわ! あなたは今日から私のペットよ!」


 …………。


 もういいや。

 一度に多くのことが起き過ぎて頭がパンクしそうなんだよ。

 誰でもいいから誰かこの状況、説明してもらえます?

この作品は不定期で投稿しようと思っています!

ブックマーク等がもう一つの作品を超えるような事があれば! こちらに力をいれようと考えていますので、どうぞよろしくお願いします!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ