えぇ。精霊魔法を使ってみるのです!!
幸いと言っては何ですが、入った部屋が空き教室だったので事故の元になる様な大きな器具や化学物質等はありません。屋内であるという最大の足枷はありますが、普通の教室と比べると危険もなく精霊魔法の練習が出来ると思うんですよね。
「さあ!デルフィ二ウム様……先生とお呼びした方が宜しいかしら?とにかくやって見ないことには始まりませんわ!」
デルフィ二ウム様に教えてもらい試してみたものの上手く行きません。竜巻を起こした途端に竜巻は、私の手を離れ検討も着かない方向に飛んでいってしまいました。竜巻の飛んで行った方向には人が居ます。どうやって、危険を伝えるべきか考える前に危ないっ!!と叫んでしまいました。乙女にあるまじきことではある様な気はします。ですが、私の沽券よりも人の命の方が大切です。目の前の彼が避けるなりしてくれると助かります。
そう考えていた私が悪かったのでしょうか?目の前の彼は避ける素振りもせずにこやかに微笑みながら竜巻の方へと近付いていきます。危ない……ぶつかると思った瞬間に彼は手を伸ばし竜巻を握り潰してしまいました。
「それで、シアちゃんは僕の命を狙ってたのかな?それにしては茶地な魔法だね?」
すっと血の気が引いていくのが分かりました。妙に馴れ馴れしい呼び方が少し気に掛かったがそんな事を気にしてはいられない程度に黒い笑顔の副会長元いアンスリューム様。第六感がやばいと警告を出す。
「あの……ですね……決してアンスリューム様「そんな堅苦しい呼び方しなくてもいいよ?」とにかく貴方様を害そうと思った訳ではありません。」
「でも、実際は事故を起こしかけた。違う?」
副会長の問いかけにぐうの音も出すことができません。実際通りかかったのが副会長ではなく一般的な特に女性なら避けることすら叶わなかった事は私でも検討がつきます。
「ですが、試して見ない事には何事も始まりませんわ!」
思わず喧嘩腰になってしまうのも仕方が無いことです。彼に詰め寄る様に距離を縮めて行きます。
「ああっ!!カッシアさん、あまり彼に近づき過ぎないで下さいっ!!」
先生の声を聞いた頃にはもう遅く私は少し動けばカンタンに手を取ることができる距離まで彼に近づいていました。
「何故ですの?「シアちゃんは聞いたことないかなー?吸血鬼って知らない?」吸血鬼?」
物語に出てくる吸血鬼は知っています。ニンニクの臭いと十字架と陽の光や聖水が苦手な空想上の生物です。たしか、血を吸った相手を操る事が出来たり、血を糧に生きていたりと伝承や物語によって様々な姿形を見せる生物です。ですが、どの物語も吸血鬼は美しい容姿をしています。まさか、彼が吸血鬼だなんて思いません。だって彼は陽の光の下に立っているのですよ?
「シアちゃん……もしかして、吸血鬼は皆、陽の光が苦手だと思ってる?」
きゅっと彼に抱きしめられました。怪しく笑う彼の真紅の瞳から目をそらす事が叶いません。どれだけ、目を逸らそうと頑張ってもそのたびに真紅の宝石の様な瞳に目を奪われます。体から力が抜け、声が出ません。
「ひっ……あっ……そんな事は……」
辛うじて絞り出した声は酷く弱々しく、聞こえているのかさえ不安になった。
「じゃぁ……僕が吸血鬼だと俄に信じ難い?」
図星だ。彼が吸血鬼だなんて俄に信じ難い。だって、彼の容姿は確かに物語から飛び出して来たように整っている。否、整い過ぎている。それこそ、物語の王子様の様に。だからこそ、この1点のくすみも無い美しさが血を吸う為の物だなんて信じ難いのだ。
「アンスリューム君いい加減にっ「デルフィ二ウム様は黙って下さいよ。」
「嘘ですよね?まさか、副会長が吸血鬼だなんて。冗談は良してくださいませ。」
嘘じゃ無いんだけどね……と小さく呟く副会長の言葉が聞こえないふりをします。
「そうだね。嘘だよ。」
ほら、やっぱ……
そんな甘い考えは通じなかった。カッシアの白く滑らかな絹の様な肌(前世の私は黄色人種だったので色白なカッシアの肌はなかなか気に入っている。)に副会長の真珠の様に光る犬歯が突き刺さった。突然の痛みに顔が歪む。物理的に顔から血が引いたのが分かった。
「いっ……やめっ……て」
彼はカッシアの弱々しい声が気に入ったのかそれとも、カッシアの血が余程美味しのか暫く私を離してくれそうには有りません。
「ねっ?これで分かったかな?後、初対面の男にあまり近づき過ぎない方がいいと思うよ?」
急激に襲ってきた疲労感と共に羞恥心が襲ってきました。未だに信じられない事ではありますが、首筋に残る2本の牙の跡と未だ微々たる量ながら血のにじむその傷が何よりもの証拠です。私は羞恥心に耐えられなくなりその場から走り去りました。
不思議そうな顔をした副会長と真っ青は先生を残して。
お久しぶりですかね?
暫く更新することが叶いませんでした。