えぇ?こんなのってありですか?
ポツポツとレイブン君と会話を交わす。当たり障りのなさそうなカッシアの過去を聞いていた時だった。突然レイブン君がボロボロと泣き始めた。小さく嗚咽を繰り返すだけで最初は彼が俯いたようにしか見えなかったが、鼻を啜る音と小さく上下する肩から彼が泣いている事に気がついた。私はどうする事も出来ないから、彼を抱きしめ落ち着くまで背中を摩った。暫くすると彼は泣き止んでポツポツとカッシアに殺されそうになった時の事を話してくれた。とても悲痛な過去だと他人事のようにしか思えなかったが、とても彼が可哀想に思えた。
「怖かったね。もう、大丈夫だよ。私が守って上げる。大丈夫……大丈夫。」
大丈夫だなんて無責任な事を口に出してしまったような気もするが、少なくともカッシアからは守る事が出来ると思う。二度とレイブン君がカッシアに苛められるような事が無いようにしようと密かに誓った。大丈夫という言葉をかけた途端に堰を切ったように鳴き声を上げ始めたレイブン君の肩を優しく何故ながらふと自分が彼よりも小さい事に気がついた。もちろん、レイブン君は乙女ゲームの攻略対象だからレイブン君の方が悪役令嬢より背の高い可能性も有り得るけど、レイブン君はショタ属性だ。普通はヒロインと同じくらいもしくは、ヒロインより小さいくらいがいいとおもう。
「ねぇ、レイブン君……君って身長どれくらい?」
突拍子もない質問にレイブン君は一瞬キョトンとしたが、笑って165cmだと教えてくれた。そうなるとカッシアはレイブン君より小さいのだから大きくても164cm程と言うことになる。だが、レイブン君に包み込まれている形だから実際はもっと小さいかもしれない。
「レイブン君……鏡……鏡もってない?」
「鏡?そんなの見なくても姉様は可愛らしいですよ?」
なんか、別の方向にレイブン君の性格が変わったような気もするけど気にしない。
「私の身長は?どんな顔なの?髪の長さは?」
「姉様の身長は138cmです。鏡のある所まで一緒にいきますか?」
138?恐ろしく小さい。もしかして、カッシアだけ小学生とかでは無いのか?とりあえずレイブン君の言うままに階段について行った。階段に大鏡があるらしい。ちょっと学校の怪談っぽいが中世ヨーロッパ風の世界に怪談は無いだろうと思いたい。
レイブン君に従って鏡をみた。そこには絶世の美女ならぬつツインテールの美少女が映っていた。真っ白い白雪のような肌にハニーイエローの髪。ハニーイエローの髪は顔の両サイド(所詮姫毛と呼ばれる部分)が膝ほどまで伸びその他の髪は頭のてっぺん付近でツインテールにされている。ツインテールの長さは上の方で結んでも肩口あたりだから、どうやらカッシアはやたら両サイドの髪が長いらしい。ぱっちり二重の黒目がちな目。瞳の色は裏葉色だ。小学生らしい短く柔らかそうな手足に寸胴の体。そして体とは不釣り合いな女性的な丸みを帯びる胸!!正真正銘ロリータの要素を持ちながら胸だけ大きいというなんと言えない見た目の美少女です。あれ?悪役令嬢ってもっとこう……ボンキュッボンでこう大人っぽい女性何じゃないですか?まかり間違ってもロリータ(きょぬー)では有りませんよね?ですよね?間違ってませんよね。この世界には悪役令嬢のテンプレートは通用しないのですか?
うん、どうでもいいのだけれども主人公の見た目はちょっと悪役令嬢がちびっこだったらお笑い要素的なのが入るかなとかその変の目論みを添えております。