えぇ?弟ですか?
「ところで、どうして、君は私のことを姉上と呼ぶのかな?もしかして、本当に弟?」
疑問に思っていたが口に出せなかったことをやっと口にする。何度も言うが、私はこのゲームをプレイしていない。あくまで横から覗き込んでいただけなのだからキャラの相関図だなんて知らない。もしかしたら友達から説明を受けていたのかもしれないが、私のことだ。聞き流していたのだろう。皆様が息を飲んだのが分かった。どうやら、私は記憶喪失の疑いをかけられるのだろうか?まぁ、記憶喪失ぐらいがいいかも知れない。実際は別人だが。
「あぁ……あぁあ……」
黒髪のカレの口からこの世のものとは思えないうめき声が聞こえるが気にしない。一々気にしていたら私は彼等の情報を得ることができない。
「あっあぁ……彼はレイブンだ。君の義弟にあたる。そして、魔王の血を引いているから、余計な事はしない様に。」
なるほど……彼は弟(義理の)で魔王なレイブン君と言うのか。ところで王子様やほかの方々のお名前は何でしょうか?この世界って名札無いんですね。すこし、不便です。
「弟!!ごめんね、すこし記憶が無いの。許してもらえるな?」
軽率に記憶喪失だなんて方方に言って回るわけにも行かないし、大人の世界足元を救われる事も有るだろう。だから、私(この場合はカッシアだが)が記憶喪失である事を隠す必要が有るだろう。たぶん、ここに集まっているのは王子が信頼している面子だろうから気にはしないが。
「全員の名前も分からないのか?俺のは?」
「分かりませんわ。そうですね、強いて言えばレイブン君の顔と名前は覚えました!!」
まぁ、さっき紹介された訳だ。そんなにすぐに忘れるほど馬鹿でもない。まぁ、記憶力がいい方でもないが、幸いカッシアが身につけたものは生きているらしく、マナー等は問題が無い。だが、彼女の覚えた人間関係だとか、人の名前と顔は何故か一切思い出せない。これは、神様からの試練ですか?
「そうか……俺はこの国の第一皇子、シレスティアルだ。改めてよろしく頼む。」
そう言えば王子様……最初は偉そうだなって思ったけど、私の事を許してくれた。それに、私にチャンスも与えてくれた。たぶん、いいや、きっと彼は優しい人だ。そんな彼を人1人突き落とすほど追い詰めるカッシアが本当にどうかしている。シレスティアル王子だと長いから心の中だけはシル様って呼んじゃお……次にシル様が紹介してくれたのはすこしくすんだ白金色の髪に澄んだ青い瞳が印象の白衣を着た男性だった。周りよりすこし年齢が高めの方だ。と言っても高校生と比べると、という枕詞が付くわけで、二十代位の若い人だ。
「彼はライムライト・フォン・デルフィニウム。少し抜けているが、腕のいい薬剤師だ。彼は、ハーフエルフだから耳がいい。」
「腕のいい薬剤師だなんて照れてしまいますね。カッシアさん、よろしくお願いしますね。」
彼は、王子の婚約者に紹介されるだなんて名誉だと笑ってくれた。
もう少し登場キャラは増える予定です。