悪役令嬢なのに2。
座り込んだ私をプリムラさんが抱き上げて少し離れた所に下ろしてくれました。女の子の様だと思っていましたが以外と力持ちでした。こういうのをギャップ萌えって言うんですよね。
「本当は安全な所まで送り届けて差し上げたいのですが……そこで我慢してくださいね。」
うん?プリムラさんの性格が違う!!もしかしてだけど、レイ君の魔王様化現象と関係があるのかもしれない。レイ君も魔王様化すると、性格も口調も変わっていた。
「死神が人の子を愛す。ですか?傑作にございますね。」
桐の葉さんが忌々しげに呟く。傷が痛そうだ。じわじわと桐の葉さんの衣服が血で染まっていく。見ている方も痛くなる様な出血だ。
「黙れ。産まれて数百年の小僧が何を言う。」
プリムラさんがゆっくりと近づいていき彼の腕を掴んだ。桐の葉さんが痛みに呻き声をあげた。彼はその声を聞くと桐の葉さんを蹴り飛ばした。
「良いのですか?彼女見てますよ。」
ゲホゲホと血を吐きながら彼は喋っていた。あまりにも酷い有り様に目を逸らしたくなった。プリムラがゆっくりと近づいていきどこから取り出したのか分からないナイフが桐の葉さんを襲った。思わず目を瞑ってしまった。もっと派手な音がするかと思ったがカランカランと涼し気な音がした。恐る恐る目を開ける。そこにはふわふわと柔らかげな九つに別れた尻尾を持つこの世の者とは思えない様な美しい青年が立っていた。彼は微笑むとプリムラに向き直った。
「穢らわしい死神風情が九尾を傷つけるのではありません。ねぇ?」
なんか、今すっごくファンタジーっぽい事になってる。死神VS九尾の狐だ。夢の西洋妖怪と和風妖怪大決戦だよ。決着は明らかだった。桐の葉さんが圧勝した。気が付くとプリムラは消えていた。
座り込んだままの私を彼が抱き上げてくれた。言わずもがなお姫様抱っこだ。顔に熱が集まったのが分かった。
「お面……壊れてしまいましたね。」
地面には粉々に砕け散ったお面の残骸が散らばっている。
「構いませぬ。貴女様を守る為だと言えば姫君も許して下さるでしょう。」
彼は私を安心させるためだろうか、穏やかな笑みを浮かべた。
「プリムラさんが死神なんて知りませんでした。あんな可愛い見た目なのに。」
「あぁ、死神は人の魂を狩るのが仕事なので敵意を抱かせにくい見た目をしているのですよ。」
アァッ……カッシアちゃんの好意が桐の葉さんに!!
恰好良く姫葵さんを登場させるべきでした!!