悪役令嬢なのに。
転生ヒロインに攻略宣言をされてから早数日。やたらと構ってくる姫葵さんが珍しくいない。まぁ、桐の葉さんがくっついているが。姫葵さん曰く私が逃げない様にだそうだ。逃げる気など毛頭ないのに。今なら姫葵さんどころか、シル様まで追いかけて来そうだからな。姫葵さんはと言うと私を攻略する為にはシル様を引き離す必要が有ると判断したらしくシル様を攻略している。
「桐の葉さんは姫葵さんの側にいなくて大丈夫なんですか?」
何となく2人っきりでいるのも気まずい。黙ったままだと余計気まずいので話しかける。桐の葉さんが答えてくれるか分からないけど。
「護衛は樫木1人で充分にございます。」
そうなのかぁ……姫葵さんは強いのか……じゃあ何で護衛として2人も連れてきたんだろ?
「貴女様を守る為にございます。1人は姫君の護衛をもう1人は貴女様の護衛をする為でしょう。」
……そうなのかぁ。なんか、姫葵さんって想ったよりカッシアを溺愛している様な印象を受ける。そんなにゲームのカッシアは可愛いのか……なんか、中身がこれで、申し訳なくなるなぁ。
「貴女様も可愛らしゅうございますよ。」
……!?声に出してないよね?
桐の葉さんはさも可笑しそうにクスクスと笑った。
「私共妖狐は尾の数に関わらず人を誑かす事を生業としております。それ故、人の心の動きには敏感にございますから。」
なんか、すごいけどそれだと桐の葉さんが1人で喋ってる様で可愛そうだ。そう思うと彼はまた、クスクスと笑った。良く笑う人だなぁ……
「可愛そうだなんて初めて耳にしました。姫君の仰る通り可愛らしゅうございますね。」
大きな手で私の頭を撫でる桐の葉さんにドキドキした。どうして、この乙女ゲームの住人は悪役令嬢に優しくするのだろうか。
「カッシア殿……上手く避けろ。」
少女の様で老人の様な声がした。多分これはプリムラさんだ。しばらくぶりの遭遇の様な気がする。避けろと言う言葉に不信感を覚え声のする方を見ようとした。シュッんと何かが頬を掠り桐の葉さんの腕に刺さった。
「外してしまいましたねぇ。穢らわしい狐風情が姫君に近づくのではありません。」
プリムラの方を向くといつもの可愛らしい男の娘では無かった。悪寒のするようなおぞましい気配を纏い忌々しげな目で桐の葉さんを見ていた。紅い瞳が爛々と猟奇的に輝いていた。
「貴女様はお逃げ下さいませ。姫君の所ならば安全でしょう。」
臨戦態勢に入った桐の葉さんにそう言われた。もちろん逃げた方が桐の葉さんの邪魔にもならないだろう。だが、足が竦んで動けない。立っていることさえ出来なくなり私はぺたりと地面に座り込むんだ。
こっからどんどん物語を進めて行きたいと思ってます。
あんまり長くすると自分が飽きちゃうので出来る限り早めに決着を付けたいですね。