シル様と……
「カッシア様……殿下は昔に戻った様で嬉しいと仰っているのですよ。」
ウェスト様が穏やかな笑みを浮べながら教えてくれました。どうやら、シル様はツンデレみたいです。可愛いなもうっ!まぁ、ツンデレ別に好きでもないけど。今のカッシアにはツンデレより素直さんの方が好かれますよーなんちって。
「まぁ!シレスティアル様にそんな風に想われるなんて昔の私に嫉妬してしまいますわ(笑)」
ちょっと……そこのシル様……顔を真っ赤にしないでくれる?怒ってるの?ねぇ、怒ってるの?うんうん、突き落とす程嫌いな奴だもんね。忘れてたけどちょっと不謹慎だったかな……
「シア……突き落としたのは悪いと思ってる……記憶まで無くして……その……責任は取る。」
「まぁ?そんな事を思ってらしたの?別に私はなんとも無いですし、少し生活に不便なぐらい副会長なり、シモンくんなりが助けてくれますわ!なので、気にしないで下さいませ。」
目の前のオウジサマは泣く様に笑った。その顔が酷く綺麗で……私は……いや、カッシアはどうして彼を傷付けてしまったのかと後悔した。
「婚約破棄しましょう。」
自然とその言葉は口から漏れた。つっかえる事も、吃ることも無かった。これ以上この人をカッシアに縛り付けてはいけない。彼はカッシアから離れ自由になるべきだ。そう、本能が告げている。もちろん、私は悲しい。この世界に目覚め初めて口を聞いた人だ。そんな人をこれ以上不幸には出来ない。
「まて、なぜ、そんな話になる?」
「貴方は王となるお方なのでしょう?これ以上カッシアに貴方を不幸にさせる訳にはいきません。」
柔らかな涙が頬を伝った。多分、カッシアが泣いているのだ。彼女がシル様と離れる事を悲しんでいる。そんな気がした。
「駄目だ……可笑しい。」
彼……目の前にいるシレスティアルは初めて会った時からは想像も出来ないほど、虚ろな目でカッシアを見ている。静かに、だが力強く私を通して幼い頃のカッシアを見ているのだろう。
「おかしくなんか無いっ!!」
感情に任せ言葉が飛び出していく。前世からの悪い癖なのだ。感情的過ぎる。私にはカッシアは向かない。と言うより貴族には向かないだろう。
「シアは俺と結婚する……そう誓っただろ?幼い頃……神に誓った。違うか?」
ごめん、それ、私じゃない。どう答えるべきなのだろう……まさか、他人が交わした約束を真っ向から否定する訳にもいかない。というより、シル様はカッシアが嫌いなんじゃ?
「誰からも嫌われるカッシアを造り上げたのに……今までの努力が水の泡だ。」
「ええっ?どういう事ですの?」
説明プリーズですよ?まさか、シル様はツンデレならぬ、ツンヤンですか?あっ、ツンデレはそんなに好きでもないけど、ツンヤンは鑑賞するの好きだよ。まさか、シル様がカッシアを造り上げただなんて知らなかった。あれ?乙女ゲームどうなってるの?もしかしてカッシアが主人公のゲームだった?でも、主人公はたしか黒髪で薄桃色の瞳だった気がする。主人公の癖に悪役みたいな出で立ちだったから覚えてる。
「幼い頃シアは可愛らしい容姿と素直な性格で誰からも好かれていた。俺はそんなシアに恋したんだ。でも、暫くするとシアの人誑しに嫌気がさした。シアは俺だけのシアでいて欲しかった。」
絶句?本気で王子がツンヤンだよ。さっさと主人公プリーズ!!こんだけ、様々な魔王とか、吸血鬼とかヤンデレにぴったりな種族がいるにも関わらず……なぜ、運営は王子をツンヤンにした。王子より、魔王か吸血鬼の方がヤンデレ似合うだろっ!?
「そうと決まれば、シアを周りから孤立させる為動いた。シアを悪く言う噂を流したり、シアの名で令嬢たちに嫌がらせの手紙を送ったり。」
それは、ダメです王子様。ほんと、何処でヤンを拾ってきたんですか?ポイッしなさい、ポイッ!!それよりだ、王子はなぜ、これだけカッシアを好いていたにも関わらず主人公と結ばれた?なんか、よく分かんない。
「それからは、面白い程シアは嫌われた。噂とは酷いものでシアの心も変えてしまった。それから、シアは噂通りの令嬢になった。でも、俺の前だけでは素直な可愛いシアだったんだ。」
カッシア逃げて……いや、私が逃げなきゃなのか?どうも、シル様は幼い頃の素直なカッシアが好きらしい。そして、シアの性格を変えるほど歪んでる。主人公もカッシアも逃げて!!そして、私も逃げたいっ!
「でも、シアは俺に嘘をついた。ライトと親しげに話していたんだ……許せなかった。ライトはこの学園……延いてはこの国に欠かせない。だから、彼を傷付けてシアに見せることは叶わない。ならばと思った。それが、どうだ?シアは記憶を無くして、幼い頃に戻った。レイブンを誑し込んで次はデルフィ二ウム興?その次はライトにシナモン……ダメだよ、シア……僕だけのシアじゃないと……」
……もしかしてカッシアが階段から突き落とされて記憶を失うまではストーリー通り?
今回も読んでくださりありがとうございます。
今回はシアちゃんの過去を覗き見です。そろそろ……そろそろ愛しのシアちゃんと主人公を絡ませたい所です。
ツンヤン好きですよ。書くのは少し苦手ですが。
思った様にデレてくれないシル君にムカつき半分と愛おしさ半分です。
自分の子供の様な彼らを幸せに最終的にはみんな笑わせてあげたいなって思います。