シモンくんとお話だね!!
「その……つかぬ事をお聞きしますが、なぜ私が副会長の被害者だと?」
そうなのだ。これが不思議で仕方ないのだ。いくら、首筋に歯型と言っても小さな穴が二つ空いているだけだ。もちろん、近付けば分かる。でも、シモンくんがそんなに近づいた記憶は無い。
「微かに副会長の魔法の気配がしたので。もしかしたらと……思ったのですが、傷だけで問題は無さそうですね。」
魔法の気配だなんて分かるのだろうか?もちろん私はこの世界の事情に明るくないから、そんな事知る由もない。だが、そんな事がまかり通るのか不思議に思うだけだ。もちろん、その事を知ったからと言って私の成績が上がったりはしないだろう。それこそ、個人的な興味と言うものである。
「シモンくんは副会長の被害者全員に声を掛けていらして?」
そうなれば、きっとシモンくんは被害者全員の命の恩人になり得るだろう。そうすると、彼の噂がもっと広まっていてもおかしくない。それこそ、彼が学年……いや、学校一の有名人になることだって可能であろう。
「はい。この学園にいる吸血鬼全員のお食事に声をかけています。」
「大変では?」
とんでもない事だ。というか、シモンくんは被害者をお食事と呼んでいるのか……いや、決して彼の言っている事が間違いでも無いような気もしますが、なんとなく獲物呼ばわりの様で気分を害する可能性もあるのでは無いだろうか?それより、この学園には吸血鬼が副会長のほかにもいるのか……その被害者全員にこえを掛けているだなんてとんでもない時間と労力が必要な気がする。
「そんなにですよ。吸血鬼ってお気に入りが見つかると暫くそちらの方しか召し上がらないので。」
そうなのか……まぁ人でもお気に入りの食材を沢山使った料理をつくるようになったりするもんね。うんうん。吸血鬼って聞くだけで化け物だと思ってたけど、そうでもないんだなって思うよ。
「シーアーちゃん♪」
ゾッとする様な声と共にスッと首筋を撫でられました。虫が這うようなゾクゾクと背すじを撫でる嫌な感覚がします。嫌な予感がします。
「あぁ副会長様。どうしたんですか?」
「ああぁ、シナモン君かな?久々だね。」
ほら、やっぱり。人の悪い予感という物はどうやら、当りやすいらしい。
「副会長様にもやっとお気に入りが見つかりましたか?」
副会長にお気に入り?やっと……?ちょと良く分からない。誰が、お気に入りなんだろうか……もしかシモンくんかな。だとしたらちょっと前世でいう許されない関係っぽい…てじゃなくて!!副会長に今まで、気に入った人がいなかった方が驚きだ。何度も言うが彼はかなり美しい。それこそ、傾国の美姫も裸足で逃げ出しそうな程の。つまりだ、彼は物理的に色んな人を味見できる。それこそ、掃いて捨てるほどに。
「まさか。彼女はシルの婚約者だよ?」
「殿下の婚約者には代わりありませんが……副会長様かなり、彼女が気に入っているのでは?」
あぁ?うん?まさか、ヒロインがもう登場しているたのか……って、そんな分けないよね(笑)うんうん、まさか、カッシアだとは思いたくも無いよね。
「ちょ……ちょっとお待ちください!!なぜ、私なんですかっ!!もっと可愛くて綺麗で美味しそうな人はもっといるのでは!?」
意外そうな目で見られました。なんか、意外そうな目と言い同情的な視線と言いこの世界の人は目が正直ですね。口には決して出さないみたいだけど。