あれ?転生……?
目を覚ますとそこは異世界だった。もちろん、異世界転生と言うのが初めてのものだからもちろん、ここが異世界である確証なんて一ミリたりともない。だが、ここが見なれた場所では無いという事は分かった。第一に先程からチラチラと視界に移り込む目に悪そうな派手な髪色をした知り合いはいない。第二に、シャンデリアがぶら下がっている様な病院やホテル、ましてや自室を持つような気力も財力もない。それに、シャンデリアなんて趣味じゃない。むしろ、素朴なものを好むのだ、ここが自室なわけが無い。一瞬、誘拐を考えた。だが、私を誘拐しても大した金は出ないだろう。だとしたら、シャンデリアの下がった部屋に監禁するだなんて非効率的にも程があるから誘拐は有り得ない。他には監禁なんてものも思いつくがまず、恋人が居ない。独身寮に暮らす一平社員。しかも、大して可愛らしくもない、誘拐より有り得ないのでお話にすらならない。
「あ、あのっ……お忙しいと思うのですが、幾つか質問させて頂いても宜しいでしょうか?」
出来るだけ相手に不快感を与えない様に下手にでる。すこし、とと言うか、大分声に違和感を感じたが気にしない。大事なのは状況把握だろう。あいては私よりもいくらか若そうに見える。でも、こちらは質問させてもらう側なのだ。まかり間違っても偉そうにだなんて質問できない。それに、目の前にいる少年は変わった髪色をしているものの来ている服は上品そうな服だ。少しフリフリが付いていて時代錯誤だとは思うが着る服は人の自由だ。指摘するのは良くないだろう。ところで、少年どうして目を白黒させているのでしょう?まぁ、いきなり知らない人が話しかけてきたのだ、驚く事に無理は無い。だがしかし!!意外そうな顔をするのは心外である。こちらは酸いも甘いも噛み分けた立派な大人(社会人一年目)。しかしだ、社会人一年目だろうと、無かろうと高校生ほどの少年よりは、精神年齢は高めである。だから、いくら少年相手だろうときちんと状況によって言葉遣いくらい易易と変えることができる。えらいだろう。
「あぁ、質問とは?」
すこし、低く掠れた甘い声にどきりと胸を打つ。だがだ、相手は高校生。魅力だなんて一ミリたりとも感じない。しかも、こちらが下手に出たからと言ってすこし偉そうではないか?まかり間違ってもお姉さんは社会人で少年は高校生程なのだ。大人に対しての礼儀というものがなって無い。
「ここは何処ですか?貴方は誰ですか?どうして、貴方も私もここに居るのですか?」
少年はすこし目を見張りそれから少し目を伏せ汚物を見る様な視線を私に向け……ってちょっと待って下さいよ。どうして、私は初対面の少年に蔑まれなけばならいのですか?おかしくないですか?
「何も……覚えてないのか?ここは、おまえの部屋で俺はお前の婚約者、お前が倒れたから俺がここまで連れてきた。」
少年の言葉に不信感を覚える。私に婚約者なんていた記憶が無い。それに何度も言うが私の部屋にシャンデリアは無い。思いがけない事にもう1度意識を手放した。
とりあえず、一旦ここでぶっちんします……