表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
さいごのたび  作者: チル
ミケ編
5/22

ミケ はりきって探索編

ちまちまとしたキャラが活躍してたらいいなあって

 次は商隊の無事の確認だ。

 商隊は隣町から道なりに移動していて大丈夫だろうが一応確認し無事届けて欲しいらしい。

 《ネットワークが使えないこの時代物の物資転送すらままならないので不便の極みだ。》

 と、依頼主が言ってたらしいがアカリもアンドもネットワークやら物資転送やら見たことはないので想像するしかなかった。

 商隊のトラックは簡単に見つかった。

 ヤシの木の側で数台のトラックが休憩しているのを見つけそのまま町まで移動。

 したかったが。

「来た!セイメイだ!」

 商隊の一人がそう叫びアカリと商人は銃を構える。

「アンド!」

 商隊の一番後ろにあるトラックに乗っていたアカリはアンドの手を取って走行のトラックの扉を開ける。

「はっ!」「あっおい!?」

 全身黒毛で犬辺りの血筋がある顔をしているトラック運転手の制止を振り切って飛び降りる。

「頼んだよアンド!」

「わかりました!」

 空中に投げ出された二人はバックミラーの遠くでいつの間にか一人になって地面に足を付いたかと思うとそのままジャンプしさらに宙でもう一度跳んでトラックの上に乗った。

「お、おおっ!?すげえな……」

 ガタンと大きな物音に身を乗り出して運転手がアカリたちを確認して驚く。

「こっちはこっちで片づける!トラックは町まで走らせて!」

 アカリがそう叫ぶと運転手は“了解”という感じに手を挙げ身体をトラックの中に戻す。

 トラック備え付けの無線マイクを手に取りスイッチを入れる。

「こちら最後尾、さっきの旅人が護衛するからこのまま走行続行せよとの事!どうぞ。」

 スイッチを離すと直ぐに無線から怒号が帰ってくる。

「その旅人正気か!?どうぞ。」

「正気じゃないかもしれないがその分腕は確かなようだ!トラックから飛び降りてそのままトラックの上に飛び乗った!どうぞぉ!」

 さっき見たままの事を運転手は話す。

 信じる信じない以前に真実なのでそれ以上はどうしようもなかった。

「あー……、わかった、とにかく任せる!俺たちはなるべく運転に集中する!どうぞ。」

「了解。」

 そう返事だけすると運転手は銃から手を離しハンドルを両手で握る。

 一方そのころトラックの上では戦闘が繰り広げられていた。

 トラックの正面から来るのはまだ良い。

 ある程度セイメイ対策されているトラックは体当たりしてもオレンジ程度なら簡単にひける。

 問題は直接上に乗り込んでくる敵だ。

 黒い霧一度現れる傾向が見られればどこにだって現れる。

 トラックの上にやってきたオレンジを射出口が斬るタイプのもので波状エネルギーを撃ちだし現れてきたオレンジを片っ端から撃ち落とす。

 しかし数の多さからまれにトラックの側面に張り付こうとする敵も現れる。

 またこの銃では角度によってはトラックに直撃する。

 それを避けるためにアカリはアンドと一つの技を思いついた。

 まずはアカリが相手の隙を見つけ攻撃をうまく避ける。

「発光!」

 アカリのかけ声と共にアンドはあえて憑依の大半を解く。

 当然アカリはほとんどの赤い服装が解け毛皮が露出する。

 その時を狙って全身を強く発光!

 セイメイも視覚のあるタイプは余りに強い光はグロッキーに陥らせる。

 横に張り付いたオレンジは剥がれ上にいるオレンジもアンドが黒い霧状態を解除せず直ぐにアカリに再憑依する事で一方的に蹴り跳ばし追いつけない遙か彼方にまで吹っ飛ばされる。

「っ!?新手!」

 先頭の方のトラックに移ると空中に現れるおぞましい黒い霧。

 その霧は大きく鋭そうなクチバシを持ち骨組みだけで肉がついていなさそうな鳥型の姿に変わった。

 ゴツゴツとした骨格と羽根のないのに空を飛ぶ姿は遙かとても昔にいたとされる恐竜というのにそっくりだった。

 高さ1mほどとたいしたことはないがオレンジよりも遙かに大きい。

 鉤爪は鋭く食い込んだら離すことはなさそうだ。

「テラノまで出てきたか!」

 アカリは銃を構え放つ。

ウェーブ状に広がるエネルギー弾!

 しかしテラノは軽く飛んで回避する。

 何度か撃つが軽く避けむしろその鉤爪をアカリの顔面めがけて振り下ろす。

「!」

 急いで回転して回避し続けて撃ったが避けられてしまう。

 もし鉤爪の一撃を食らえばこのトラックから落とされる危険があった。

 それだけは避けなければならない。

 コスモスを素早く操作して銃の先端パーツを取り出し鉤爪攻撃をかわしてから銃パーツを交換する。

 慣れていれば変えるのには一秒程度だ。

 取り替えたの銃弾型。

 元々アサルトライフルについていたパーツだ。

 飛んで迫り来るテラノからバックステップでやや距離を取り連射!

 先ほどとは違い速く連続で襲い来る弾丸を回避しきれずいくつも食らいよろめく。

「今だ!」

 アカリは銃にもアンドのエネルギーが満ち光のラインが伸びている事を確認していた。

 より強烈な力を使う瞬間は連携を取れる今ならコントロール出来た。

「わかりました!」

 アンドの返事といっても声は自分から出るわけだがそれを聞いた後にアカリは相手に向かって駆けそして跳ぶ。

 しかしその瞬間を狙ってかオレンジが左右から飛び出してきた!

「発光!」

 アカリの合図によりアンドが離れアカリは全身の毛皮を強く輝かせる。

 一瞬でも目を焼き付くすような危険な光。

 当然オレンジやテラノも無事では済まない。

 直ぐにアンドがアカリに戻り飛び込んできたオレンジたちを両手で掴む。

 身体を宙で捻りそのオレンジを目が見えなくなっているテラノに叩きつけた!

 オレンジを叩きつけられたテラノはたまらずそのまま地面に落とされた。

 さらに上からアカリが蹴り落とす。

 立て続けに頭に食らってぐったりとしたテラノの首を持ち上げ上へ少し身体全体を浮かせてからアッパーカット!

 そして落ちる前に直ぐに半回転して強烈な蹴り上げ!

 足裏で綺麗に空へと打ち上げもう一度銃を構える。

 脈打つ光が満ち満ちて今にもはじけそうだ。

 空へ打ち上げられた骨のような鳥へと向けて力を込めてトリガーを引く。

「いけぇ!」「はああ!」

 混ざる叫びと交わる力。

 銃口から巨大な光の塊が撃たれ空に向かって飛び一瞬でテラノを飲み込んだ。

 テラノは黒い霧と消えオレンジも含めその後は出現しなくなった。


「いやあここ最近この地域で激しいセイメイの攻撃は珍しかったんだが何にせよ助かったよ。」

 町に付き黒毛のトラック運転手が

そうアカリに話した。

「いや、こっちも仕事だからね。ね?アンド。」

「キュイ!みんなぶじで良かったですね!」

 アンドの笑顔に運転手も釣られて笑顔になり頭を撫でる。

 何となく気持ちよくなってアンドは素直に撫でられた。

「仕事の方はこっちから報告しておくよ。おそらく色がつくかもな?ご苦労さん!」

 それを聞いてアカリは心の中でガッツポーズと叫びをしていた。


 昼時。

昼御飯を食べようにも既に資金は底をついているのでATMで依頼の報酬を受け取りに行く。

「さーて3つの依頼で……おっとこれは……」

「どうしたのですか?」

 アンドはアカリの下から画面を覗く。

《自警団が押収した犯人のコスモス“鈴の髪飾り”から特殊なスキルデータ“先祖返り”が見つかりました。先祖返りのデータコピーを特別に追加報酬とさせていただきます。》

 そう書いてあった。

「これはあの泥棒猫が使ってた獣になれるスキル!コピーだから売り飛ばせないのは残念だけど適合すれば素早く動く事が出来そうだよ。」

 早速アカリはコスモスを操作して報酬を一括受け取りし銀行の外に出て少し裏手に入った所でスキルデータを実行する。

 まずはアンドにコスモスからの緑の光を浴びせ適合するかを調べる。

 数秒でさらに新たな光がアンドに伸びる。

「ビンゴ!」

 どうやらスキルはアンドにも使えるものだったらしい。

 光はアンドを包みそして時期に消えた。

「どう?」

「ええっと、こんかいは何かおこったかんじはしなかったのです。」

 アンドは正直な感想を述べる。

 言語を習得したときのような実感がまるでないのだ。

「まあちょっと待ってて。私も。」

 コスモスの光がアカリに広がって包まれて少ししたら消えた。

「よし、私も適合した!」

 左の手のひらを勢いよく突きだし喜びを表現した。

 コスモスに入っている先祖返りのスキルはコピーデータと同時に使い方がかかれていた。

《注意点 服装は一部を除き自動解除されます。コスモスに服を入れるのを忘れず、また外部アプリケーションの瞬間着替えアプリケーション等を使い外で全裸にならないよう練習してから外で使ってください。》

 アカリは大事そうな所だけ拾い読みしつつ大半の分かり切った注意書きは読み飛ばす。

《使い方は簡単で心の中で獣になる!と思ってください。慣れるまでは不発が多いですが慣れれば脳内のスイッチを切り替えるかの如く楽に変身できます。戻るときは逆に人になる!と強く思ってください。最初の頃はとにかく強く思う事が大事で慣れと同時に頭の中で自然と変えれる用になります。また変身したさいに脳が……》

 アカリはだいたい内容を把握して読むのを止めた。

 しかしアンドは律儀に端から読んでいたのでウィンドウは閉じずアンドの手を引きながら食事を買いに小売りへと向かった。


 スーパーで買ってきたものは今日と明日の食べ物。

 といっても出来合い品だ。

 アカリのテントは見た目は立派に家でもまだキッチンの一つもないからだ。

 さらにアンドはリンゴを買った。

 遠い星から運ばれた果実。

 アンドはしゃくしゃくとした甘みある食感を楽しみつつ中にある“種”というものに興味がわいた。

「これがくだもの、このなかのがたね。うん、なんとなくわかりました!」

 ちょっと食べてみたが割っても硬いだけでおいしくは無かった。

 そんなこんなしている間にテント位置まで戻りコスモスからテントを取り出し建設してその簡易な家へと入る。

 さあ今日の昼食はワンワンラーメンだ。 


 昼食を済ませ早速先祖返りを試してみることにした。

「先祖返りの時の服の処理に関する事は、まだ瞬間着替えする能力のアプリはないし、アンドはまだコスモス持っていないからとりあえず練習だけしようか。」

 アンドは霧化するときも服は脱げてしまうがこれまではアカリが服を回収しコスモスにしまっていたため問題は無かったがこれは自分も変化するとコスモスがうまく使えなくなる可能性が高いのでアンド自身がコスモスを持ち、使えるようになる事が重要だった。

 アンドとアカリは狭い室内離れて向かい合い互いに見合う。

 どう変化するかはわからないので距離を取った。

「じゃあ、まずはアンドから!」

 はい!とアンドは軽快に返事してから目を瞑って必死に念じる。

「けもの……ケモノに……うーん。」

 顔をしかめ必死に念じるとアンドの中にざわざわとした感覚が生まれる。

 この感じには覚えがあった。

 そのざわざわにさらに集中していくとゾワリという感触。

 冷や汗をかきそうな奇妙な感覚。

 言葉を覚えた時のような不可思議な自分の中の何かがうごめくようなそれ。

 頭がさえ渡り力みなぎる。

「ありました!ケモノに、なる!」

 アンドが一瞬淡い光に包まれたかと思うと次の瞬間には姿が変わっていた。

 深緑色やふさふさの尻尾はそのままに小柄な姿はさらに小柄となって四つ足で立っていた。

 アンドも唐突の変化に驚いていた。

 視点も低くなり手からは分厚い肉球も地面を掻く爪が生え揃い地面に突っ伏していた。

 顔立ちは相変わらず犬とも猫とも他の生き物とも言えない珍しい顔だがさらに真ん丸くなった目が子供っぽさを際立てた。

 しかし急に身体の大きさが変わった事で服は当然脱げてアンドは小さくなったと言うことは。

「キュギュ!?」

 上から降ってきた服がアンドをすっぽり覆う。

 慌ててアンドは脱出しようとしたが頭が人間の時の動きのままだった。

 足を動かせば前の足にぶつかり転んで立ち上がろうとすれば服で滑って空回り。

 もがきもがいて何とか脱出できたのはアカリがアンドの異変に気づいて服をどかしてからだった。

「ギュイィ~……。」

「何というか、慣れるまでが大変そう。」

 小さくなって泣きべそをかいているアンドは簡単に持ち上げられるほどの大きさでアカリはアンドを抱き上げて頭を撫でた。

 当然子供であるアンドは獣化するとよりその性質が際だつ。

 ぬいぐるみのような毛にぬいぐるみのような瞳。

 声帯の変化で一部の発生しか出来ない口なんかもポイントだった。

 アカリは「あざといくらいかわいい」などと思いながらアンドの機嫌がなおるまで撫でた。


 気分が落ち着いたアンドはベッドの上で個人練習。

 立つ、座る、寝る、起きる。

 脳や身体が慣れる間で反復練習だ。

 アカリはそんなアンドをみつつ自分の先祖返りを使うためにイメージし始める。

「獣になる……獣になる……」

 自分の獣姿は何となく想像できた。

 ハイエナという種族が未だ獣だった頃の姿は古代の図鑑で見たことがある。

 茶と黒の斑点模様はだいたい同じだが四つ足で後ろ足はアンドのようにかかとがかなり地面から離れた形で。

 強そうな頭に強靱で犬のようにも見える顎。

 思い浮かべ、念じ、唱え……。

「わっ、わからん!」

 その後小一時間は悩み瞑想し逆立ちしてみたりすっかり身体に慣れたアンドにコツを聞いたりヨガの女豹のポーズを取ったりと散々苦労して何とか先祖返りの使用をできた。

 見た目はだいたい想像通りだが鏡で見たら図鑑の姿よりも綺麗だなと自画自賛した。

 アンドはそのアカリの姿を見て「キュートだけどカッコイイ!」とよくわからない評価をした。

 もちろん身体を動かすコツを何とか手にして人型にも戻れるようになり次の準備をしに服を着て町へと向かった。 


 スキルへの適性があった。

というのは早かれ遅かれ必ず扱えるようになるという事でもある。

 駆けるように移動しスムーズに元へと戻る。

 そんな術を身につけたアカリたちはその日のうちにもう少し依頼をこなした。

 といってもお使いのようなものばかりなのだが。

 それでも少しずつ資金が集まり同時に失った信頼を少しずつ回復していた。

 数回単純な作業を繰り返し日が沈みかけたころ。

 次の依頼を受けにアカリたちは酒場の情報センターにいた。

 白毛の酒場のマスターは相変わらず不機嫌そうな顔をしていた。

 もしかしたら生まれつきこういう顔なのかもしれない。

「ふむ、依頼の方だが緊急の依頼がある。護衛の依頼等から信頼の声が高まっているようだがこいつをこなせればせめて一般的な依頼を受けれるようにしてやっても良い。」

 意外に早く今のおつかいばかりの依頼たちから抜けれるのかもしれないとアカリは心躍らせたが落ち着いて返す。

「ああ、それでその依頼は?」

 酒場のマスターがアカリに見せた依頼は《先回り調査》だった。

 《主人が明日にも草原のオアシスにある“崩壊した洞窟”へ探険しに行くそうなのですが心配が二つ。一つは凶悪なセイメイや化け物がいるという噂。まずはこちらを掃討してもらいたい。さらにいざ行っても財宝の一つも無くては主人のプライドにも関わるかもしれない。確認して無ければないと報告して頂ければ先にこちらで財宝を仕掛けさせてもらいます。是非この二つの事をお願い申し上げます。》

「過保護だなぁ。」

 正直な感想が口から漏れる。

アカリはとりあえずその依頼をコスモスに受け取ってから席を立つ。

「事情が何であれこれをこなせば報酬は大きい。この依頼主に感謝しろよ。」

「わかってる。それじゃあ。」

 後ろ手を振りつつアカリは酒場を出てアンドも後に続いた。

 アンドは少し慣れたのか固まることはなくなった。

 が、まだ何となく怖い雰囲気は感じていた。


 空は日が暮れかかりアンドたちを真っ赤に染める。

 やがて闇が迫るであろうその時間にアカリたちは町の外れのオアシスの草原からさらに奥。

 崩壊した洞窟と呼ばれる場所の入り口にいた。

 入り口はいたって普通の山の岩肌にあいた穴。

 しかし中は所々崩壊しててそこから漏れる光が中を照らすので昼なら何も持たずとも探索できるほど明るい。

 夜は夜で月明かりが中を僅かに照らし神秘的な光で満ちるという。

 しかし中は崩壊しているので当然危険ではある。

 アカリはアンドの方を向いて話しかける。

「それじゃあ危険があると困るから、憑依しておいて。」

 アンドは素直に頷き霧状になってアカリを包む。

 すっかりと二人も慣れたものでアカリは黒の瞳に赤い光を宿して洞窟の中へと踏み入った。

 洞窟の中は事前の情報通りあちこちが崩壊して天からは夕陽が差し込んでいる。

 危険かと言えばそうでもなくむしろ壁や通路が大胆に崩れてるところが多くて明るく吹き抜けていて足場も何度も人間が通って踏み固められて道となった跡があるおかげて楽に移動できる。

 特に何もなさそうなところは細かく“先祖返り”して素早く移動しつつ人に戻って細かく見回り宝や敵意のある生物またはセイメイを探す。

 ……いる。

 とは言っても外のと強さはあまり変わらないセイメイの気配。

 黒霧が吹き出て形になりそれは黒々とした翼に真っ黒な眼球。

 覗く黄金に光る瞳は大きく一つ。

 本来の頭は地の方へ付き足は天へと虚しく向かう。

 顔のパーツが単眼ただ一つギロリと向かれる目からは明確な殺意。

 昔コウモリと呼ばれた生き物に近い形のセイメイだ。

 上から貧弱な脚から膨れた胴ときて頭の巨大な単眼。

 そしてそれは地面にぴたりと張り付いて動く気配を見せない。

 翼は大きく広げられているがバランスを取るかのように動かず空は飛んでいない。

 不気味な姿だが全長50センチ程度で洞窟のような暗がりでは頻繁に登場するセイメイだとアカリは知っていた。

 もちろんその特性も。

「あいつは一体か。よし……。」

 アカリは大きく跳んでそのセイメイをさらに飛び越え。

 ……無視した。

「ゴウマは無視に限る!」

 ゴウマは目でひたすらアカリを追いかけていたがそれだけで追うことも攻撃することもしなかった。

 その時。

「ダメですよ。いらいがあるのです。」

 アカリの同じ口から出るアンドの声。

 アカリは頭を抑え肩を落とした。

「あーっ、そうか依頼は“掃討”だったなあ。」

 掃討。

 つまり全滅させなければいけないという事。

「あいつはカウンタータイプなんだよ。何もしなければ何もしてこないが仕方ない。」

 アカリは着替え機能を使ってコスモスから直接武器を呼び出し持って銃口を向ける。

 まずは軽く連射。

 すると大人しかったゴウマの瞳が光り細いレーザー光線を放つ!

 レーザー光線が弾丸を消し飛ばしつつアカリを狙う。

 しかしアカリも特性を理解してるため移動して避ける。

「まあこんな感じで知らなければ死人が出る事してくるが。」

 もう一度銃を向け今度は移動中に溜めた力でゴウマに放つ。

 光の塊がゴウマに向かうがゴウマはじっと見つめるだけだった。

 大きな衝撃音と共に黒い霧へと砕ける。

「一度撃たせれば少しの間は隙だらけってわけだ!」

「やった!たおせましたですのね!」

 連続で同じ口でしゃべるのに何となく慣れないアカリだったが黒い霧が消えるのを見届けると銃をしまった。 


 その後も中を探索していくがそもそも複数の人間に立ち入られているのでめぼしいものはあまり見つからない。

「骸骨の一つでも転がっていれば雰囲気出るんだろうけど。」

「がいこつ?ほねですか?」

 アンドの声が尋ねる。

 アカリはそのままの調子で周りを警戒しながら話を続ける。

「そう、獣や人が死んだ後の骨。洞窟といえばそういうのがあるとそれらしいんだけどね。」

「うーん、むずかしいのです。しんだとか、それらしいとか。」

 そのような会話を続けながらセイメイの掃討を続ける。

 アカリはあまり深く考えなかったがアンドはそれなりに必死に考えていた。

 言葉の意味はわかってもその文の中身への理解は経験が求められるものも多い。

 まだアンドにとって死についてや洞窟の冒険雰囲気に不気味さがそれらしいという事よくはわからずそのうち頭がパンクし戦闘の繰り返しでそれどころではなくなった。

 そんな事を繰り返して探索していると少しこの洞窟の中がわかってきた。

 確かに明るい場所は人も多く来ていて何もないがその分ちょっとした暗がりはまるで人目に付かない。

 アカリは自身の身体を光らせ洞窟を照らせる。

 憑依されている時も服の部分以外のつまり手や頭などの一部は光らせれて攻撃には使えなくても周囲を照らすには十分だった。

 暗い脇道を照らすと跳ね返ってくるキラキラとした物。

 手にとって見ると銅貨や黄銅貨だ。

「誰かが落とした小銭やちょっとした傷薬何かは結構落ちてるなあ。」

 アカリはありがたくネコババした。

 さらに奥の方に入って行きやはり少し光が行き届いていない暗闇。

 どこからか崩れてきたらしい小さな岩の下に何か挟まっているらしく金属が光を反射する。

「これは……」

「また何かおとしものなのですか?」

 軽く岩を持ち上げて投げ捨てると下にはチョーカーがあった。

 元々白色だと思われるが長らく放置されたのか土色に風化し変色している。

 金属のデコレーションと少し高級感がある質感のプラスチック系の素材で出来ているようで古びてる事以外はふつうのアクセサリのようだ。

「あっ、これはチョーカー型のコスモスか。ちょっと古いけどまだ動くのかな?」

 アカリは土を払って適当に触るとチョーカーからウィンドウが飛び出した。

《充電してください》

 どうやら電池はないようだが動くらしい。

「これつかえるのですか?だったらほしいのです!」

 アカリはアンドの申し入れに驚くがそういえばまだアンドはコスモスを持っていない事を思い出し納得した。

「そうか、なら綺麗にして充電したら付けようね。」

「キュキュイ!」


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ