表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
さいごのたび  作者: チル
フヨウジュ
21/22

フヨウジュ 残り僅かなこどもたちを探して

あらすじ

無事前の国でこどもたちの一人、オーヤと接触した主人公二人組

次に向かう場所は、何もない所……?

 彼女はひたすらに車輪を回らせ荒野を駆け抜けていた。

 大地は茶色系に占拠されておりまるで何もない。

 高速回転する二輪は速度を上げ既に時速100kmは出ている。

 しかし走れどはしれど走れど何もない。

「本当にこんな所にあるのか?」

 ひとりごとを愚痴としてつぶやいたその声は女性としては高くもなく低くもなくそれでいてよく通る。

 ハイエナとして灰と黒のぶち模様を毛並みとして持ち尾や顔はネコ科ではあるものの犬のように見える。

 服装も変わっていてまるで戦士のような赤い胸当てや高速移動時の風を防いだり情報を映し出す鼻まである大きめのふちなし半透明ゴーグル。

 胸当てはまるで戦士なのに対しハーフパンツという組み合わせはまるでちぐはぐだがハーフパンツにはラインが幾何学模様に刻まれ無防備に見える部分へのダメージはこのハーフパンツが持つ力によってエネルギーシールドに包まれ防がれている。

 そのため先程から走る車輪が小石を跳ねようと凹凸による振動が来ようと全て防ぎ痛みはない。

 そして車輪も独特だった。

 二輪はまるでバイクのようであるがそのフレームは二つの車輪を繋ぐのみで一切機械は見当たらない。

 後輪付近に不自然に歯車がいくつか浮き噛み合ってはいないのにまるで噛み合っているかのように車輪とももに高速回転している。

 そしてその一つに足を置くペダルも浮いていて力を込めれば自転車のように大きく円を描いて回り速度が増す。

 そんな自転車のような機能はあるがハンドルも座椅子も無く前輪についた取っ手を握りかなり前傾姿勢になりながら操作している。

 また加速も異常で自転車と言うよりかは乗用車以上の速度を軽く出しまた踏み込み続けなくとも勝手に歯車が回りいつまでも早く回り続ける。

『確実な情報だと思いますよアカリさん。』

 アカリと呼ばれたハイエナの左腕にある赤い腕輪……コスモスから通話の声が聴こえる。

「オーヤの立場から集めた情報だから確かに信ぴょう性はあるけれど既にかなり走ったぞ?」

『ははは、信頼してくださってありがとうございます。』

 通話相手のオーヤが皮肉か本音かわからないトーンでアカリと会話する。

「だいじょうぶです!まだまだこれからです!」

 若干舌っ足らずで子どもっぽい甲高な声がアカリの口から響く。

 同じ声とは思えないのは当然でアカリに憑依して一体化状態になっているアンドという子どもだ。

 アンドとアカリは一体化することで大きな力を産む。

 さらに最近第二段階へと一体化度が進み姿が変化したことにより出来ることが増えた。

 その一つが今の高速移動モードだ。

 二輪の変わったバイクをアンドのモヤからつくりだししがみつくようにして高速移動ができている。

 最初から身体の一部かのように自然と理解して使いこなせているが原理を聞かれても間違いなく答えれないだろう。

 姿勢も普通なら直ぐに辛くなるが不思議と楽でいかにも自分のためにあると感じさせる。

 見た目は薄く透き通っていてモロそうに見える車輪たちはその見た目に反して先程から通っている荒野のオフロード走行に平然と耐えていて頑丈だ。

「さて、どこだ?地図にもない町とやらは。」

 アカリとアンドはオーヤからの新情報を元に残りのこどもたちを探しに来ていた。

 今は5番目のミケ、2番目のオーヤ、1番目のアカリ、6番目にして最後の子がアンド。

 そして残りが3番目と4番目だ。

 そのうちどちらかがこれから向かおうとしている国にあるそうだが行けども行けども広がる荒野。

 背中は小さめのマントがあるので直射日光はそこまで辛くはないが何もないというのが精神的に辛くなっていた。

「別に山なんて無いし遠くからでも見えておかしくなたいんだがなあ。

『僕も詳しい情報までは……しかしその先に大きな街があるという情報は確かだと思いますよ。信憑性はかなり高く複数の情報がありますから。』

 オーヤはごく一部しか取り扱えないいわゆるVIP用の情報を購入し情報の裏取りもしている。

 しかしそれであっても大きな街が電車もなければ地図にも載っていないし道もない。

 なんとも奇妙な話だ。


 ここの荒野はたまに木が単独で生えているだけで草一本すらろくに残っていない。

 一昔前はコロネ平野という名前で緑に溢れた大草原だったそうだが今ではその名残は豊富な水くらいで雨は前と同じように降って大地は栄養が無いわけでもないだろうにそれでももう草は芽吹かなかい。

 このように人間が関与してないのに壊滅的になってしまった自然が世界には多くある。

 それらを見るたびにアカリはこの世界が本当に死を迎えようとしているのだと実感した。

「敵、か。」

 アカリが前方に黒いモヤを見つけ腕の握っている部分を強く握りつつ手前に軽く引く。

 高速だった車体は音もなくスムーズに減速した。

 黒いモヤは直ぐにいくつかの塊へと変わり塊は形を持って化物じみた格好へとなった。

 今あらゆる命有る相手を狩ろうとしている謎の存在セイメイだ。

 自然界に存在している動物たちも彼らに狩られ現在残っている多くの自然界の生物は逃げ隠れる事に特化したものか撃退する力量を持ったものになってしまっている。

 人間とて例外ではなく常に争い済む場所を確保している。

 今アカリの目の前にいるのは光輝く膜を持つ空に浮くアメーバに顔が口しかなく尾に至るまでまるで影のように黒く塗りつぶされ色をした狼。

 それに筋骨隆々で全身を甲虫の外殻で覆っている四本腕で二足歩行の昆虫だ。

 といってもそれぞれ大きさは1m軽くを越え昆虫に至っては2mをこえているだろう。

 目の前できっちり速度を落としきってから車体から降りると車体は自動的に形が変化していく。

 軽くカチリカチリと音が鳴り折り畳まれ小さくなったそれは棒状の杖のようなものの先に片側にむき出しの歯車が多数組み込まれた一見不思議で実用性は無さそうな斧にも見えた。

 それを片手で軽く掴みあげ回転させてから背中に当てると鞘もないのに背中に固定された。

「じゃあ、行くぞ!」

 セイメイたちも待っていたわけではない。

 アメーバは怪しげな光を蓄えていて狼は影の地面に潜り込むように一体化し辺りの地面を影のように黒く染め上げ昆虫は強敵の予感に己の中の気や筋肉をナチュコンを使って極限まで高めていた。

 多体一で高速で動ける車体から降りたのは悪手のように思えるが理由は単純で降りたほうが強いからだ。

 素早い車体に乗りつつ戦闘は予想以上に大変で比較的雑魚ならともかくそこそこの相手だと軽く攻撃を喰らったさいに車体が跳ねてクラッシュしやすいしうまく射撃が行えない。

 片手で使えるのはアカリ用に一から作られているアサルトライフルだけというのも大きい。

 それにかなりの高速で動ける事を差し引いても背中に背負った斧は強いのも一因だ。

 戦闘時の緩急つけた高速行動は降りた状態のほうが行いやすいのも大きい。

 アカリはまずはじめにコスモスに念じ爆発弾銃を取り出した。

 手に取った銃に光の筋が浮かび上がりアンドのエネルギーが流れ込んだのが確認できた。

 直ぐに相手の足元へエネルギー弾を放つ。

 地面と接触した瞬間にエネルギーが爆発し昆虫はその外殻で防御しアメーバは一部が飛び散るがおかまいなし。

 狼は影に潜った状態でどこにいるかも分からない。

 吹き飛ばされた地面が土煙となって視界を悪くする。

 その機会に乗じてアカリは銃を変えアサルトライフルへ。

 地上にいる二匹に対し動き回りながらエネルギー弾丸を連射し続ける。

 影に潜った狼は今自分の背後に回ろうとしているな、と冷静に視つつ攻め続ける。

 アンドの憑依した力で光量で見る現実世界と共にナチュコンで見るナチュコンの力が見える世界マインドサークルを視て狼を捕捉しつづけていた。

「殻の隙間の関節に、たまに露出する核が弱点か?」

 アカリが昆虫とアメーバのそれぞれの弱点を見抜く。

 マインドサークルで観察し見つけ出したものだ。

 特に核は一見透明で視認は難しい。

 空になったエネルギーバッテリーをコスモスへ入れ換えのバッテリーを取り出して銃へと入れリロード完了。

 アカリは何度も繰り返した作業を手慣れた様子で瞬時に終えると牽制射撃から狙いをつけた射撃へ切り替えた。

 高速で横跳びし靴裏にあるローラーで滑っていく。

 これもアンドの力によって出来ているため一度速度に乗ればあまり減速はしない。

 まずは昆虫セイメイの甲殻隙間。

 アカリは両手でしっかりと隙間を狙いトリガーを引く。

 エネルギー弾が空を切り連射されて身体へと次々当たる。

 しかし弾丸は最初だけ隙間に当たりあとは腕を畳んで防がれた。

 狙いに気づかれたかとアメーバへ銃口を向けようとして攻撃兆候に気づき急いで自身の移動軌道を変える。

 その瞬間先ほどまでアカリがいた場所に強い輝きの細いビームが降り注ぎ地面を焼いた。

 アメーバが強く光りつつビームを体中から放っていた。

 しばらくアカリが避け続けると光が収まりコアが露出した。

 すかさず弾丸を撃ち込むとアメーバが粘液の身体を使い防ごうとするが大半は撃ち込まれ飛び散る。

 このまま倒しきれるかと思った時に昆虫が腕を畳んだままタックルをかました。

 喰らう瞬間後ろに跳んで衝撃を和らげる。

 転がって受け身をとり直ぐに立ち上がって追撃を狙う昆虫へ乱雑に撃ち込み動きを止め防御に回らせる。

 エネルギーを撃ち尽くすとリロードを行おうとした瞬間足元から影に潜り這い寄る狼を視つけ爪と牙が届くすんでで避け離れる。

 再び狼は影に潜ってまたスキを伺う姿勢を見せた。

「やっかいです!」

 思ったよりも組み合わせが厄介で攻めきれない。

 そんなアカリの気持ちと同じくアンドも似た感想だと言う言葉をアカリの口からアンドが呟いた。


 アカリの姿は確かにアイスゴーレム戦と同じでナチュコンを使って弱点を攻める事が出来そうだがそれが出来ない理由があった。

 炎が点っていないのだ。

 アイスゴーレム戦では極度の高温を腕や脚から発せられ さらにナチュコンとして扱ってそれで敵を攻めれたがあの技が使えるのは条件があった。

 全てを燃やし尽くす勢いの怒りだ。

 感情をエネルギーとして燃える力で憎悪に濡れた怒りでは消して燃えない。

 生へ奮起する怒りによってつくため瀕死まで追い詰められた時専用の最後の切り札だ。

 さらに点火状態と今では回復力がまるで違う。

 点火状態ではダメージを受けていなければ致命傷に近くとも1分かからず治るが今ではリラックスした場所では軽症は治るが内臓や複雑骨折の治癒は不可能で戦闘中だなんて持ってのほかだ。

 幸いまだビームをかすったりいくつか打撲がある程度で済んでいる。

 戦闘続行を決め銃をしまいバッテリーをチャージさせる。

 かわりに背中に手をやってくっついていた斧を手に取る。

 持ち手は見える程度に透明で硬質ながら手に馴染む感触だ。

 自然と背中から離れた斧は手に力を込めると歯車が音を立てて回り始めた。

 構えつつ正面から踏み込んで腕を振るう昆虫セイメイから跳んで距離をとり再び地面を滑る。

 アメーバは再びコアを体内にとりこんで光を蓄えだしている。

 再び光が満ちたら攻撃してくるであることは予想が出来る。

 それまでには有利な状況を整える必要があった。

 まずアカリは斧を地面に歯車を添わせるようにしてそのまま滑り続ける。

 歯車は回転しながら黒く染まった地面をえぐる。

 途中体当たりを行ってきた昆虫を避けつつ早い速度で滑り一周円を描いた。

 すると円を描いた内側だけ黒い部分が消え失せ普通の地面へ戻った。

 突然の変化に狼があぶり出されるように形が狼へと戻り焦り周囲を見渡す。

 状況を理解し影へ飛び込もうとした瞬間鋼鉄の腕を纏ったアカリの一閃が狼セイメイの尾を斬り裂いた。

「こいつはココが弱点!」

 あの歯車が組み合わさっているだけに見える部分でスパリと尾が両断される。

 情けない悲鳴をあげながら狼セイメイは一瞬で黒いモヤへと分解され消えた。

 アカリの腕にはワライ博士からもらえた瞬時に着脱出来るロボットの腕がある。

 役目が終わり光とともにロボットの腕は消え指輪へと戻った。

 残り二体のうちアメーバは変わらずフヨフヨ浮いて光を蓄え昆虫は追撃を防ぐように構えながら近づける隙を伺っている。

 地面の黒くなっていた部分が完全に消え去った時にあえてアカリは昆虫へと無謀に見える直進を行った。

 アカリは近接行動は全般的に苦手だ。

 重厚な鎧も無ければ軽快な翻弄する前衛ならではの動きも出来ない。

 ただの拳ではそれが強調されてしまうがリーチが若干確保出来る武器なら少しは緩和される。

 といってもやはりアカリが斧で防御の隙間を縫って弱点に叩き込むのは明らかに向いてなかった。

 それでもアカリは大きく振りかぶって斧を昆虫の頭上に叩き込んだ。

 直線的な動きは簡単に見切られ腕の甲殻で受けとめられる。

 その時昆虫セイメイが身体に違和感を感じ急いで斧を弾き返して後ろへ下がる。

 昆虫はそこで自身に掛けていたナチュコンの気と力の増強が消されていることに気づいた。

 アカリの斧は目に見える範囲では歯車が合わさった何も切れ無さそうな玩具。

 しかし実体はマインドサークルにあると言ってもよくマインドサークルでは歯車にそってナチュコンのエネルギーが込められた刃がついている。

 この刃は相手のあらゆるナチュコンを切り裂き無効化する力が込められたアンチナチュコンの斧だ。

 一時的に刃を現実世界にまで影響を及ぼすようにすることで現実の物も切れるが主な使い方は敵のナチュコンを切り裂くことだ。

すかさずアカリが斧を背にしまいコスモスから爆発弾銃を取り出す。

「そこ!」

 エネルギーの回復した爆発弾銃から爆発性エネルギーが放たれ今度は昆虫に直撃。

 弾け散ったエネルギーと爆風に昆虫は大きくのけぞり甲殻の内側へも痛みが響いた。

 筋肉と気の上昇分が無くなってしまったせいで耐えれる物も耐えれなくなっていた。

 昆虫セイメイが怯んで体制を立て直しているいるうちにアカリはまた銃をしまい斧に持ち帰る。

 アメーバへと直進しアメーバに光満ちて今にもビームを放とうとしている瞬間に斧を振りかざす。

 するとアメーバは光を全て失ってしまった。

 しかしアメーバに複雑な事を把握する頭脳はなく機械的に再び光を蓄えようとする。

 アカリは追撃を行うため今度は先端に引っ掛けられるようなフックのついた槍みたいな形の銃を取り出す。

 トリガーを引くと銃の先端部分が光を帯びトリガーを離すとその光だけがエネルギー弾として飛び出す。

 アメーバセイメイに突き刺さった弾はそのまま内側へ食い込み核をとらえ引っかかる。

 アメーバが必死に抵抗するがエネルギーが繋がった先、つまりアカリの持つ銃が食い込んだ事を知らせる緑のランプがついていつでも引きずり出せる事を知らせる。

「そおれっ!」

「そおれっ!」

 アカリとアンド二人の掛け声とともにトリガーをもう一度引かれ同時に強い牽引力で核ごと弾が引き寄せられる。

 アメーバから飛び出た弾と核は銃先に戻りエネルギーは消えたが核は強力な力でひっついたままだ。

 ロボットの腕をつけ鋭利な銃先ごと地面へ叩きつけ銃先が槍のように貫通。

 アメーバと核は黒いモヤとして消え去った。


 残るは一体となればもはや鈍く防御が硬い相手だけだ。

 能力強化も解け重い一撃も喰らっている。

 勝負は火を見るよりも明らかだった。

 高速移動して防御の隙間や背後から甲殻隙間を狙ってアサルトライフルでめった撃ち。

 やがて昆虫は動かなくなり黒いモヤへと霧散した。

「ふう、やっと終わったか……」

 これでセイメイを殲滅できた。

「少しキズをなおすのです。」

 この状態であれば戦ってさえいなければ多少のキズは治る。

 銃をしまい少しゆっくりでもしようかと。

 そうした矢先。

「……?声……?」

 徐々に大きくなる誰かが沢山走ってくる音。

 遠くから聞こえてくる悲鳴に近い叫び声。

「そっちです!」

「ああ、ええとあれは……」

 まわりを見渡すとその音の主がいた。

 土煙を上げてこちらへ走ってくる集団。

 よくよく見てみると先頭には鎧が走っていて後方はセイメイたちが十数体くっついて走っている。

「先頭のは……冒険者とかハンターとかか?」

 アカリみたいな旅人はともかくセイメイを狩るために外へ赴くものは全身鎧で固めるのも珍しくない。

 全身やたらごつごつとしたデザインの鎧はやや小柄に見える全身をフルフェイスで覆っている。

 そこまで覆うと視界はおそらく外部にカメラがあってそれを通して内側モニターで見ているのだろう。

 つまり顔は一切伺うことは出来ないがその声ははっきりと聴こえる位置までやってきた。

「……たす……助けて……!助けてー!!」

 しまった!

 そう思っても後の祭り。

 呆気にとられて眺めていたらいつの間にか巻き込まれる位置まで近づいていた。

 まさかここまで見ておいて逃げてしまうのは夢見が悪い。

 だがさっきも戦った後で今度は十を越える相手をというのはいくらなんでも勝算がなさすぎる。

 一緒に逃げるの一手だとアカリは考え斧を地面に置いて再び二輪へと変型させた。

 さっと乗り込みペダルを踏み込む。

 速度を上げて迂回し横から集団へと突撃する。

「掴まれ!」

「え!?」

 説明している時間は無い。

 アカリは問答無用で声から判断すると鎧の女性に体当たりするかのように掻っ攫う。

 見た目よりは軽いがやはり鎧の分重い。

 しかし女性も反応よくこちらへしがみついてくれたためなんとか倒れず持ちこたえた。

 かなりの重量オーバーにはなるが速度は落ちていない。

「あ、あのありが……」

「話は逃げ切ってから!」

 当然セイメイたちはこちらへ進路を変え襲いかかってこようとしている。

 速度差があるのを見越してかセイメイたちは一旦黒い靄となってその追撃速度を上げてきた。

 ここまではアカリの予想通りに進んでいる。

 何もノープランで助けようとしているわけではない。

 あえて加速を抑えジリジリと距離をつめられる。

 狙いは再びセイメイが形になってギリギリ接近した瞬間に"発光"を行う事だ。

 それにしても同時に十を越える相手になぜ攻められているのだろう?とアカリは疑問に思ったが詳しいことは後で考える事にした。

「ひええ、追いつかれます!!」

 そろそろか、とアカリは後方をちらりと確認する。

 確かに間近に接近しているがまだ黒いモヤのままだ。

 まだ。

 もう少し。

「よし!」

 黒いモヤが一斉に形となって車体に飛びかかろうとした瞬間。

「目を閉じろ!」

 何をするかは分からないがとっさの指示に身体はきちんと反応し女性は目を閉じる。

 瞬間アカリは全力で光を放った。

 一秒にも満たない閃光。

 その代わり直でそれを浴びたセイメイたちは光がその目を貫いた。

 目がないセイメイすらもナチュコンによる光はその周囲を感知する器官すら焼き尽くす勢いで侵攻し機能を壊した。

 一瞬で形勢逆転しもはやまともにこちらを見れる者はいない。

 そう確信してアカリが背後を確認すると確かにほとんどはその通りの光景になっていた。

 全員が失神から黒いモヤへと戻っていたり耐えたものも光に焼かれた器官へのダメージで悶えていた。

 しかし。

 そのためにヤケになって当てずっぽうに攻撃するものがいるのは考えていなかった。

 セイメイの一体が放ったと思われる狙いなしの火エネルギーの塊。

 火球がアカリの目の前からやや下、車体近くの地面へとんできていた。

「ああっ!?」

 文字通りあっという間に火球は地面へ触れて爆発を起こす。

 速度が乗った車体はアカリたちごと大きく吹き飛ぶ。

「うわああ!!」

「わああああ!!」

「きゃああああ!!!」

 そしてアカリたちは暗闇へと意識を飲まれた。


 目覚めた時は天を仰いでいた。

 感覚では気絶していた時間は長くない。

 ただ気絶のショックでアンドとの憑依が解けアカリの横にアンドも寝ていた。

 反対側には先ほど助けた女性もいる。

 フルフェイスの上からでは分からないが気を失っているようだ。

 アカリは上体を起こしそこで驚いた。

 先ほどまでの荒野はどこへ行ったのか。

 周囲にはこちらを心配そうに覗き込む複数の獣。

 野生種とは明らかに異なり犬や羊などの多種多様な生物が人工物の帽子やかばんを持っている。

 さらにその後ろはさも当然のように町並みが広がっている。

 爆発で見知らぬ町の真ん中に吹き飛ばされたとでも言うのかとアカリは驚いてまわりを見渡した。

 アカリが事前に聞いていたここにあると言われる風景に酷似している。

 四足型の珍しい人が住みアンドロイドが多くいる。

 白と灰の高層ビルが建ち並び雲を突き抜けようとしているように見える。

 一つの黄色の鉄塔が町のどこからでも見えるほど大きく目立つ。

「ここがメロウ……」

 アカリがそう呟くと周囲からほっとするような声が上がる。

「良かった、意識は大丈夫ですね。」

 周囲の中で小型の尾をくるりと背に巻いた茶色い犬が前に出て話しかけてきた。

 見た目は完全に獣なのだがハッキリと言葉を話している。

 珍しい種族だが人だと言うのは間違いないらしい。

「ああ、ただなんで私がここにいるかが分からない。荒野にいたはずなんだが……」

 周囲の面々が次々と話すがなぜここにいるかは確かではない。

 ただ気づいた時にはここで三人とも寝ていたらしい。

 怪我もしているので救急も呼んだらしくすぐに現場へ救急隊員が到着して騒がしく時が流れた。


 数時間ほどたったころアカリとアンドは病院前に立っていた。

 アカリは軽症を治療しアンドは無傷ではあったということで経過観察で帰してもらえた。

 その間も自分たちの方が珍しがられるほど"原型人種"と呼ばれるアカリたちが"先祖かえり"を使った時の姿のような獣そのものに近い人たちしかここでは見かけなかった。

 その間に鎧の女性とははぐれてしまった。

 無事だと良いなとアンドは思う。

「あー、駄目だ繋がらない。」

 アカリはコスモスの通話機能で何度かオーヤへど連絡しようとしているのだがまるで繋がる気配がない。

 通話機能を閉じ頭をかく。

「なんというか、奇妙だ。この町に来てから連絡は通じないし私たちはあそこで初めから倒れていたらしいし、それに……」

 アカリは遠くを見渡す。

 青々とした山が連なり町をぐるりと囲んでいる。

「無かったよな?山も町も。」

 枯れた荒野がただ広がる場所から青々とした木々のある山と遠くからでも目立つ高層ビル郡。

「おかしいです……」

 誰がどう考えても突然別の地域に来たとしか思えないほどの変わりぶりだった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ