勇者到来
目の前に浮き上がった二つの水球に声を掛ける。
「ダスラ?」
───はいですわ。
───はいはーい、ちょっと待ってね。
二つの水球がゆっくりと形を変え、人の形を象っていく。数秒後には、そこに二人の美少女が佇んでいた。
「お待ちしておりましたわ魔王様」
「ちょっと待ちくたびれちゃったかな」
「おう、おはよう。待たせてごめんな」
今日会いに来たのは他でもない、昨日からずっと言っているが魔法について早速聞き出そうと思う。が、それよりもまず優先すべき事がある。名前だ。
「今日は二人の名前を決めようと思うんだ」
「名前………ですの?」
「ああ、二人いるんだから、いつまでも[ダスラ]じゃあ不便だろ?」
「んー、確かにそっか。今までは二人きりだったから問題無かったけど。魔王様の配下になるなら名前は必要だね」
「だろ? それで考えたんだけど、ウーナとディーナってのはどうだ?」
「いいですわね、では姉の私がウーナで………」
「妹のボクがディーナかな?」
「じゃあ、ウーナとディーナ、これから頼むぞ」
「はいですわ!」
「うん、任せてよ!」
二人のレベルは32。ぶっちゃけめっちゃ戦力になるから協力は素直にありがたい。
「あと、教えて欲しい事が………」
そして今回の本題。魔法について聞こうとして、俺は押し黙った。
(何だ? [直感]に反応?)
「ん………ベル、どうかした?」
「スゥちゃん、肩に乗っておいてくれ」
心配そうに尋ねるスゥちゃんに、肩に乗るよう指示する。スゥちゃんは「ん……」と呟くと、差し出した腕を伝って肩に乗っかった。
視線を周囲に巡らせ、森の一点を捉える。そちらの方を訝しげに見ていると、今度はウーナから声を掛けられた。
「何かあったんですの?」
「わからないけど………嫌な予感がする」
言いながら、[斥候]を発動させる。すると暫くして、森の方からものすごい速度で迫る生命反応が一つ確認された。
「っ!? 何か来るぞ!」
言うが早いか、そこから一体の魔物が飛び出してくる。すぐにウーナとディーナが俺を守るように前に出たが、俺はその魔物に見覚えがあった。
「レイオール?」
そう、この湖でハンバハと一緒にいた三目馬だ。
「む、小僧か!?」
音を発てて青銅色の馬が止まる。随分と焦っているその様子は、何かがあったことを如実に示している。俺はレイオールに近寄ると、捲し立てる様に聞いた。
「随分と急いでるみたいだけど、何かあったのか?」
「ああ、小僧も早く逃げろ! 奴等、恐らく小僧の事を狙ってる!」
「───っ!?」
その言葉に、俺は一瞬絶句する。だって、この世界で俺を狙うのなんて───
「待て! 俺を狙ってるってどういう事だ!?」
一つしか、考えられない。俺の命を狙う存在。それは───
「勇者が来たと言っているんだ!」
「………早すぎる」
───勇者。
誰もが憧れる正義のヒーロー。
正義の名の下に魔を殺す偽善者。
(俺がこの世界に来てから、まだ何日も経ってないってのに!)
正義を騙る暴虐の化身が森にやって来たことを、俺はこの時初めて知った。
お久しぶりです。敗者のキモチです。
ちょっと富士に行ってました!その為に執筆が遅くなってしまい、すみません(汗
今日からまた書き始めるので、一週間に一回は確実に更新していきます!
あ、そういえば、最近友人がなろうで超有名人になりつつあるという喜ばしい出来事がありました!まあ、一週間前から有名人になってたみたいですけど、自分はその事実を富士から帰ってから知りました(笑




