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異世界魔王のダンジョン奮闘記  作者: 敗者のキモチ
異世界ダンジョンは遠い
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双子の癒術精霊

3時間程かけて洞窟のある丘に辿り着くと、俺は道中で刈ってきた背高草の束をアイテムボックスから取り出して、少し窪んだベットに良さそうな所にそれを置いた。


「よっこらせ」


「えい」


 ドサッ! ドバッ!


 そして、ベルナックが草を置くのとスゥちゃんが水を吐き出すのは、奇しくも同時だった。


「‥‥‥‥‥」


「‥‥‥ん、プレゼント」


 スゥちゃんが何事も無かったかのようにそう告げるも、本日より寝床になる筈だった背高草は水没している。


 あれぇ? 寝床って水没させるもんだっけ?


 引き攣った笑みでスゥちゃんに目を向けた。


 しかし───


 ───ふぅ、何処に連れていかれるのかと思ったら、何ここ? ただの洞窟じゃない。


 ───アハハ、せめて水場の多い鍾乳洞とかだったらまだ良かったけどねー。


 突如として水が光り輝いて、二人分の声が聞こえてきた。


 ───ちょっとそこのあなた、何ボーっと見てるのよ。この汚い草、どけなさいな。


 ───そーだよおにーさん。レディは丁寧に、綺麗に扱わないと嫌われちゃうよー?


 ‥‥‥え? は? 何コレ?


「ん、プレゼント」


 何が起こっているのか理解できていない俺の傍らで、スゥちゃんが同じことを言う。


 ───ねぇ? そこのあなた? 聞こえているんでしょう? 早くしないと殺すわよ?


「お、おう‥‥‥」


 ひんやりと冷たい水に両腕を入れて、一抱えはある背高草の束を取り去る。

 ‥‥‥水を含んでいて重い。


 ───うん、これで少しは居心地がよくなったね、ありがとうおにーさん。


 ───さて、何で此処に連れて来たのか、説明してもらおうかしら。


 いや、そもそも俺が聞きたい。説明を求めるようにスゥちゃんに視線を向ける。


「ん、湖にいたの、配下にいいかなって捕まえてきた」


「‥‥‥‥Oh」


 ───配下? 配下ですって? その男の配下? 嫌に決まっていますわ。


 ───う~ん、それはボクも嫌かも。せめてここが鍾乳洞とかだったら考えるんだけど。


「いや別に、無理に配下になれって言う訳でも無いし、なりたくないんならいいよ」


 どうやら二人共、俺の事がお気に召さないらしい。

 と、そこでスゥちゃんが口を挟んだ。


「ん、心して聞く。この人、ベルは魔王様」


 ───っ!?


 ───あれ? そうなんだー。ボク、さっきから軽口きいてるけど、謝った方がいいのかな?


「別に構わないけど? だって俺、まだ魔王になったばっかでよく解らないし、レベルも低いしな」


 ───そっかぁ、魔王様はフランクでいい人だね。


「はは、そう言ってもらえると助か───」


 自嘲気味にそう呟いた時。


 ボフォッ!


「おわっ!?」


 突如として、洞窟の内部でくぐもった爆音が響いた。


 一瞬、何が起きたのか理解できずに狼狽する。急に水が爆発したみたいだが、原因は不明。今も霧が立ち込めていて様子は解らない。


「な、何が‥‥‥?」


 ───あ~‥‥そういえばお姉ちゃん、魔王様っていうのに憧れてたっけ。


「は? え?」


 状況は未だ解らない。だが漸く霧が晴れ、思考が追いついてきた時、追い討ちをかけるような出来事が目の前で起きていた。


「さ、先程から殺すだの早くしろだの、申し訳ありませんでした!」


 霧が晴れた先にいたのは、蒼いフリルの白ゴシックを着た、金髪をパッツンで切り揃えた蒼い瞳の少女で、その少女は俺に向かって土下座をしている。


「え、誰コレ?」


 ───えっと、さっきから魔王様に暴言吐いてたボクの姉さんです。


「は?」


 ───あ~、知らないのかな? ボク達精霊は、強力な存在になると人の身体を持って現界出来るんだよ。


「そ、そうなのか?」


 ───うん、ほら。こうやって‥‥‥


 フワッ


 声と共に、窪みに残っていた水が空中に浮いて、それが人の形を象っていく。数秒後には、そこには一人の少女が立っていた。

 髪と瞳の色は隣の少女と同じ。服装は蒼と白のワンピースで、髪は肩をくすぐるくらいの長さで雑に切ってある。

 姉が高貴な令嬢とすれば、こちらはちょっと高貴でお淑やかな街娘といった印象を受ける。


「初めまして魔王様。コレがボクの現界した姿だよ。ホラ姉さんも、そろそろ立ちなよ」


「え、ええ‥‥それでその‥‥‥お気を害した事は‥‥‥」


「さっきも言ったけど。まだ魔王になったばっかりだからレベルも低いし‥‥‥」


「そんなご謙遜を! もっとご自分に自信を持って下さい!」


「はいはい、姉さんその辺にしてあげて。それで、配下の件だけど」


「私はもちろんなりますわ!」


「うん、ボクもそれに異存は無いかな。でも、一つ条件というか、お願いがあるんだ」


「ふむ、それは?」


「ボク達水の精霊は、清浄な水が廻っている所じゃないと一ヶ月以内に死んでしまうんだよ」


 なるほど確かに、それは死活問題だろう。だから鍾乳洞がどうとか言っていたのか。


「わかった。じゃあそういった環境が整った場所を見つけるまではもといた湖で待っていてくれ」


「わかりましたわ」


「わかった。じゃあそうさせて貰うよ」


 それから少し話し合って、とりあえずは明日の昼。もう一度湖に行く事になった。


「じゃあ、明日の昼な」


「わかりましたわ」


「ほいほーい、まってるね」


 そして、洞窟から出ていく二人の少女を見送った。


おはようからこんばんわまでどーもです。

読者様に喜んで戴けているのか不安ですが今後もばりばり書いていく所存です。

たまに止まるかもしれませんけど、何卒よろしくお願いします。


お気に入りがここまで増えてくれると、自分としてもやる気がこみ上げて来ます!


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