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異世界魔王のダンジョン奮闘記  作者: 敗者のキモチ
異世界ダンジョンは遠い
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神獣ハンバハとの邂逅

 (案外早めに作業が終わったな‥‥‥そういえば、クエスト報酬にスキルポイントってのもあったな)


 ステータスウィンドウを開きつつ、地面に寝転がる。背中にゴツゴツした岩が当たった。うん、今度藁でも敷こう。


 スキルの項目を見てみると、メッセージにあった通りスキルポイントなるものが3程入っていた。しかしスキルポイントとはなんぞや? ということでヘルプ項目から探すと。どうやら所持スキルのレベルを上げたり新たなスキルを得たりする為のポイントの様だ。


「今は情報が欲しいし、初級鑑定のレベルを上げるか? いや、中級鑑定がとれるかもしれないし‥‥‥それよりも攻撃手段の方が必要?」


 試しに現在取得可能な攻撃スキルを見てみると、[打撃][体当たり][投擲]と、簡素なモノばかりだ。これらは1ポイントで取得可能らしい。

 [剣術][弓術]なんてのもある。でもこれ3ポイント消費するみたいだ。今あるポイントを全部使うのは避けたいな‥‥‥それにそもそも剣も弓も持っていない。

 お? [体術]は2ポイントみたいだ。ふむ、候補に入れておくか。


 次に初級鑑定と中級鑑定。初級鑑定Lv2は2ポイント消費、中級鑑定は5ポイントの消費だった。むぅ、中々上手くいかない。


「そもそも攻撃手段が無ければ情報を持っていても意味が無いか?」


 スゥちゃん‥‥‥の攻撃力は心許ないしな。うん、スゥちゃんは癒し担当だ。主に精神面の。


 さんざん悩んだ結果。俺は体術を取った。残り1ポイントはとりあえず保留だ。


「特に変わった気はしないが‥‥‥‥」


 新しいスキルを確かめる為に軽く運動をしてみる。が、特に感じる点はないが、殴る動作、避ける動作をするといつもより素早く動けた様な気がする。

 この分だと、明日には探索を始められるだろう。


 まだまだ時間はある。この際昨日確認しなかったクエストについて調べてみるか。

 まずはヘルプ項目からクエストについて書かれている箇所を読み、それからステータスウィンドウの項目からクエストを選択してみる。

 そこには今出ているクエストがいくつか、表示されていた。



────────────────────

クエスト

[もっと仲間を]───配下を5体にする

[勇者をぶっ飛ばせ]───勇者を撃退する

[捕虜の有用性]───人間を捕虜にする

[占拠するべし]───村か街を占拠する

[ダンジョンはロマン]───ダンジョンを発見する

[弱肉強食の世界]───生命を殺してレベルアップする

他、隠しクエスト多数

────────────────────



 隠しクエストは、先程ヘルプで確認してある。どうやら隠された特殊な条件を達成すると完了となるらしい、条件は基本的に難易度が高かったり希少性が高かったりする。


それと、普通のクエストの方も、幾つかクエストを達成すると更新されるらしい。例えを挙げるなら[初めての配下]を達成したから[もっと仲間を]が出てきた。みたいな感じだ。


 さて、まだ昼を少し過ぎたぐらいなのだが‥‥‥今日は外に出る気はない。出るならやはり朝が良いだろう。

 ということで、今日はヘルプ項目のまだ読んでいない所を読んで過ごした。




◇◇ ◆◆◆ ◇◇◇ ◆◆◆ ◇◇◇ ◆◆◆ ◇◇




 探索の日、俺は左肩にスゥちゃんを乗せ、片手に棒切れを持って森に出た。


「さてスゥちゃん。今回初めて探索に出る訳だが」


「ん」


「あの洞窟までは日の沈む方向、つまり西から歩いてきたんだ」


「ん」


「新たに東を探索するべきだろうか?」


「ん‥‥‥西には湖があったから、西がいい」


 湖だと? そいつは有益な情報だ。水場には生き物が集まりやすいからな。


「方向は解るか?」


「ん、覚えてない」


 さいですか。


「まあ、歩いてれば見つかるだろうし、川があればそれを辿ればいいだろ」


 そんなこんなで出発した森の探索。高低差の激しい森を息を切らしながら3時間程歩いて、湖に辿り着いた。

 そして期待通り、そこには先客がいた。


「あれは‥‥‥牛?」


 いや、それにしては大きすぎるだろう。通常の牛の三倍はあろう大きさだ。それに角も体表も、よくみると違うみたいだ。簡単に言ってしまえば、角はデカくて鋭いし体表は黄土色の甲殻の様なモノで覆われている。


(‥‥‥初級鑑定)



────────────────────

鑑定対象がディヴァイン級の為鑑定できません。

────────────────────



 なっ!? ディヴァイン? 神って何だよ! 何でこんな所にいるんだ!


「あ‥‥あぁ‥‥‥‥!」


 驚愕と恐怖に喉から呻きが鳴り背を冷や汗が伝う。


(やばい! やばいやばい! そんなの相手にして生き残れる訳がない! 見つかる前に逃げた方が‥‥‥いや、もうそれも無駄かも‥‥‥)


 ディヴァイン級‥‥‥これについては昨日ヘルプで確認したのを覚えている。この世界の全ての生物及び道具は五つの等級に別れていて、それぞれ下から順に説明すると。



────────────────────

コモン

 ごくありふれたモンスターを指す。希少価値も戦闘力もあまり無い。


レア

 コモンと比べると比較的に戦闘力と希少価値が高いモンスターの等級を指す。少し労力を割けば目にすることが出来る。


ユニーク

 非常に戦闘力が高く、そのどれもが希少。情報を集め、運が良ければ見つかるかもしれない。


レジェンド

 史上に出てくるような伝説上の架空と考えられているモンスターを指す。その戦闘力は国家ひとつを脅かすと言われる。


ディヴァイン

 殆ど神に等しいモンスターを指す。世界を変える可能性を秘める。

────────────────────



 といったところだ。要するに、今湖で水を飲んでいるディヴァイン級は強いとか、そんな次元ではないレベルでハンパないのだ。

 それは、単に攻撃力が高いとかそういった話しではない。索敵能力等に関しても異常な能力値を有しているのだ。なんせ世界を変える可能性を秘めているのだから。


 それでも、と数歩後ずさってから走り去ろうとして。


「ん‥‥‥もりのぬしさま?」


 スゥちゃんの声に冷や水を浴びせられた。


(お、落ち着け‥‥‥スゥちゃんが何か知ってるみたいだ。とりあえず話しを聞こう)


 でもやっぱり怖いから、念のためと50メートル程歩いて下がってからスゥちゃんに声をかけた。


「何か知ってるのか? スゥちゃん」


「ん、もりの神さま。しゅごしん」


 やっぱ神なのか、でも、この森ってそんな、神が住むほどすごいのか?


「神さまは森の平和が好き。沢山ころされると怒る」


「つまり?」


「ひつよう以上に森の生き物をころしたら怒る」


 なるほど、つまり食べるのに困らない程度に森のモンスターを殺していれば問題無いと。でも金の為とか嗜虐趣味の為とかで殺しまくると怒るということか。


「逆に、それされ守っていれば問題無いのか?」


「ん、怒んないから、何もしてこない」


 問題無いらしい。しかしやっぱりすぐ近づくのは憚られるので少し様子を見ようか。

 俺は再度元の位置に匍匐前進で戻ると、物影から湖を見る。森の守護神はまだそこで水を啜っていた。そしてもう一体新たに別のモンスターが湖の水を飲んでいる。馬のモンスターだ。


(初級鑑定)



────────────────────

鑑定対象がレア級の為鑑定できません。

────────────────────



 マジかよ、初級鑑定つかえねー。


 だが、互いに警戒している様子はない。馴れ合っている様子も無いが、互いに不干渉といった感じか。

 ‥‥‥いや、守護神サマの目が見守る感じの。そんな目をしている。簡単に言えば生暖かい目だ。


「大丈夫‥‥‥そうだな?」


「ん、はやく行く」


「わ、わかった」


 スゥちゃんに急かされて、俺は物影から音をたてずに出る。そして忍び足で湖に近づいていった。此処から先は迂闊な真似はできない。一歩間違えたら死に直結する問題だ。


(て、敵じゃないですヨー、水飲みに来ただけですヨー)


 そろそろと近づきながら必死に心の中で敵意が無いことを訴える。

 すると焦らされたスゥちゃんが肩から飛び降り、ポヨンと音をたてて着地した。


「───ッツ!?」


 その音に反応して、馬のモンスターと守護神サマが振り向く。俺は生きた心地がしないまま、喉を一回鳴らした。


(デケェェエェエエェェエェ!)


 改めて見ると、その巨体に圧倒される。本当にでかい。草食だからか口は小さめの筈なのだが、頭っから丸呑みされそうな大きさだ。


「ボオオ‥‥」


 守護神が一鳴きし、再度水を飲み始める。直後、ファンファーレが鳴り響いた。


『おめでとうございます。隠しクエスト[神獣との邂后]をクリアしました。報酬としてプレゼントアイテムとスキルポイントが贈られます』


「───ぁっ!?」


 声が漏れそうになる。だが、すんでの所で踏み止まった。


(危なかった‥‥‥牛とはいえ森の守り神なんだ。迂闊な真似は許されない)


 でも、何もされなかった。ということは、森に害なす存在ではないと認めて貰ったんだろうか?


「ん、ベル、こわがり」


「スゥちゃん‥‥心臓止まるかと思ったぞ‥‥‥」


「ん、こっち」


 スゥちゃんが守り神の横辺りで跳ねる。俺はスゥちゃんの元まで歩いて行くと、再度傍らの巨体を見上げた。


(ホントにでかいな‥‥‥)


 そうだ、たった今入ったスキルポイントで上級鑑定がとれるかもしれない。


 急ぎめにステータスウィンドウを開いてスキル項目を開くと、現在のスキルポイントは51とあった。凄まじい数である。そして上級鑑定に必要なポイントは10ポイント、余裕だ。ついでに中級鑑定も取得して、残りは36ポイント。使ってみたいが、今は目の前の巨体を鑑定するのが先だ。


『[初級][中級][上級鑑定]の取得を確認。[全級鑑定Lv1]に統合しました』


 取得と同時に突如メッセージウィンドウが現れて、報告される。そんな事も出来るのかと感心しつつ、俺はメッセージウィンドウを消して全級鑑定を発動した。


(全級鑑定‥‥‥)



────────────────────

種族:ハンバハ(ディヴァイン級)

名前:なし Lv337

職業:森の守護神獣

称号:森の主

────────────────────



 レベル高!?

 もはや高レベルと言うのも憚られる。これは正に神と言うに相応しいレベルだ。


「流石は神ってとこか‥‥‥」


 逆らわない方が吉だな。


「ハンバハって種族なのか」


 呟きながらその頭部のすぐ横に移動して、湖の水を両手で掬って飲む。そして反対側に目をやり、先程からずっと居た馬のモンスターを見た。


 青銅色の体表に、細身だが引き絞られた筋肉質の身体。そして何より、額に位置する部分にもう一つの目があった。


(さしずめ三つ目馬ってとこか? ‥‥‥全級鑑定)



────────────────────

種族:ヒッパリオン (レア級)

名前:レイオール Lv36

職業:歴戦の魔物

称号:疾風を操る騎馬

────────────────────



(名前つき‥‥‥? 以前誰かに飼われていた?)


 歴戦とつくだけあって、その体躯には古傷が幾つも刻まれている。戦場で使われたりしたのかもしれない。だが、その真意を調べる術は無い。


 ‥‥‥いや、あるか。


 俺は顔に水を吹っかけてから立ち上がり、顎を伝う雫を手の甲で払う。そして、モンスターテイムを発動した。


「そこのヒッパリオン‥‥‥レイオールでいいか? 何で名前を持ってるんだ?」


 モンスターテイムには、魔物の言葉が理解できる能力があった。配下となったスゥちゃんはそれがなくても会話できるが、スゥちゃんも配下になる以前はこのスキルで意思疎通をしたのだ。


「オレを鑑定したか」


「ああ、勝手にすまない。ただ、気になったからさ」


「別に構わん。名前は‥‥‥数年前に、主人が逝ったのだ」


「‥‥‥悪い、言いにくいこと聞いちゃったか?」


「殺し合に身を置いていたのだ。来るべき時が来ただけだ」


「そういうものなのか‥‥‥まあ、疑問は晴れた。感謝するよ」


 それじゃあな、と、スゥちゃんを拾ってその場を去ろうとする。だが、そこで呼び止める声があった。


「死ぬでないぞ、新代魔王」


「‥‥‥‥ハンバハ様?」


「‥‥‥‥‥」


 今の声は、レイオールじゃなかった。かといってスゥちゃんの筈も無く、となるとハンバハが喋ったとしか思えない。

 訝しげにハンバハを見つめていると、その瞳がこちらを向いている事に気がついた。


「‥‥‥きっと、生き延びてみせます」


 反応は無かったが、そう返しておく。一応敬語だ。そうして再度背を向けると、今度こそ俺はスゥちゃんを連れてその場を離れた。

おはようからこんばんわまでどーもです。

本日四度目の投稿です!


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