おクスリの時間ですよ
「‥‥‥ん、ベル起きて」
「う~‥‥‥あともうちょい」
「ん‥‥‥わかった」
あ、許してくれるんですね。
そんなこんなで朝、俺は我が天使スゥちゃんに起こされて気がついた。
「ん、おなかすい
開口一番、そんなことを言われる。そういえば確かに、少し小腹が空いてきた。思えば昨日も何も食べていない。普通だったら胃が痛いくらいに空腹を訴えてきそうだけど‥‥‥やっぱり小腹が空いた程度にしか感じない。もしかすると、魔王は普通の人間とは違うのかもしれないな。
「ふむ、なんか食うか、何食べたい?」
なるべく危険の多い森には出たくないが、そういうことなら仕方ない。肉でも何でも、採って来ようじゃないか。
「ん、草でいい」
「‥‥‥草ですか」
どうやらスゥちゃんは草食系らしい、一応雑食らしいが、植物の方がお好きなようで。
じゃあ、アイテムボックスで一番沢山ある麻痺草を‥‥‥と、そこで昨日の怪しい薬のことを思い出した。
「あ、そうだスゥちゃん。ここに怪しげな薬品が十点あります。スゥちゃんはどれがいい?」
アイテムボックスから昨日の薬を全て取り出して地面に並べる。
「ん、毒?」
「いや、違う‥‥‥筈」
「いいけど‥‥‥効かないし」
そう、スゥちゃんには状態異常系は効果が無い。なんでもスライムの特性なんだとか。そもそも、それが無ければ我が天使であるスゥちゃんに怪しい薬飲ませたり、麻痺草を朝食に出そうとするなんて事はしない。
「それで、どれがいい?」
「‥‥‥ベルはどれがいいと思う?」
聞き返されて、俺は並べられた薬を見る。
「‥‥‥‥どれもアウトな気がする」
「ん、じゃあ、コレ」
投げやりにスゥちゃんが選んだのは────。
「原始の秘薬か‥‥‥」
「ん、飲ませて」
俺は試験管の蓋を開け、中身を軽く振ってみる。黄緑色の液体は試験管の中で数回波打つと、何事も無かったかのように平穏を取り戻す。俺は覚悟を決めると、スゥちゃんの蒼い身体に中身を垂らした。
「ん‥‥‥」
「ど、どうだ‥‥‥?」
黄緑色の秘薬はスゥちゃんの体表にかかると、その中に吸収されて混ざるように消えていく。その全てが吸収された後、スゥちゃんは一言。
「味が無かった」
「‥‥‥‥味を聞いたわけじゃないんだがな」
ともあれ異常は無さそうだ。まずは一安心だな。
それで肝心のステータスは‥‥‥
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種族:スライム
名前:スゥ Lv6
職業:魔王ベルナックの配下
体力:30
魔力:50
スキル:融解液Lv3
軟体Lv5
称号:魔王ベルナックの抱きまくら
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「変わってないし!」
初級鑑定はデマか!?
「ん、力がみなぎ‥‥‥らない」
「だろうな」
「でも、おなかいっぱい」
「じゃ、朝飯はいいな?」
「ん、ベルは?」
「俺も小腹が空いたくらいだ。この調子なら明日の昼まで耐えられると思う」
それじゃあ、気を取り直して今日の予定。毒物作りに勤しもう。
「スゥちゃんは今日一日休んでていいぞ。外へ出るなり此処で寝るなり好きにしてくれ」
「ん、わかった」
ついでにレベルを上げといてもらえると助かるが‥‥‥まあ無理は言うまい。なんてったってスライムだし。
動こうとしない様子を見る限り、洞窟で過ごすつもりなのだろうと予想をつける。俺はそんなスゥちゃんを尻目に付近から手頃な石を持ってくると、アイテムボックスから麻痺草を取り出してごりごり始める。
ごりごり‥‥‥‥
ごりごりごりごり‥‥‥‥‥
ごりごりごりごりごりごり‥‥‥‥
ごりご‥‥‥もういいか。
麻痺草をすり潰すと、潰れた葉と混ざった粘性の高い液体となった。初級鑑定を使うと、麻痺液と出てくる。どうやら成功したみたいだ。粘性が高いから石の上に置いていても形は崩れない。俺は麻痺液がそれなりにたまると丸く纏めて、日光に晒した。このまま乾燥させるつもりである。
麻痺液が乾くまで待つのもアレなので、アイテムボックスから新たに死毒花を取り出してごりごりする。出来たのは先程と同様粘性の高い液体。だがこちらは麻痺草と比べると粘性がより高かったので、剤錠サイズにして外に並べる。
と、麻痺液が乾いたみたいだ。俺は拳くらいの大きさの麻痺塊を、昨日のプレゼントボックスの包装で包み中で砕く。
‥‥‥‥‥とまあ、とにかく色々と加工を施しまくった結果、こうなった。
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麻痺粉
少し体内に含んだだけで身体が痺れて動かなくなる。摂取量が多ければ死に至ることも。
死毒錠
牛であれば即死させることが出来る薬品。解毒には数種類の毒物を用いることで漸く解毒が可能となる非情に厄介な代物。
睡眠液
飲むと眠くなる薬品。毒性は弱く遅効性だが効果は長い。麻酔としても使用可能。
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雑草と解毒草は特に加工しなかった。別に自分で食えばいいだけだからな。
麻痺粉は空中に振り撒けば効果が出ると思う。死毒錠も飲みやすく、つまり飲ませやすくなった。睡眠液はいつ使うか今のところ未定だが、原始の秘薬が入っていた試験管に保管してあるから使うときに使えば良い。とりあえずどれも利便性は格段に上がった筈だ。
「ベル、できた?」
「‥‥‥会心の出来である」
「ん、よかった」
む、スゥちゃんの反応が乏しい、眠いのかな? まだ昼だけど。
本日三度目のどーもです。
突然ですけど小説を書いてると自分の世界が広がって非常に楽しいですよね!
また、小説の中には作者の本心が顕著に現れると思うのです。
自分は二人の友人が自分と同じように小説を書いているのですが、彼らの作品を読んでてめっさそう思いました!