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異世界魔王のダンジョン奮闘記  作者: 敗者のキモチ
異世界ダンジョンは遠い
25/29

裏切り2

やっぱり戦闘描写が下手だなと自分自身感じる。

うーむ、精進します。拙い文章ですみません。

 まず最初に動いたのは、俺だった。


 暫く続いた膠着状態に痺れを切らし、黒い短剣を突き刺す様に構えつつ、大きく一歩を踏み込む。


 しかし短剣が届く直前、[直感]が頭の中で警鐘を鳴らす。それに従って身体を真横に転がすと、男と俺の丁度中間で炎爆が巻き起こった。


(映像で見た通り、何の予備動作も無いな………ローブの下でやってるかもしれないが、どうやってローブを除けるか)


 転がった先の位置で、伏せた姿勢のまま短剣を逆手に構える。相手の様子を観察しながら、自分の持ち得る手駒を幾つか見出し、作戦を組む。


「………拒絶されし空間、光に嫌われた空箱。[暗闇世界](ブラックアウト)


 闇魔法Lv1で取得した、視界阻害系の効果を持つ魔法だ。唱え終えると同時に、思い描いた通りの位置に思い描いた通りの形で闇の空間が生まれる。この魔法は、敵のみに視界阻害の効果を発揮する優れもので、俺及び配下には霞がかった程度にしか見えない。


「理を知り過ぎた者、理に忘れられた者。[重力操作](グラビティコントロール)


 そして更に、同じく闇魔法の重力操作を自身にかけ、己にかかる重力をゼロにする。

 そのまま無言で、俺は音もなく男に向けて一直線に跳んだ。


 重力のかからない身体は、暗闇世界の空間に音もなく入って行き、すれ違い様、男の首元へ逆手に構えた短剣を斬りつける。


 が、振るわれた黒刃は鮮血に塗れる事無く、異常な反応速度で避けた男のフードを切るだけに終わった。


 更に、暗闇の中で俺の位置を捕捉したのか二発の炎弾が放られてくる。


「よっと!」


 無重力の中で器用にそれらを避けると、俺は重力を元に戻して、床に帰還した。


(ま、殺せなかったけどフードは切った。鑑定不能の変態相手なら上々ってとこだろ)


 パサリと音を発てて、切られたフードが地に落ちる。

 得意になって男の素顔を確認して───


「腕を、返せ。殺す」


 ───俺は、言葉を失った。


「お前、もしかして………」


 うっすらとだが見覚えがある。眼鏡をかけていないが、コイツは、そう。友香と共に俺を殺しに来ていた勇者の一人。


「金井、斗夜………?」


 男は、仲間の危機と見るや否や、真っ先に逃亡を計った腹黒勇者こと金井斗夜だったのだ。

 友香の予想は、当たっていたのである。


「生きてたのか………?」


 いや、問題はそこじゃない。俺は死体の確認までしていないから、生きていたことに関しては軽い驚きしか感じていない。

 それよりも、おかしいのだ。


 もし本当に金井斗夜ならば、あの鑑定結果は異常なのだ。


 種族不明、名前不明、レベル不明、職半ば不明。

 何より気になるのは、[失敗作]という称号と、[炎魔の呪魂]という状態。


 何かが起きたのは自明の理だ。


「死ね、殺す。消えろ、燃えろ」


 金井が、おもむろに右腕をこちらに伸ばしてくる。それに伴って、全身を覆っていたローブの一端が捲り上がる。


「腕を、返せ。焼く、奪う」


 金井は、左腕が肩先から無くなっていた。


「………だからって、俺に復讐するのはお門違い、って、もう聞こえてないか」


 先程からの支離滅裂な恨み言は、俺に対する憎悪か。

 全く、森の神様も、厄介なヤツ討ち漏らしてくれやがって、腹黒勇者さんが廃人まっしぐらじゃねぇか。


「狂った訳は、腕の欠損によるショックか………?」


 恐らくそれも要因の一つだろう。友香に聞いた話じゃ、召喚勇者達は元の世界で、争いとは無縁の平和ボケした生活を送ってきたらしい。そんな生活では、腕を失くすなんてのは余りにも信じ難い事で、情緒不安定になるのも頷ける。


 だが、多分それだけではない。それだけで鑑定結果に不可解な点が増えるのはおかしい。せいぜい[状態:混乱]と付く程度の筈だ。

 推測に過ぎないが、勇者パーティー壊滅以降、第三者による何らかの要因が絡んできているのかもしれない。


(リアが何かやったか?)


 男の様子を伺いつつ、リアを視界の端に収める。リアはスケルトンの猛攻を転移を利用して躱していた。


 あいつは基本、俺達と行動を共にしていたが………


 少し、記憶を遡ろうとする。しかし、すぐさま俺はそれをやめた。


「っと、戦闘中に他の事に集中を割くのは御法度だな」


 今は目の前の敵に集中しなければ。


「しっかし、今の隙も狙わないとは………闘う気あるのか?」


 殺気は十分過ぎるくらい十分だが、行動と矛盾している。狂ったと同時に馬鹿にでもなったか?


 心の中で思考を続けつつ、再度男に向けて斬りかかる。左腕が無いのだから左に回り込みながらだ。


 一合目、踏み込むと同時に左側面から斬り付ける。胴から真っ二つに割く斬撃は、腰を引いた金井により避けられる。

 息をつく間も無く二合目に移る。振りきった短剣を手首の回転を用いて返し、逆袈裟に斬り上げる。僅かに脇腹を掠ったが、致命傷とは程遠い。

 三合目を打ち込もうとして、視界が紅色の輝きに包まれた。


「───ッ!?」


 眼前を埋め尽くす、紅蓮の灼熱。


 咄嗟に瞼を閉じ、顔の前で両腕を交差させて目を守る。荒々しく奔る爆風に身を任せてその場を退き、全身に焼け付く痛みを覚えながら床を転がる。


「いっつ~………」


 肌を直に炙られた腕がヒリヒリと火傷の余韻に浸って、脳内に痛みという警告を絶えず送り込んでくる。

 今回は[直感]が上手く働いてくれなかった。やはりLv1のスキルでは、反応してくれない時もある様だ。


「………腕」


 コツ、と、伏せる自分の直ぐ側に金井が来るのを感じた。


「左腕だ」


 言いながら金井はその場で腰を折って屈み、俺の左腕を掴む。


「っ! 危な!」


 今度は[直感]が働いてくれた。直火で腕が炙られる光景が目に浮かぶ。

 痩せ我慢と[軽業師]を総動員して手を振りほどき、その場から数歩分の距離を取る。


「………逃げるな、焼き消す」


 身の毛もよだつ様な悪寒が背筋を通過し、熱いというのに冷や汗が垂れる。


「ス、スケルトン」


 不覚をとったとは言えダメージが多いい。俺は少々の期待を込めて、リアと闘うスケルトンの方へ視線を向けた。


 ………駄目だ。リアの転移を使った撹乱に翻弄されている。


『ふふふ………』


 ふと、俺の視線に気づいたリアが妖艶な笑みを向けてきた。


『苦戦ですか………仮にもマスターである貴方に直接的な手出しは出来ないので、その侵入者に殺して貰おうと思ってましたけど………』


 喋りながらも、スケルトンの猛攻を易々と転移で避けていくリア。

 不敵に笑うその姿は、可愛らしい外見からは想像もつかない程狂気じみていて、それでいて俺に怒りの感情を触発させる。


 ミシリ、と、心の内にある糸紐が軋みをあげた。


「………テメェが、裏切らなけりゃ………」


 思考に暗雲が覆ったように道を見失い、勇者に対する時とは違う、己が意思による度し難い怒りが暗雲から雨の様に降り注ぐ。


『アハッ! 怒っちゃいました? じゃあ、もっとやっちゃいましょう! 魔法罠作成(マジックトラップ)浄化作用(ホーリー)即時起動(ディレクト)


 リアの言葉に前後して、スケルトンの足下に小さな魔法陣が出現した。


(浄化? ───まさか!?)


 避けろ!


 叫ぼうとした時には、既に遅い。足下から神聖な光に照らされたスケルトンはその特徴的な赤い身体を白く変色させて───崩れ落ちた。


『アハハハハハハ! 死んだ、死にましたぁ! 高レベルのアンデッドも、浄化したら一発ですよぉ低脳魔王(マスター)!』


 ブチリ、と。耳の奥から確かに何かが引き千切れる音がした。


「ッァァアアア! ───ァアァァアア!!!」


 意識が落ちたみたいに目の前が暗い。痛みも敵も忘れて、俺はリアに向けて剣を投げた。しかし、リアはそれを器用に掴み取る。


『無駄ですよぉ、貴方に私は殺せませんから! そ・れ・と。良い事教えてあげます。さっき、貴方に直接的な手出しは出来ないって言いましたよね? 意味、解ります?』


 リアが転移をする。転移先は金井を挟んだ向こう側。


『侵入者を狙った間接的な攻撃なら、いいんですよ!』


 言葉に前後して、金井の胸元が爆ぜる。


 得も言われぬ速度で投擲された短剣は、砲弾の如く金井の身体を貫通し、そのまま吸い込まれる様に俺の胸元───心臓に突き刺さった。


「ガハッ!?」


 [直感]は、反応しなかった。遅れて、今更反応を示す。だけどそれは別の事に対する作用で、それに気付いたところで今更どうなることでもない。


 心臓を魔毒の短剣で刺された俺に待つ未来は、[死]それのみだ。抜いて治癒を出来たとしても、体内を心臓から魔毒に侵された身体はソレに抗う事すらままならないだろう。


罠作成(トラップ)落穴降(フォール)目標(ターゲット)侵入個体(インベーダ)範囲拡大(スペース)即時起動(ディレクト)


 続けて、ガコン! と足下から罠の起動音が伝わってくる。


 縫い止められた心臓以外の臓物が、突如訪れた浮遊間に持ち上がる。暗く成り行く視界は上昇するリアの姿を捉えた。


 逆だ。


 俺が落ちてるんだ。


 視線を移すと、腹の風穴から止めどなく血の帯を引く金井がいた。


 コイツも哀れなものだ、異世界に来て腕を失って、最期には利用されて死ぬのだから。


 かといって、助ける義理も無い。


 いや、もう助からないか。


 裏切り、怒り、無力、理不尽………そして、死。


 今日は、沢山あり過ぎた。


 少し───寝よう。

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