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異世界魔王のダンジョン奮闘記  作者: 敗者のキモチ
異世界ダンジョンは遠い
23/29

脅威

ようやく落ち着いてきました。ですが執筆ペースが書いていない間に確実に下がっているので更新ペースは遅いかもしれません。

申し訳ありません。


最低でも週一ペースで書きたい所存です。

 ロッテン・クロイツは、自他共に認める最強の勇者だ。


 称号に[真の勇者]を持ち、魔法適性は光、火、水、雷の四つ。加えて[流剣城盾]という極めて高い攻撃性と防御性能を誇るユニークスキルを所持している。


 最強の武術大国クォルトランジでも武闘王決定戦を勝ち残った猛者を難なく倒し、トリスカラーナの著名な魔術師にも魔法で引けを取らず、光属性の強力な回復魔法によって致命傷すらも即座に回復してしまう。


 これだけの才覚を見せ付けられて、彼を[最強]と認めない者など居ないだろうし、彼自身も、謙遜するのは努力した者に対して失礼だと弁えていたからそれを認めていた。


 そんな彼が、魔王討伐の任を受けたのは昨日の稽古中の事だ。そして今は、既に決戦前の支度を整えている。


 そう、決戦前(・・・)の支度だ。


 必要なのは二日程度の休養くらい。それが終われば彼のもう一つのユニークスキル[異界通路]で、一瞬にして魔王の居城に移動出来るから、旅の支度は必要ない。


 もう、神に選ばれたとしか思えない程のチートぶりだった。


(………仲間は、要らない)


 明かりを消した部屋の中、最強と謳われた勇者は身体を休めながらふとそんな事を考える。


「一人で、魔王を倒してみせる」


それは決意か、慢心か、はたまた向上心からくる志か。


 いずれにせよ、今のベルナックにとってロッテン・クロイツがこれ以上ない脅威であることは確実で、彼の先程の呟きは、十分可能といえる内容だ。


 魔王と勇者の決戦の時は、魔王の知らぬ間に近づいていた。




◇◇ ◆◆◆ ◇◇◇ ◆◆◆ ◇◇◇ ◆◆◆ ◇◇




 大理石で出来た謁見の広間のような場所に、仰々しい荘厳な石椅子が設けられていて、そこに腰掛ける俺はさながらこの城型ダンジョンの王といったところか。


 あれから、シャドウラビットが配下になった。


 それ自体は良い事なのだが、俺は手放しに喜べないでいた。


「………どうしてこうなった?」


 深い溜息と共に呟く。片手は額に据えられ、険しい表情は悩みの深刻さを表している。


『城門開け放ったからですかね?』


 他人事のようにリアが答える。


 うん、その発案、誰だったか覚えてるかい? お前だよリア。


 はぁ~と深い溜息をつく。何を言っても無駄なのは心得ているが、やり場のない怒りに溜息を禁じ得ない。


 でもまあ、とりあえずイズの紹介から始めようか。



────────────────────

種族:シャドウラビット・プリンセス

名前:イズ Lv7

職業:族長


体力:120

魔力:160


スキル:影移動Lv3

    逃走本能Lv2

    健脚Lv1


称号:逃走者

────────────────────



 まるで逃げる為だけに持っているこのステータスを見てほしい。因みに俺は見た瞬間オイ待てやコラと突っ込んでしまった。


 ただ、影移動は非常に有用なスキルだと言えた。といっても当人達は逃走用にしか使っていないみたいだが………


「キュ?」


 俺の視線に気づいたイズが鳴き声をあげる。

 愛らしい鳴き声だが、その図体は俺が騎乗しても問題なく走れる程あり、前足を浮かして立ち上がると大熊に匹敵する巨体を有している。こいつ逃げる必要ないんじゃないだろうか?

 他の個体はノーマルなサイズだから、職業の[族長]か、種族にある[プリンセス]ってのが原因だと思う。


 まあ、いくらデカくても戦力外な事に変わりはないが。というか足手まといになるのではないだろうか?


 しかし、俺が嘆いているのは足手まといが出来たからではない。溜息の理由は別にある。

 リアも言っていたが、俺達は魔物を集める為に城門を完全解放した。そして数日の内にその成果は見られ、今や城の中は数多の魔物の巣窟となっている。


 しかし、ここで一つ問題が発生する。


 俺は来訪した魔物全てに声をかけて回ったのだが、彼等との会話ができなかったのだ。

 いや、正確には[モンスターテイム]のスキルがあるから会話は出来たのだが、向こうさんに会話するだけの知能が無かったのだ。

 具体的に言うと………


「どうもこんにちわ」


「肉肉肉肉肉肉肉肉肉」


「ん?」


「ハーッハッハッハ! グハハハハブヒィー!」


 ………まあざっとこんな感じだ。


 故に現在、リアに頼んでダンジョン内の映像を見せてもらうとリアルタイムで弱肉強食の世界が見られる。無法地帯も同然だ。


 散って行く生命の数に合わせてダンジョンポイントも増えつつあるが、ここ数日で溜まったのは漸く1000ポイントに辿り着くか否かといった所で、元より所持している40000ポイントの前だと少なく感じる。

 にしても、元々390000あったが、一体リアは何人の冒険者を殺して来たんだ?

 いや、正確にはリアではなくあの刀の魔物がやったのだろうが………そもそもリアって何なんだ? ただのダンジョンコアなら、人化しているのはおかしい。


『あ、マスター。誰かきました』


 その辺について聞こうとしたら、逆にリアの方から声をかけられてしまった。続けざま、頼みもしないのに入り口の映像が出される。やっぱりこういう所だけは優秀だ。


 映像に映っていたのは、使い込まれた枯れ草色のローブを着用した人物で、肩幅等の体格から男であることが予想される。


「男か?」


『みたい………ですね。でもこの人、妙な違和感が………とりあえず、お招きしますか?』


「あら? まるで友人が来るみたいな言い方ですのね?」


「姉さん、言葉に棘が見え隠れしてるよ」


「気のせいですわ」


『言葉の綾ですよ、揚げ足をとるのはよくないです』


「ですから、気のせいですわ」


 二人はこんな状況でも相変わらずだ。少し話しを進めよう。

 ここに来たということは、つまり勇者の可能性が非常に高い。とりあえず友香に確認だ。


「友香、あれは勇者か?」


「………いや、顔見えないんじゃ何とも言えないわよ。それに、私が解るのはクォルトランジの勇者だけだからね?」


 おお、口答えとは偉くなったな。


 まあ冗談は置いといて、確かに友香の言う通り、顔が見えなければ解る物も解らない。

 だがここからではどうしようもないし、ここはリアの言うように入城してもらおう。


「そうだな……リア、出迎えてやれ」


『了解です。マスター』


 言葉に前後して、城門が重厚な音を引きながらゆっくりと開かれる。映像に映る男は、その事に若干の戸惑いを見せつつも、招きに応じてきた。


「さて………魔物蔓延る無法地帯へようこそ」


 俺の管理下でないのが残念極まりないが、そうでなくてもこの城は魔物の巣窟。下手に一般人が足を踏み入れれば、立ち所に物影に潜む者達の餌食となる魔窟だ。如何に勇者といえど、そう易々と突破できる物ではない筈だ。


「リア、閉めてやれ」


 ちょっとした嫌がらせとして、男を城内に閉じ込めるよう指示する。


『了解です。マスター、えげつないですね』


「だからこそ魔王様なのですわ」


「ん、そこがかっこいい」


 リアの発言に少しムッとするも、即座に入ってきたスゥちゃんの一言に頬が緩む。いかんいかん、侵入者が来てるんだった。


「なに、向こうさんも引き返すつもりはなさそうだし、挑発として受け取られたんじゃないか?」


 言葉の通り、男は閉まった扉に目もくれず。迷いのない雰囲気で歩みを進める。


(まあ、お手並み拝見ってとこか)


 そんな事を考えながら、俺は映像の先の男を観察していた。




◇◇ ◆◆◆ ◇◇◇ ◆◆◆ ◇◇◇ ◆◆◆ ◇◇




 殺してやる。


 怒りで頭が漠然とする中、判然としない彼の頭の中で、その意思だけははっきりとしていた。


 殺す 無い 奪われた 復讐 仕返しだ 死ね 殺す 返せ 潰す 何処だ 殺す 消えろ 死に晒せ


「殺してやる」


 無意識の内に口ずさむそれは、相手を蝕む呪詛か、それとも己にかける暗示か。


 彼自身、口から零れ落ちる言葉に気づいて居なかった。


 傍から見れば無防備にしか見えないその姿は、ダンジョンに住み着いた魔物達にとっては恰好の的として映った事だろう。


 しかし、その考えは甘かったと、魔物達は遅れて理解する。

 背後から忍び寄り奇襲をかけた鼠型の魔物は、一瞬の後に獲物の首を刈り取る未来を見る。しかし訪れたの未来は、全てが紅に染まった灼熱の世界だった。


「シギャアアア!?」


 訳がわからないとばかりに、激痛の咆哮を上げる。

 それはそうだろう、今この獲物は、何の予備動作も無く炎魔法を発動したのだから。

 通常、人間ならば魔法の使用に詠唱は不可欠であり、それはどんな下級の魔法でも適用される。しかしこの獲物は、詠唱も無くそれを成した。


「殺してやる」


 炎に身悶える魔物に興味を示すこと無く、ローブの男は呪詛を呟きながら歩を進める。


 粘つく様な炎が舐めた跡には、黒い煤と、炭化した肉だけが残されていた。


前話に登場したラルドですが、結構重要な人物にしようと思っています。



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