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異世界魔王のダンジョン奮闘記  作者: 敗者のキモチ
異世界ダンジョンは遠い
20/29

魔王城

ランキング4位入りました!

読者様のおかげです。ありがとうございます!

『おめでとうございます。クエスト[お前の物は俺の物]をクリアしました。報酬としてプレゼントアイテムとスキルポイントが贈られます』


 そんなウィンドウが表示されたのは、リアとの騒動が終わった後だった。今は全員疲れ果てて眠っている。


(そういえば、クエストの報酬を確認しないと)


 俺は少し寝ぼけた頭でそんなことを考える。どうやら皆より早く目が覚めてしまったようだ。柔らかなベットの感触にウトウトしつつも上体を起こして周囲を見る。ベットは昨日、リアに頼んでダンジョンポイントを消費し、作り出した物だ。天蓋付きの二人用ベットだ。何故二人用なのかは推して知るべし。

 俺用のベット以外にも簡素なベットは人数分用意してあったが、スケルトンと友香以外の全員がそこに集まっていた。

 俺の枕元にはスゥちゃん、隣にはリア。ウーナとディーナは横になって俺達に覆いかぶさるようにして寝ている。因みに友香はもちろん床である。寝る必要の無いスケルトンには友香の見張りをしてもらっている。寝首を掻かれたらたまったもんじゃないからな。


「ステータス、クエスト」


 頃合いもいいだろうから、ここで一度クエストの確認をしようか。



────────────────────

クエスト

[もっと仲間を]───配下を5体にする

[魔物達の畏怖]───勇者を三人殺す

[奴隷収集家]───捕虜を三人にする

[占拠するべし]───村か街を占拠する

[召喚のお時間です]───ダンジョンモンスターを召喚する

[生きるために]───生物を十体殺す

他、隠しクエスト多数

────────────────────



 うん、昨日だけで大分変わったな。


 奴隷収集家にツッコミを入れたい気分を落ち着けてクエスト報酬を見ることにする。まずは[捕虜の有用性]のプレゼントボックスを取り出した。中には無骨な革で出来たベルトのような物が三つ入っている。


(‥‥‥全級鑑定)



────────────────────

隷属の首輪 (レア)

 この首輪をつけられた者はつけた者の命令に逆らえなくなる魔道具。主に奴隷等に使い、解放は主人の意思もしくは死亡の他には無い。

────────────────────



 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥なあ、言っていいか?


 いや、多分もう何を言おうとしてるのかは解っているのだろうが‥‥‥‥うん。これさ、とりあえずさ、ね? もっと早くに開けとけばさ、良かったなって‥‥‥最初から友香につけてればあんなふうに暴れられたりしなかったんだよね?


 ‥‥‥‥いや、後悔はやめよう。うん、後悔しても時間の無駄だ。とりあえず今後、報酬はなるべく早めに開ける事にしよう。


 三つあるみたいだから一つ取り出して二つをアイテムボックスに送る。一瞬、言うことを聞かないこのダンジョンコアにつけるのもアリかなと思ったが、それは止めておいた。なんだかんだで俺の配下みたいなもんだからな。とりあえずこの一つは友香用だ。


「えっと次は‥‥‥[勇者をぶっ飛ばせ]の報酬か」


 同じようにプレゼントボックスを取り出して開ける。果たして中には、首飾りが入っていた。魔王を連想させるような、悪魔の首を象ったアメジストがついている。


(おっし、魔王っぽい装備ゲット)


 といっても首飾りだから目立たないが。まあそんなことは気にしない。いつものごとく全級鑑定を実施した。



────────────────────

悪夢の首飾り (ユニーク)

 魔に生きるもの以外が装備すると毎晩悪夢にうなされる首飾り。アメジストの宝石には殺した勇者達の怨念が宿り、装着者の魔力を微量ながら奪い続ける。尚魔力は宝石内に蓄積され、装着者の任意で取り出しが可能。

────────────────────



 なんて物騒で便利な物なんだ。


 つまり、これを着けている間は魔力を奪われ続けるけど、自分の魔力が枯渇した時にこれを使えば回復する。ということか。うん、とても物騒な説明してるけど便利だ、これ。


「俺って魔に生きる者だよな? 魔王だもんな、魔に生きる者の頂点じゃん俺」


 疑問を抱くが、その場で自己完結する。早速装備してみた。


(魔力を吸い取られてる感じは‥‥‥しないな)


 どうやら本当に微量みたいだ。だが塵も積もればなんとやら、何日もつけてればそれなりな量になるだろう。


 では、次に行ってみようか。


「確か[希望を奪う者]だったよな」


 魔王に相応しいものが手に入りそうだ。


 期待一杯にプレゼントボックスを開封。中身は金で縁どられた‥‥‥指輪か。

 金の輪部分にドラゴンの意匠が彫られていて、中央の黒い宝石を咥える形の物だ。結構カッコイイし、売れば中々の値段になりそうだ。でも‥‥‥


 う~ん。いや、また装飾品か‥‥‥嬉しいんだけど、もうちょっとこう、武器とか鎧とかないのかな? 正直期待外れだけど、まあ‥‥‥鑑定しよう。



────────────────────

黒竜の指輪 (ユニーク)

 黒竜を封じ込めた宝玉を使った指輪。手持ちの武器に黒竜の加護を与え、武器の能力をそのままに強化、変化(へんげ)させる。武器によって新たに付与される能力には違いがある。

────────────────────



 期待外れなんて思ってスンマセンでした。


 いやぁ‥‥‥こう、ずっと求めていた物が手に入るっていいよね。やばい、指輪がとても輝いて見えるよ。


「これは一生大切にしよう。うん」


 肌身離さずだね。それじゃあ次に行こうか、確か次で最後の一個だったよな。


 最後のクエスト‥‥‥[お前の物は俺の物]だったよな。面倒なので開ける行程は省こう。プレゼントボックスの中にあったのは透明な宝珠(オーブ)だった。



────────────────────

召喚のオーブ (レア)

 召喚する時に使用するオーブ。オーブの等級により強いモンスターが出る確率が変動する。

────────────────────



「‥‥‥え、召喚ってこんなの必要だったの?」


 そうだったのか、知らなかった。調査不足だな。一応ヘルプで確認してみる。


 ‥‥‥あった。なるほど確かにこのオーブを一つ消費して一体の魔物を召喚するみたいだ。オーブを得るにはダンジョンポイントを消費するらしい。


 オーブを介さずそのままダンジョンポイント消費で召喚してもいい様な気がするが‥‥‥まあ、何かしら意図があるんだろう。


(ま、後でリアに詳しく聞いてから使うとして‥‥‥友香に首輪着けるか)


 召喚のオーブをアイテムボックスにしまって天蓋ベットのカーテンを開く。配下達が起きないように気をつけながら降りると、友香の下へ向かった。すぐ近くにスケルトンも居る。


 ‥‥‥そういえば、こいつの詳しいステータスをまだ見ていなかったな。

 ステータスウィンドウを開いて配下の欄からスケルトンのステータスを開く。鑑定を使わないのは、鑑定よりもこっちの方が詳しく解るからだ。あの時は注意力散漫になるから鑑定で済ませたけど。



────────────────────

種族:鬼神憑き

名前:スケルトン Lv57

職業:魔王ベルナックの配下


体力:950

魔力:500


スキル:鬼化Lv5

    憑依Lv3

    霊体Lv2


称号:死霊を統べる者

────────────────────



 ‥‥‥‥‥強化薬シリーズが凄すぎる。


 称号が[霊魂の統括者]から[死霊を統べる者]に変わっている。似たような称号なので何が違うのかは解らないが、きっと凄いのだろう。


 にしても鬼か‥‥‥鬼ねぇ、そういえばコイツの本体って鬼火みたいなやつだったし‥‥‥


(本当に改名した方がいいんさじゃないか?)


「スケルトン、お前の名前、変えようと思うんだけど、いいか?」


 遠慮がちにそう告げると、カタリ、と首を横に振られた。


「そ、そうか? [スケルトン]って名前、気に入ってるのか?」


 今度は頷かれた。どうやら気に入っているらしい。


 いつまで言っていても仕方ないので壁にもたれて寝る友香の首にプレゼントを付けてやる。


「似合ってるなぁ、クソ勇者」


 聞こえていないだろうが、寝ている友香に向かって皮肉を言い放つ。言い放ってから、思った。


(俺ってもしかして、勇者相手になると強気になる?)


 思い返せば翔太達と遭遇した時も俺は大分危ない橋を渡っていた。それに言葉遣いも少し変だった気がする。


(なんだかんだ言って俺も畑野の言葉に腹立ててたのかな)


 ウーナがキレてくれたから表立って怒らなかったのかもしれない。ほら、キレてる人が近くにいると冷静になれるだろ? そんな感じだよ。


「ま、どうでもいいか。そんな事より朝日でも浴びよう」


 無為な思考を放棄し、別の事に意識を向ける。

 別に朝日を見て何か思うほどロマンチストではないが、それでも朝はスッキリしたい。隙間から光りの零れる両開きの扉に手を掛けると、俺は一息に開け放った。暗かった部屋に一筋の陽光が差し込み、俺もそれに照らされる。


「ふ~、この眠気が吹き飛ぶ感じがいいよな」


 全身に心地よい朝日を浴びながら深呼吸をして、鈍った脳に酸素を送り込む。森を一望した先に見える太陽を眺めた。


(それにしてもいい景色だ。絶景絶っけ‥‥‥‥絶景?)


 いや待て、おかしい。何故ここから森が一望出来る。


 そもそも、このダンジョンの出入口に扉なんて無かったし、上り階段が出入口になっていた筈だ。思えば部屋も、暗くて目立たなかったがそれなりに豪奢な造りになっていた。更には今現在立っているこの場所も、大理石で出来たベランダだ。


 俺は嫌な予感を覚えつつベランダから下を覗き込む。建物の上方部も後ろを見ることで把握すると、自分の予感を遥かに越えた問題外の事が起きていることを理解した。


「な、なんで‥‥‥どうして‥‥‥‥」


 何でこうなったのか解らない。誰がやったのかは想像がつく。というかこんな事が可能なのはヤツしか居ない。でも、流石のヤツでもこんな事をする程馬鹿だとは思えない。だが、だったら何故‥‥‥!


「何故、城が建っているんだぁあぁぁああぁ!」


 まさか本当にヤツが、リアがやったのか!? いや、そんな筈は‥‥‥いやでもアイツ馬鹿っぽいし‥‥‥‥え、ちょっと待ってマジで?


 ダメだ、状況の整理が追いつかない。というか理解したくない。


 どうするよ? これホントにどうするよ! 魔王ここに居ますって叫んでるようなモンじゃん!? 勇者ホイホイじゃん!


「リア! 起きろリア! どういう事か説明しろ!」


 今しがた出てきた部屋に引き返し、天蓋ベットで呑気に寝ているリアの肩を乱暴に揺らす。


『ふぁぁ‥‥‥マスター? 夜這いですか?』


「んな訳あるか! 何だよこの城! お前がやったんだろ!」


『城? ああ、ハイ! やっぱり魔王様ならダーク系のお城かなと思いまして、しっかりと立派なお城を造っておきました! どうですか? えらいですか? ではでは撫でてください! このマスターの為にある優秀な上にプリティーなリアの頭を!』


「だあああ! 俺はのんびり生きてたいんだよ! 城なんか建てたら勇者どものいい的だろうが!」


『え~? それじゃあ魔王っぽくないじゃないですか~』


「お前ふざけんなよ! 頼むから元に戻してくれ! 今すぐに!」


 やっぱりコイツは馬鹿だった! 可能ならば今すぐにチェンジしてやりたい。 でもまあ、言ったことはちゃんとやってくれる筈。俺がのんびり暮らしたいと明言しなかったからこうなったのであって、戻せと言えばちゃんとやってくれるだろう。


『え? 戻すんですか?』


「ああ、出来るだろ?」


『あ~、えっとぉ‥‥それは‥‥‥何と言いますかゴニョゴニョ‥‥‥‥』


 おい、ちょっと待て何で語尾を濁す? まさか出来ないなんて言うんじゃ‥‥‥‥


「‥‥‥できるよな?」


 確認してみる。若干脅迫気味なのは容認してほしい。

 リアは俺の言葉に居心地が悪そうに視線をさ迷わせる。そして何やら語り始めた。


『マスター‥‥‥リアは、頑張ってお城建てました。それはもう、細かい所まで気を遣って、我ながら最高の出来だと思ってます』


 俺は無言で先を促す。大体言いたい事は「頑張って作ったから壊さないでほしい」って所だろうと予想はつくが、多分それは上辺の理由だろう。聞く必要はないが言質はとりたい。


『侵入者撃退用の罠もちゃんと設置しましたし、モンスター召喚の事も考えてポイントも残しましたし、召喚するモンスターも大体決めてありますし、そのモンスターの事も考えて最適の環境まで整えました』


「‥‥‥それで?」


 俺は冷めた表情を崩さない。だがそれを気にも留めず、リアは最後の締め括りを力を込めて力説した。


『マスター‥‥‥私、すっごく頑張ってダンジョン造ったんです! お願いです! リアの造ったお城を壊さないでください!』


 ‥‥‥説得力はある。その必死に訴えてくる涙目の表情も俺の男心に揺さぶりをかけてくる。少しでも気を抜けば許してしまいそうだ。だが、これは上辺。コイツがそんなご立派な意思を持って行動する筈が無い。加えてこの涙目で訴えてくる姿勢も、普段のリアからは想像できないモノだ。

 だから、俺は冷酷に尋ねる。あの雰囲気的に答えてしまう魔法の言葉を。


「‥‥‥本音は?」


『ごめんなさいもう戻せないんです! テヘ!』


 よし決めたコイツに[隷属の首輪]つけよう。


『ちょ、マスター? い、いやですねぇ、首輪なんて手に持って、そんなもの付けなくても私はマスターの物ですよぅ?』


「‥‥‥‥‥‥‥」


『え、あれ? あの、マスター? えと、本当にゴメンナサイ。元に戻すには同じだけのダンジョンポイントが必要でして、今ある全てのポイントを使っても尖塔一つぐらいしか戻せないです』


「‥‥‥元々あったポイントは?」


『え? あ、はい。約390000ポイントです』


「今は?」


『‥‥‥約40000ポイントです』


「‥‥‥‥‥‥」


『いやぁぁぁ! マスター大好きです! だから怒らないで! 首輪付けないでぇ! 大丈夫です。ポイント沢山使った代わりにダンジョンの壁の硬度は最大にしてありますから! 自動再生機能も最大ですから! ホラ! リアに死角はありません!』


「黙れ小娘がぁぁぁ!」


『ひゃあああああああ!』


 ダンジョンマスターとダンジョンコアの鬼ごっこが始まった。

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