遮刀 対 鬼骨
今回、短めです。キリが良かったので。
ですが、二話投稿します。夜以降に二つ目を投稿する予定です。
ガィイィィイィン!
歪な音を発てて、刀の魔物が吹き飛び、迷宮の壁に突き刺さった。
やったのは、紅黒く染まった刺々しい意匠の骸骨。その手に握られた湾曲刀が、刀を弾いた衝撃に耐えきれずにボロボロと崩れ落ちる。
「ガァァアァアァ!」
しかし、武器など要らぬとばかりに砕けた湾曲刀を投げ捨て、紅い骸骨は爪を広げて刀に襲いかかった。刀身を打ち砕かんと振り下ろされた強靭な爪は、身動きのとれない刀の魔物を容赦なく叩く。
歪に響く金属音は、刀の悲鳴にも聞こえた。そのまま二撃、三撃と爪に打たれ、身悶える様に壁の拘束から抜け出した刀の刀身には、決して浅くはないキズが幾つか見られる。
「キィィイ!」
そしてスケルトンの続く四撃を、ヒラリと躱してみせた。続けざま、仕返しとばかりにガラ空きの胴体、それも、骸骨の脆そうな間接部に一撃を打ち込む。そして、刀の狙い通り、それは腰骨を斬り、鬼骨の上半身と下半身を分離させる。
重力に従い、上半身が灰砂の上に落下して、下半身が力を失った様にくず折れる。その最大の隙を、刀の魔物は見逃す事無く斬りかかった。
「ガァアァアァ!」
対して上半身のみになった鬼骨は、咆哮をあげながら灰砂に片腕を突っ込み、中から一本の長剣を引っ張り出す。
耳が痛くなる様な、金属の奏でる衝突音が部屋に響き渡る。
しばらくその場で打ち合いが続くも、長剣は長年灰砂に埋まっていたせいか、大分脆くなっている。数分も経たぬ内に、ギシギシと剣の寿命は尽き始めた。折れるのも時間の問題だろう。
だが折れるより先、鬼骨が先手を打つ。軋む長剣を一際大きく振りかぶると、残った寿命をその一振りにかけて、再度刀を吹き飛ばした。
しかし今度は壁に突き刺さる事無く、刀は空中で体勢を立て直す。そしてすぐさま、鬼骨の追撃に備えた。
「ゴアァァアァアア!」
鬼骨は両手で地面を叩いて飛び上がり、上半身のみで刀に追撃する。
そしてその頭蓋を、刀の切っ先が貫いた。
「ゴア……ア…ァァ……」
やがてその瞳の紅い輝きは眼窩の中に溶けて。
闇に消えた灯火の如く闘志を失った鬼骨に俺はーーー。
「命令する。『霊魂を一つ消費して蘇れ』」
たった一言、命令を下した。
直後、カッ! と眼窩に火が灯り、だらりと垂らしていた両腕が瞬時に閃く。己の額に刺さった刀の柄を強引に掴むと、頭を仰け反らせてそれを引き抜いた。
「ゴアァァアァアア!!!」
迷宮に轟く、二度目の産声。刀はその手から逃れようとするも、鬼骨の剛力はそれを許さない。鬼骨は片方の手で切っ先の方も掴むと、まるで肉でも貪るように、その刀身に牙を立てた。
ギリギリと、その刀身にめり込んでいく牙を中心に、侵食するようにヒビが蜘蛛の巣を広げる。やがて十秒も経たぬ内に。
リィィイィイイィーーー!
澄んだ音を発てて、刀身が砕け散った。
おはようからこんばんわまでどーもです!
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