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異世界魔王のダンジョン奮闘記  作者: 敗者のキモチ
異世界ダンジョンは遠い
16/29

遮刀の迷宮

ランキング入り果たしました!!

皆さんのおかげです。ありがとうございます!

 広大な森の地下に存在する[遮刀の迷宮]。


 このレジェンド級の迷宮はかつて、数多くの冒険者達を飲み込んでいった地獄の迷宮だ。

 しかし今は、ここ数十年人っ子一人入って来ない状態が続いている。地面を闊歩するのは灰色の砂と死体を貪るネズミのみで、辺りに響くのはその鳴き声ばかりだ。


 そんな沈黙の迷宮に、突如として三人分の悲鳴が空気を震わせた。


「「「わぁぁぁぁぁぁぁぁあ!?」」」


 悲鳴は部屋に開いた天井の穴から、次第に大きくなってくる。それからすぐに、三つの影が穴から排出された。地面に着地すると同時に地面に積もっていた砂が宙を舞う。


「ブフッ!? ゲホッゴホッ! 何だここ、砂‥‥‥? ウーナ、大丈夫か?」


「は、はい、問題ありませんわ。魔王様はお怪我ありませんの?」


「問題ない。ところで友香いるか?」


 砂の舞う中で、お互いに安全を確認する。そして俺はおもむろに友香の名を呼んだ。


「‥‥‥‥何よ」


「別に? 人員の確認だ」


 相も変わらず敵意に満ちた目をこちらに向けてくる友香に呆れつつ、俺は落ちてきた穴を確認する。壁に手を触れて軽く調べると、俺は登るのは不可能と判断した。


「登って戻るのは無理そうだな‥‥‥」


「では、進むんですの?」


 無言で頷く。実際それしかないだろう。だがここはレジェンド級の迷宮。そう簡単には行かないというのは重々承知している。


「果たして抜けられるかどうか‥‥‥‥」


「ちょ、ちょっと待って! ここアンタの拠点じゃないの!?」


 ああ、そういえばコイツにはそう言っていたな。また暴れられる前に訂正しておこう。


「ああ、それ嘘」


「な、なん‥‥‥!?」


 即答した俺に絶句する友香は、顔が怒りで赤く染まっていた。よくも騙したなとでも思っているのだろう。

 ‥‥‥‥知った事ではない。


「ここはレジェンド級の迷宮、[遮刀の迷宮]だ。聞いた話だと、ここに来て帰ってきた奴は居ないらしい」


「な、ななな、ど、どうするのよ! アンタ強いんでしょ!? 何とかしなさいよ!」


「無茶言うなよ、俺まだレベル12だぞ?」


「ふ、ふざけないでよ! もういい、ひ、一人でも出てみせるわ!」


 友香がやけ気味に剣を取ってザックザックと先に向かう。途中、何かに蹴っ躓いた。


「っとと、もう何なのよ‥‥‥」


 そのまま、悪態を吐きながら友香は奥の扉へと消えて行く。それを見送ってから、俺は地面の砂を少し探って、先程友香が躓いたモノを掘り当てた。


「‥‥‥骨、ですの?」


 出てきたのは、恐らく大腿骨の辺りの骨だ。それを傍らに置いてまた周辺を探る。すぐに頭蓋骨を発見した。


「やっぱり、人骨だな」


「魔王様、何をするんですの?」


「いや、少し試そうと思ってな」


「試す?」


 やって見せた方が早いだろう。俺はウーナに無言で頷くと、虚空に手を翳して呪文を詠唱した。


「暗闇を好む矮小な闇、死して尚世界を望む愚者達よ、我が名の下に集え。[霊魂操作](マリオネットゴースト)!」


 よくよく考えれば霊魂を操作する魔法なのだから霊魂がありそうな場所じゃなきゃ効果は無いのも当然だ。


 さっきは何の変哲も無い森でやったから何も起こらなかったが、ここは幾人もの冒険者の命を奪ってきた伝説のダンジョン。耳を澄ませば怨嵯の声が聞こえて‥‥‥こないけど、沢山居る筈だ。


 果たして魔法は‥‥‥‥成功した。


 ────ボゥ


 控えめな音を発てて、頭蓋骨の少し上に青白い炎が揺らめく。その他にも部屋の各所で同じような炎が揺れていた。遠くの方から「いやぁぁぁぁ!」と友香の悲鳴が聞こえてきた事を考えると、他の場所でも同じ事が起こっているのだろう。


「これが霊魂ですの?」


 傍らのウーナが思わずといった様子で呟く。俺は頭蓋骨をそっと地面に置くと、緊張を解す様に咳ばらいをして霊魂に声をかけてみた。


「えーっと‥‥‥ゴホン、初めまして?」


「‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥」


 無視!?


「魔王様、話せないのではありませんの?」


「話せない‥‥? じゃあ、どうすればいいんだ?」


「解りませんが‥‥‥とりあえずその骨に宿らせてみるのがいいと思いますわ」


「命令すればいいのか? ふむ、『この骸に宿れ』」


 ウーナの助言の通りに命令する。俺はこの時、目の前の霊魂にだけ命令したつもりだった。だが次の瞬間、俺が呼び起こした全ての霊魂が指定した骸骨に向けて動き出す。どこか遠くで「もういやぁぁあぁああぁあぁ!」と聞こえてきたが気のせいだろう。


 空間が捩曲がって見えるほど大量の霊魂が猛烈な勢いで突っ込んできて目の前の白骨死体に吸い込まれて行く。その光景はまるでこの後ビックバンでも起こるのではないかと思わせる宇宙的なモノだった。


「うおおおおおおおおお!」


 余りにも非現実的な光景に思わず叫んでしまう。目の前の骸骨は瞳の位置を怪しく蒼光らせながら空中に浮き、身体の他のパーツも砂の中から出てきて宙空で元の位置へ戻って行く。

 やがて霊魂の嵐が止んだ頃、そこには一体の白骨死体が立っていた。


「‥‥‥‥は、始めまして?」


「‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥」


 まだ無視!?


 「まだ話せないのか? それとも無視してるのか?」


 俺がどうしたものかと悩んでいると、突然目の前の白骨死体がカラカラと音を発てて膝を着いた。それはまるで俺に忠誠を誓う騎士の様子だ。 ‥‥‥骸骨だけど。


「カタカタカタ」


「ん?」


「カタカタカタカタ」


「何か言っているみたいですわ‥‥‥ですが」


「何言ってるかは解らないな」


 カタカタとしか聞こえない。意思疎通は不可能と考えていいだろうか? 一応俺に忠誠を誓うポーズを取っているし、戦ってもくれるだろう。

 ただ一つ気掛かりなのは、コイツの中には恐らく百を越えるであろう魂が宿っているということだ。


「えっと‥‥‥とりあえずはスケルトンと呼ばせてもらう、いいか?」


 スケルトンがカラリと首を縦に振る。


「この迷宮、案内出来るか?」


 カラリと首を縦に振る。


「何だか不気味ですわね、この子」


 ウーナよ、それは言うな。


「まあ、案内はできるからいいだろ。とりあえず案内してくれ」


 俺が苦笑気味に頼むと、スケルトンは一つ頷いてから歩き出した。

 何処かに行った友香が気になるが、もうこの際どうでもいいだろう。俺は出口もすぐにたどり着くだろうと安心してスケルトンについて行っ

 移動中、気になったのでスケルトンに鑑定をかけてみる。


(全級鑑定)



────────────────────

種族:宿り神(ユニーク級)

名前:スケルトン Lv57

職業:魔王ベルナックの配下

称号:霊魂の統括者

────────────────────



 マジパネェっす先輩。


 神って、ちょ、何の冗談ですかね? なんか名前の欄が種族名みたいに見えるけど実際の種族よりめっちゃ劣って見えるよ! というか違う種族にすら見えるよ!


 ‥‥‥‥とりあえず後で改名しよう。


 何故だ? どうしてこうも俺の配下は俺より強いんだ? 思えばレベルが俺以下なのはスゥちゃんぐらいな気がする。嗚呼スゥちゃん、君の事一生大切にするよ。


「魔王様、少し変ではありませんの?」


 俺が一人で悶絶していると、ふと後ろを歩くウーナがそんなことを言ってきた。


「え? 何がだ?」


 一瞬俺の事を変だと言っているのかと邪推するも、雰囲気からそうでないと察する。


「魔物が‥‥‥居ないですの。普通なら、コモン級の迷宮でも魔物は大量に居る筈ですわ」


「そうなのか?」


「はい‥‥ですので罠の方を‥‥‥‥警戒しているのですが‥‥‥こちらも特に見当たり、ませんの」


 他の迷宮がどうなのかは知らないが確かに、レジェンド級でこの様子なのは本当に拍子抜けだ。何かあるのかもしれない。


「もしかするとこれは‥‥数が少ない分‥‥‥強力な魔物が‥‥」


「ウーナ?」


 何だ? さっきからウーナの様子がおかしい。そんなに早いペースで歩いていないのに息が大分上がってるみたいだ。


 俺が怪訝そうに振り返ってウーナの顔を覗き込む。するとウーナはしまったと言わんばかりに顔を隠した。だが、既に遅い。その病人のような青白い顔はこの薄暗い中でもよく見てとれた。


「お前! どうしたその汗、顔色もすごく悪いし‥‥‥か、風邪か?」


「ち、違い‥‥‥ますわ。な、んでも‥‥‥‥あり、ま」


 だが言い終えるより先、ウーナが倒れ込む。あわやという所で俺が受け止めたが、これ以上歩くのは不可能に見えた。


「なんでもない訳ないだろう! ウーナ、正直に話してくれ。何があった? 何が原因だ?」


 先行していたスケルトンが異変に気がついて立ち止まる。だがそんな事も気づかないまま、俺はウーナを問い詰めた。


「‥‥‥‥二身一体の弊害、ですの。‥‥‥力を共有する‥‥‥私とディーナは‥‥あ、余り‥‥離れて居る、ことが‥‥‥出来ませんの」


 ‥‥‥‥‥なんて事だ。ここから引き返しても戻る道は無い。だがこの様子ではこれ以上動くのは危険だ。それにもしかすると、ディーナも上で倒れ込んでいる可能性がある。


 最低だ‥‥‥何が魔王だ。配下の異変に今の今まで全く気づかなかった! その上自分で警戒する事もせずにウーナにばかり気を使わせて‥‥‥!


「ど、どうすればいい? どうすれば楽になる?」


 彼女だけは、絶対に失う訳にはいかない。


「こ、これ以上、離れないように‥‥‥‥」


「‥‥‥‥解った。スケルトン、ここでウーナの護衛を頼む」


 スケルトンにそう指示をすると、感情の読み取れない白い顔が首肯する。


「魔王様‥‥‥私ごときに、そん‥‥な」


「いや、ウーナ。俺にとってお前は大切な存在だ。ここまでしてくれたお前を、俺は絶対に失いたくない。大丈夫さ、俺は魔王。簡単には死んだりしない」


「魔王‥‥‥様?」


「それじゃあ行ってくる。スケルトン、お前の中にいる霊魂の一部を近くの死体に宿らせてくれ、後の案内はそいつに頼む」


 指示をしてすぐに、スケルトンの身体から三人分の魂が出て近くの白骨死体に吸い込まれて行く。すぐに一体の白骨死体が立ち上がってきた。その右手には無骨な湾曲刀が握られている、なるほどウーナが抜けた分の戦力か。


「気遣いありがとな。じゃあ、待ってろよウーナ、必ず出口見つけて、何とかするから」


 守るべき配下の為に、俺は一歩踏み出した。

おはようからこんばんわまでどーもです!


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