口開く迷宮
遺跡に着いた俺は、前回来た時と違う様子に唖然としていた。
「ベル、遺跡開いてる」
「お、おう‥‥‥何があったんだ?」
以前まで入口を塞いでいた石材が無い。いや、吹き飛ばされでもしたのか、少し離れた所に石材が落ちているのを確認する。
「何かあったのかな? ハンバハ様が通ったとか?」
「マジかよ‥‥‥‥」
俺は逃れる様に片手で両目を覆って隠す。とりあえず、スゥちゃんが期待を込めた視線を向けてくるのに絶えられない。
「ん、ベル」
「‥‥…‥‥」
「ベル?」
「‥‥‥いや、スゥちゃん? 行かないよ? 行かないからね?」
「ん、信じてる」
「‥…‥‥‥」
ダメだ、聞いてない。というかスゥちゃん? 信じてるなんて可愛らしい声で色っぽく言ってもね? 君はスライムなんだよ? ボディの見た目に魅力が無ければなんの意味もなぁあぁぁあ息がぁあぁぁあ!?
「がぼぼぼぼ!」
「魔王様!? 大丈夫!?」
「ちょっ! スゥちゃん何をしているんですの!?」
「ん、間違えた」
「ぶはぁ! ゲホッ! ゴホ、ゲホッ! な、何するんだスゥちゃん‥‥‥」
「ん、ベルが何か考えてる気がした」
………今後あのような事は考えない様にしよう。うん、そうしよう。
「ま、まあ気を取り直して‥‥‥情報吐かせるか」
「あ、それちょっと待って欲しいですの」
万を持して解毒草をとりだすも、今度はウーナに出鼻をくじかれた。いったい何だというのだろうか? 再度解毒草をアイテムボックスに放る。
「その拷も‥‥‥ゴホン、平和的なお話しはこのダンジョンの中でするのが良いと思われますわ」
「オイ今とてつもなく嫌な響きの言葉が聞こえたのは気のせいか?」
「く、口が滑っただけですわ!」
口が滑る‥‥‥ついうっかり[本音]が出たと。ふむ、[本音]ね。
「まあまあ、とりあえず姉さんはちょっと黙ってよっか? ボクが説明するから。魔王様もそれでいいよね?」
「そうしてくれ」
「そんな!?」
「うんうん。えっとね、やっぱり勇者から情報を引き出すとなると少しは脅迫せざるを得ないかもしれないでしょ?」
「まあ、そのつもりだ」
「だったら、森の中みたいな開いた空間よりも、洞窟とか暗い部屋とか、そういった場所の方が心理的には有利だよ。それに説得する時には外に出せば、説得も有利に進められるし」
「なるほど、一理あるな。でもそのダンジョンはレジェンド級の地獄だぞ?」
「そうだけど、ダンジョンって入口付近なら敵は出て来ない筈だから、すぐそこまでなら大丈夫だよ」
「そうなのか?」
確認をとろうとウーナに聞いてみる。すると彼女は少し不機嫌そうに応じた。
「‥‥‥そうですわ」
おぅ‥‥‥ウーナ殿怒っていらっしゃる。
「あ、それと提案なんだけど、僕ら配下は傍にいない方がいいと思うよ。相手の仲間が傍にいない、どこかに潜んでいる可能性がある。って考えてくれるだろうから」
なるほど、不安を煽るということか。
一人納得していると、頬を膨らませたウーナがムスッっとした面持ちで告げる。
「‥‥‥でも、一人は護衛にいた方がいいと思いますの」
無性にその頬をつつきたい衝動に駆られたが、そんなことをしたら火に油を注ぐ事になりそうなので自重する。
「お、怒るなってウーナ。なんならその護衛にしてやるから」
「本当ですの!?」
落ち込んだ表情から一転、いつものような高飛車な声音になる。俺はその立直りに嘆息してから、地下へ続くダンジョンの階段に視線を移した。
(しっかし何と言うか‥‥‥不気味だな)
「じゃあ、ボクらはここで待ってるね」
「ん、いってらっしゃい」
「わかった。じゃあ、行こうかウーナ」
「はいですわ!」
こうして俺達は、レジェンド級ダンジョンへ続く暗い階段を降りて行った。
おはようからこんばんわまでどーもです!
以前から読んでいた方はお気づきかもしれませんが、題名変更しました。
迷宮攻略一歩手前であります!まあ、中で尋問から始まりますが。
新キャラの登場は17話位になりそうです。




