魔王と闇魔法
「そうだウーナ、魔法について聞きたいんだけど、いいか?」
友香を担ぎながら、俺はウーナに問いかけた。内容はずっと後回しにされていた、魔法についてだ。
「魔法ですの?」
長い金髪を揺らしながら、ウーナが問い返してくる。俺は道を塞ぐ草木を掻き分けながら、一つ頷いた。
「ああ、全く知らないからさ」
「そうですわね‥‥‥ええっと、構成から話した方がよろしいんですの?」
「うん、そこから頼む」
「解りましたわ。まず、魔法には全部で七つの属性があるのですが、一般的なのは無、火、水、風、地。の五つですの。そして特殊なのが残りの二つ、光属性と闇属性ですわ。この二つの属性は、光属性は天使族しか使うことが出来ず、闇属性は悪魔にしか使用できませんの。ですが光属性に関してはごく稀に人間の中でも使用できる者がいるようでして、その者は[天使に認められた者]として人間族の間で勇者とされるらしいですわ」
「ふぅん‥‥‥闇はどうなんだ?」
「闇属性は悪魔の他に使えるとしたら、魔王様それのみですわ。そもそも、魔王とは悪魔なのでは? という見解があるほどに、悪魔と魔王様以外の種族では使える者はいませんの」
「へぇ‥‥‥悪魔と魔王の特権って事か」
「はいですの。なので闇魔法については多く語れないのですが、私が知るかぎりでは過去の魔王様は闇魔法による人の洗脳、重力を操作した広範囲破壊を得意としていた筈ですわ‥‥‥まあ、文献でしか知らないのですけど。ディーナは何か知っていませんの?」
「ボクは姉さんほど魔王様の事知らないから、姉さんが知らないならボクも解らないよ」
「ふむ‥‥‥そうか、じゃあ魔法の使い方とか、それのコツとかは何かあるのか?」
「えっと‥‥‥それぞれの属性魔法のスキルを持っていればあとはそのレベルに応じて使える魔法とかが変わってくるかな。使い方は、呪文を詠唱する事で発動できるよ。ホラ、姉さんがやってたでしょ?」
「[水弾]ですの?」
「そう、例えば[水弾]の場合は、「乱れ狂う激流よ、敵を穿て」っていうのが呪文なんだけど。この魔法、呪文も単純で威力もそこそこ高いから、ボク等は気に入ってるんだ。さっきは塞がれちゃったけど、結構便利なんだよ?」
「ふぅん‥‥‥呪文はどうやったら解るんだ?」
「発動しようとすればわかる筈ですわ」
「なるほど‥‥‥ありがとう、参考になったよ」
「配下として当然の事をしたまでですわ」
「どういたしまして、他にも何かあったら何でも聞いてよ」
二人に礼を言ってから、俺は早速ステータスを開いてスキルポイントの割り振り画面に移る。スキルポイントは16増えて合計で25ポイントになっていた。
魔法の項目から取得可能な属性を調べると[無属性魔法][地属性魔法][闇属性魔法]の三つが表示される。どうやらこの三つ以外の属性には適性がなかったらしい。取得に必要なポイントは闇属性が5、地属性と無属性が2だった。やはり闇属性は少し特別なようだ。
早速[闇属性魔法]をLv1で取得する。それから少し他の項目を見てみると、[詠唱短縮][消費魔力削減][属性強化][魔力回復速度上昇]等が目に入った。
[詠唱短縮]と[属性強化]が気になったので少し探りを入れると、[詠唱短縮]は魔法の威力が少し下がるのを条件に呪文を短縮できるというもので。[属性強化]は逆に魔法の威力を上げるというものだった。
消費するポイントは両方とも2。興味深かったので[詠唱短縮]も[属性強化]もLv1で取得する。これで残りは16ポイントになった。
([闇属性魔法]Lv1で使用可能な魔法は‥‥‥‥)
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重力操作
重力を操る事が出来る。ただし触れたことのある無機物のみ。
暗闇世界
一定の空間に光の無い領域を展開することが出来る。尚、自分及び味方はその領域内でも通常通り行動する事が可能。
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(洗脳系の魔法はまだ無いみたいだな)
仕方ないので、5ポイントを消費して[闇属性魔法]のレベルを2に上げる。すると、二つの魔法が追加された。
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自写分身
俗に言う「ドッペルゲンガー」を作り出す。コピー対象は自分でなくても良い。ドッペルゲンガーは自分で操る事が出来る。
霊魂操作
死者の魂を呼び出したり、呼び出した霊魂を何かに宿らせる事が出来る。ただし霊魂を呼び出すにはいくつか条件がある。
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(まだ洗脳魔法は無い‥‥‥でも、中々便利そうなのが手に入ったな)
条件、というものが何かは解らないが、まあ各所で使っていればいいだろう。
それでは早速。
「暗闇を好む矮小な闇、死して尚世界を望む愚者達よ、我が名の下に集え。[霊魂操作]!」
ディーナ達に教えてもらった通り、呪文は詠唱しようとしたら脳裏に浮かんできた。だが‥‥‥
「魔王様? どうしましたの?」
だが、今回は何も起こらなかった。
「いや、新しい魔法を試してみたんだが‥‥‥‥」
「新しい魔法ですの?」
「うん、闇魔法。ただ、洗脳魔法はまだ無いみたいだ」
俺がそう言うと、ウーナとディーナが肩に担がれた友香を見る。じゃあ、コレどうしようか? といった意思がその表情から汲み取れた。
「まあコイツは、説得だけしてみよう。それでいいか?」
「魔王様がそれでいいなら」
「解りましたわ」
そろそろ遺跡に近づいてきた。全員がもう話す事はないとダンマリし始めた頃、不意にスゥちゃんが口を開いた。
「ん、さっきどんな魔法使ったの?」
どうやら気になっていたみたいだ。少しだけスゥちゃんの声が浮かれていたのを、俺は見逃さなかった。
珍しくスゥちゃんが見せた好奇心に、俺も少し嬉しい気持ちで応じる。
「[霊魂操作]っていう魔法で、死者の魂を呼び出したりする事が出来るみたいなんだ。でもいくつか条件があるみたいで、さっきは発動しなかったね」
「ん、ベルすごい」
「いや、これでもまだ闇属性魔法はレベル2なんだけどね‥‥‥と、やっと着いた‥‥‥あれ?」
ここまで小一時間ぐらいだろうか? これで漸く友香を降ろせる。なんて考えながら辿り着いた遺跡は、その塞いでいた入り口を歓迎でもするかのように開いていた。
おはようからこんばんわまでどーもです。
マリオネットゴーストはこの後すぐに大活躍しますよ!それはもう、ものすごい事に……
それと、あと二話くらいで新キャラ登場します。




