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異世界魔王のダンジョン奮闘記  作者: 敗者のキモチ
異世界ダンジョンは遠い
12/29

勇者はぶっ飛べ!

 背後に戦闘音を浴びながら、湖を後にする。するとすぐに目の前にメッセージウィンドウが開いた。


『おめでとうございます。クエスト[捕虜の有用性]をクリアしました。報酬としてプレゼントアイテムとスキルポイントが贈られます』


 まだ完全に捕虜にした訳ではないが、まあいいか。細かいことは気にしたら負けだ。


 というか友香重いんだが‥‥‥そうだ、鎧外そう。


 一旦友香を降ろして軽鎧を脱がし、アイテムボックスに放り込む。友香ごとアイテムボックスに入れられないかと思ったが、試みは失敗した。生物は無理らしい。


 気を取り直してもう一度友香を担ぐ‥‥‥まだ重い。コイツ50kgぐらいあるんじゃね?


 とりあえず一旦落ち着ける所に行きたいが、友香が重いしあまり遠くには行きたくない。


「スゥちゃん、こないだの崩れた遺跡。あそこに行こう」


 行き先を決めると、記憶をたよりに足を進めた。途中、ウーナ達双子と会話をする。


「遺跡って何処ですの?」


「ああ、[遮刀の迷宮]っていうやつで、入り口は塞がってたんだけどレジェンド級の迷宮だったよ」


「姉さん、それってもしかして‥‥‥」


「[遮刀]とありますし、間違いありませんわね」


「二人は何か知ってるのか?」


「いや‥‥‥最近は見なくなったけど、昔はよくそこに行く冒険者がボク等の湖に来たんだ。でも、いざその迷宮に行って帰って来た冒険者は‥‥‥」


「いなかった訳か」


 まあ別に、入る気は無いしそもそも入り口は塞がっていた。俺には関係の無い話しだ。


「うう‥‥‥」


 呑気に会話をしていると、付近から呻き声が聞こえてきた。


「ん?」


「どうかしましたの?」


「いや、呻き声が聞こえた気がしたんだが‥‥‥」


 気になるので[斥候]で周辺を索敵してみる。すると、案外近くに反応はあった。すぐにその場に赴き、声の主を確認する。そこにいたのは、全身から血を流していて意識のない勇者畑野であった。


「ウーナ、ディーナ、水をかけてやれ」


「はいですわ」


「はいはーい」


 声と共に、ちょっと多めの水が畑野の顔に注がれる。畑野はすぐに目を覚ました。しかし、未だ水から解放されない。


「がぼぼぼぼぼぼぼ!?」


 身をよじって逃れようとするも、水もそれに合わせて動く。結局畑野が解放されたのは、ウーナ達の気が済むまでだった。


 解放されてすぐ、麻痺粉をその顔にお見舞いする。


「が、いが。テ‥‥‥メェ、何しや‥‥がる!」


「あれ? いいのかなそんな口利いて。俺は今、お前をいつでも殺せるんだぞ?」


 そう言うと、ようやく畑野は周囲に仲間が居ない状況に気がついた。更に本人は麻痺粉によって身動きがとれない。血の気が引いて行く畑野に向けて、俺は小さな錠剤を取り出してみせた。


「これ、死毒錠っていってな? お前程度なら簡単に殺せるんだわ」


「ま、待ってくれ。だ、騙されてたんだ。あ、アイツ等‥‥‥教会のやつらに! そそ、そうだ、手を組もうぜ? ほら、な、中々イイと思うんだ。レベル上げんのだって手伝ってやるし、女の扱い方だって教える。な、なぁ? イイと思わねぇか? 何だってするよ。た、頼むよ。い、いい、命だけは───」


 聞いててムカついてきた。なんというか、見苦しい。


「お前、もういいや」


「まま、待ってくれ。こ、殺さな───グムゥ!?」


 畑野の口に死毒錠を放り込み、タイミングを合わせてディーナが水を注ぐ。そのまま口と鼻を塞ぐと、死に絶えるのを待った。


「───!? ────、───! ──────!? ───、───‥‥‥‥」


 瞳から徐々に光りが失われていくのを。俺は無機質な瞳で見つめる。やがてその全身から力が抜けるのを感じると、俺は漸く手を離した。


『レベルが12に上昇しました』


 なんだろう。ゴブリンのホルアドを殺した時よりずっと冷めた感じがする。目の前の勇者の死体を見ても、ゴミでも見ている気分だ。

 ‥‥‥‥勇者という存在に、無意識に拒否反応を示してしまう。


(まあ、どうでもいい事なんだがな)


『おめでとうございます。クエスト[勇者をぶっ飛ばせ]と[希望を奪う者]をクリアしました。報酬としてプレゼントアイテムとスキルポイントが贈られます』


 [希望を奪う者]が気になるが、隠しクエストと無いからには普通のクエストなのだろう。大方[勇者をぶっ飛ばせ]の次に待ち構えていたクエストだったのかもな。


「安らかに眠れ」


 合掌してから、畑野の装備を剥ぎ取る。軽鎧は各部がハンバハの一撃でひん曲がっていたため、保存状態の良い左腕の籠手と拳甲だけを貰う。


(全級鑑定)



────────────────────

衝撃の拳甲(レア級)

 衝撃魔法が組み込まれたナックルダスター。殴った箇所に強力な打撃を加える事が可能。


格闘家の籠手(コモン級)

 格闘家が装備するのに適した、動きを阻害しない籠手。防御性能はそこそこ。

────────────────────



 籠手がコモン級だったが、身を護る道具は素直に有り難い。衝撃の拳甲を両手に嵌めると、俺は左腕に籠手を装備した。


「そろそろ、大分サマになってきたんじゃないか?」


 現在の装備は、ジャージ上下に覇王の剣帯、森小人の短剣に森神のローブ。両手には衝撃の拳甲で左腕には格闘家の籠手。


 外見も色合いも歪な組み合わせだが、そこそこ装備は揃ってきた。


 少なくともジャージ上下の姿よりはずっとマシな筈だ。


「ん、ベル、すごくヘンなカッコ」


「それ言っちゃう? ねえスゥちゃん、それ言っちゃうの? せめてオブラートに「まだまだ」くらいにしようよ」


 実際そうなのかもしれないけど、もっと言い方はあるはずだ。とりあえず今晩はプニプニ地獄決定。


「とりあえず、進もうか。早く落ち着ける場所で友香から情報を聞き出さなきゃならん」


 それに、クエストの報酬も気になる。俺は少しだけ、歩を速めた。

おはようからこんばんわまでどーもです。

やっぱ魔王ですからね、勇者は嫌いなのです。勇者はぶっとばせ!

さて、勇者襲撃も大方解決しましたので、次はダンジョンですね、漸くです。

まあ、まずはダンジョンマスター倒さなきゃならないんですけどね!

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