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勇者とお約束の路地裏

「ぐへぇ!」


ゴン、という鈍い音と共に悲鳴が聞こえる。それは友貴が異世界に降り立った合図。


「ち、ちべたいよ……」


一メートル程上空から仰向け状態で落下し悶絶状態の友貴が次に感じたのは地面の冷たさとゴツゴツとした石畳の感触だった。


「痛かったよーっと!」


勢い良く起き上がる友貴。痛がってた割りには絶好調である。彼はそのまま辺りを見渡す。


日の当たらない薄暗い景色、現代日本では滅多にお目にかかれない石畳の道路、両側には建物の壁が。通路自体も狭く、人が三人横に並べるかという程しかない。薄暗く、狭く、建物と建物の間に存在する場所。つまりーーーー


「ここは……路地裏か?」


一通り辺りを見終わった友貴がそう結論付ける。


「ふーむ。なんともまあ、陰湿な所に連れてこられたもんだ。」


深く溜め息をついて現在の状況を嘆く友貴。普通、いきなりこんな訳の分からない場所に飛ばされたら大半の人は混乱したり困惑したりすることだろう。しかし友貴に限ってそれは無い。彼ならば冷静でいられる。なぜなら…………。


「きっとここも異世界のどこか

なんだろうな。」


なぜなら、彼は過去に似たような経験をしているのだから。


ーー今から約四年前、高校生だった友貴はなんの前触れも無く異世界に召喚された。召喚された地で勇者として力を与えられ、使命を押し付けられ。当時、その場に流されることによって人生を生きてきた彼は困惑しながらも使命を果たすしか選択肢が無かった。


それから3年後、長い旅路を終えて友貴は地球に帰ってきた。多くのものを得て、多くのものを失って。そして大人になった彼は再び異世界に連れてこられたという訳なのだ。


「前の事を思うと色々と感慨深いもんがあるが、これも勇者の宿命ってやつなんですかねぇ。勇者が世界を二度渡る! ……聞いたことないけど。」


神妙な顔で唸る友貴。暫くして彼はある、重大なことに気付く。


「そりゃそうと、誰が、何が、俺を召喚したんだ? わざわざこんな路地裏なんかに。」


召喚師もいなければ巫女もいない。神様もいなければ喋りかける精霊や石像なんてものも無い。普通、勇者が召喚される時には召喚した召喚主がいるものである。そうでなければ何故友貴がつれてくこられたのか理由がわからない。しかし、辺りを見渡してもそれらしい人や物は無い。


「困ったなぁ。これじゃ地球に帰るどころか何の為に連れてこられたのかすらわからん。この世界の情勢や言葉が通じるかわからないのも結構ツラいもんがあるな。」


以前だったら召喚主が教えてくれたことから自分に置かれた身がどういうものか少しは理解できたが今回はまったくの零からスタート。異世界冒険2回目だからといってこれは手厳しい。


「まあ、答えが出ないことを悩んでても仕方ないか。まずはこの陰湿な場所からさっさとオサラバしますか! 」


善は急げと、表通りへと向かおうとする友貴。しかし、運命はというやつはどうやら彼にことごとく首をつっこんでくるらしい。


だれが言ったか、路地裏には魔物が棲んでいるという話がある。路地裏にのこのことやって来た人を厄介事に巻き込んでしまう魔物が。それがもっとも好んで狙うターゲット、それは……偶然この場所にやって来てしまって早く表通りに戻りたいなと思っている人間。魔物はそういった人間を決して逃がしたりしない。


「ん? 足音?」


路地裏の方へと近づいてくる足音。それも1つではない。最初の足音から少し遅れて複数の足音が聞こえる。


「あー。なんか嫌な予感が……」


友貴の不安もよそに足音はついに路地裏にたどり着く。友貴が音のした方向に目をやる。そこにいたのは小柄な人物。身長は百五十半ばだろうか。全体的に華奢な体つき、膝まであるスカートとそのしたからスラリとのびた白い足から女性だと判断できるが顔はフードで覆われており年齢は判断できない。


そんな人物がこちらに向かって走って来ている、それだけで何か訳ありな雰囲気だが、その後ろを見た友貴は完全に面倒な事になったとうなだれることになる。


ーー彼が見たのものは、明らかにフードの女性を追ってこちらに向かって走っているであろう、騎士風の格好をした三人の男だった。

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