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鍛冶物語 ~異世界で鍛冶屋を営業中~  作者: 光闇雪
第1章 異世界へ
8/15

Episode:008 大臣

お待たせしました。

第8話更新しました。

良かったらお読みください。

「シュウジさん、紹介しますね。こちらからリトールさん、リグルさん、リンバルさん、リールさん、リヴァルさん、リシュルさん、リオルさん、リンクルさん、リイルさんです」

「初めまして。修二です」


 修二は湯呑を机に置いて立ちあがり、笑顔で挨拶した。リトール達はその笑顔にまた師匠であるシュウの姿が映った。

 シュウは非常に厳しい師匠だったが、上手にできた時は笑顔で褒めていた。実際にはシュウではないが、リトール達はシュウの笑顔がまた見れたと涙を流して喜んだのだった。


「え? ちょっと、ええ?」


 修二は突然、リトール達が涙を流し始めたため、どうしていいか分からず戸惑ったのは言うまでもない。


*****


「・・・・・・・・・・・・」


 修二がリトール達の涙に狼狽えていた頃、大臣が警護の兵を引きずれず、セーレ城の西に広がる森の中を一人で進んでいた。その表情は硬く、真っすぐにある方向を見つめている。

 その道なき道を歩くこと数分。霧がかかり始めるが、大臣は意に介さず進んでいく。さらにその数分後、霧の中に小屋が現れた。

 大臣は一旦止まってから、小屋のドアを開けて中に入った。


「・・・・・・来たか、ルージ」

「今はロン大臣だ。間違えるな、ガイル」

「ここは俺たちしかいないから安心しろ」


 小屋の中にはローブを目深にかぶった男がいた。その男の発したルージという名に大臣が睨みつけて注意するが、男はふっと笑って答えた。そのため大臣は、舌打ちをしてドカッと椅子に座り、頬杖をつきはじめた。

 男は大臣の目の前にお茶を置く、自らも向かいの椅子に座った。そして大臣の姿をまじまじと見つめていく。


「・・・・・・なんだ?」

「いや。本当、ロン大臣にそっくりだな。流石は変装の名人だ」

「・・・・・・ふん。俺様を見くびるな。で、何かようなのか? 俺様は忙しいんだ」

「ドワーフの件だ。新たなドワーフが現れたようだな」

「・・・・・・ああ、そうだな。それがどうした?」

「どうしたも何も。お前がロン大臣に化けた理由を忘れたわけではあるまい?」

「・・・・・・ふん。忘れるわけがないだろ」


 大臣はお茶を飲みほすと、ガイルという男を睨みつけた。


「だったらなぜ事を起こさん」

「あいつが俺様に会わんし、そばにロレーヌとかいう小娘がいつもいるんだ、無茶を言うな」

「・・・・・・ふん。お前らしくないな」

「王や姫に気付かれるワケには行かんのだろう?」

「・・・・・・・・・・・・」

「ふん。だったら俺様に指図するな」


 大臣は立ち上がって踵を返した。そしてドアの前に立つと、ガイルを振り返った。


「今はシュウの弟子たちが来ている。しばらくは俺様は動けない。だが、必ずあいつをこちら側にとりこんでみせるから。お前はお前の役割に徹しろ、いいな」

「・・・・・・・・・・・・」


 ガイルは何も言わなかったが、大臣は意に介さずドアを開けて小屋を出ていった。しばらく大臣が出ていったドアを見つめていたガイルだったが、スッと椅子から立ち上がると小屋の奥へと消えていった。


「・・・・・・・・・・・・」


 ガイルが消えた後、小屋の屋根に黒ローブを目深にかぶった人物が現れた。その人物は霧の中を進んでいく大臣を見つめていたが、大臣が見えなくなるとすぐに、スッと消えてしまった。

 果たしてこの人物の目的とは、また大臣とガイルの目的とは一体なんなのか・・・・・・。そして修二の運命は・・・・・・、それは誰も知らない。


*****


 数十分後、城に戻った大臣に衛兵が近づいてきた。大臣はキリっとした表情から一瞬で、いつもの穏やかな表情に戻る。


「ロンさま! 王さまがお呼びです」

「王さまが? 分かりました。すぐ参りますと伝えてください」

「はっ!」


 衛兵の姿を見送った大臣は、『さてロン大臣の仕事に戻るとしようか』と呟くと、王様が待っている玉座の間に向かった。


「王さま。お呼びだそうですね」

「うむ。今日は町長の家でリトール達の歓迎会を開くそうだ。ワシも出席するゆえ、城のことは任せた」

「は? しかし、王さまが町長の家にいらっしゃるのは・・・・・・、まずいのでは?」

「大丈夫だ。城にはお前がいるし、エレナも町長の家にいるらしいからな」

「し、しかし・・・・・・」

「頼む大臣。ワシも出席したいのだ」

「・・・・・・ふぅ。致し方ありまぬな。分かりました。ですが、エレナ姫の御迷惑にはなりませぬようにお気をつけくださいね」

「分かっている。たく、大臣は心配性だな。では今から仕度するとしよう」

「はっ。行ってらっしゃいませ」


 王さまは大臣の一礼に頷くと、玉座の後ろにあるドアからお付きの者を従えて出ていった。

 そのドアをしばらく見つめて大臣は踵を返して玉座の間を出ていく。そして自分の部屋の方向へと向かった。

 しかし自分の部屋を素通りした大臣は、廊下の突き当たりに着くと誰もいないことを確認し、左の壁の中へと入っていく。

 その壁の中を進んでいった先に牢があった。その中に大臣とそっくりな人物が鎖で手足を縛られていた。キズ(かさぶた)が身体中にあって死んでいるように目を閉じているが、胸を上下に動かしているため生きてはいるようである。


「ご機嫌いかがかな? ロン大臣」

「・・・・・・・・・・・・」


 大臣の声に牢の人物は、ゆっくりと目を開ける。


「さすがは最後の長寿種のロン大臣だ。いまだに死なないとはな」

「・・・・・・・・・・・・」


 その人物、実は本物の大臣、ロン・リュウコウである。大臣ことルージはある目的のために本物のロンをここに幽閉し、大臣になりすましていたのである。

 ロンは深く息を吐きながらルージを睨みつける。長寿種特有の威圧感がルージを襲ったが、受け流してしまい、どこ吹く風である。

 否、長年幽閉されていたため、少しだけ威圧感が弱くなっていたのだ。


「おお、怖い怖い。少しは喜んで下さいよ。俺様たちの目的のための糧になるのだから」

「・・・・・・・・・・・・」

「では、また来ますよロン大臣。それまでは死なないでくださいよ~」

「・・・・・・・・・・・・」


 ルージはロンを嘲笑うと、その場を後にする。

 ロンはその後ろ姿を睨みつけながら深い息を吐いていった。その息が白い煙となって壁の隙間に入りこんでいく。それを繰り返し行ったロンは顔を上げた。


「・・・・・・たのみますよ。あの者たちの企みを阻止してください。この国のために・・・・・・」


 そう言ったロンは体力を温存するためにまた深い眠りについた。セーレ国の将来を祈りながら。


*****


「おぉ。さすがは師匠のお仲間だっち。よく出来とるなぁ」

「そうですか? シュウおじさんには多分足元にも及ばないと思いますけど」

「んなことなか。師匠と同じぐれぇすごいっち。また師匠の様な凄い業を見られると思ったら・・・・・・」

「ああ! 泣かないでくださいよ。お願いですから!」


 リトール達が落ち着くと、修二が作ったという包丁と小刀を見せることになった。リトール達は包丁を手にとっては修二によく出来ていると告げる。修二はまだまだだというが、リトール達は一様に師匠と同じぐらいだと言っては、涙を流してしまう。その度に修二は狼狽えていたが、ロレーヌやエレナ、そして町長のカールスは、ただ笑顔で見守っていただけだった。

第8話をお読みいただきありがとうございます。

ご意見・ご感想、お待ちしております。


次回あらすじ

 修二とシュウの弟子たちが対面した夜。歓迎パーティが、町長カールス宅で開かれた。王さまが現れて一悶着があったパーティを楽しんだ修二が、自分の家に帰る途中、前に会ったローブの人物があられた。その人物が修二に語ったこととは。

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