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鍛冶物語 ~異世界で鍛冶屋を営業中~  作者: 光闇雪
第1章 異世界へ
7/15

Episode:007 弟子

第7話更新しました。

良かったらお読みください。

 歓迎会の翌日。

 修二は再び王さまと謁見し、鍛冶屋を営むように命じられる。

 鍛冶職人の業を鈍らせるわけにもいかないと考えた修二は、少し戸惑いつつも引き受けることを了承する。

 そして許可証を授与されたということがすぐに街中に知れ渡り、我先にと修二に仕事を依頼する者が後を絶たなかった。それだけシュウの鍛冶能力が優れていたという証拠でもあった。

 その後、修二は、ドワーフとしての評判が落ちぬよう、丹精込めて鍛冶屋としての仕事をこなしていく。そして数日が経ったある日、仕事の一区切りがついたので、修二は家の探索を行うことにした。


「・・・・・・なんだろ? これ」 


 一階の奥の納屋らしき部屋から、修二は

挿絵(By みてみん)

と書かれてある大きい表札のようなものを見つけ、呟きながらまじまじと眺める。


「シュウジさん。どうしました~?」


 修二の背後からロレーヌの声が訊こえてきた。そしてそこに現れた彼女は、着物+割烹着姿でお玉を持っており、非常に突っ込みたい格好だったが、修二は全く気に止めず表札のようなものをロレーヌに見せた。


「これって何かな?」

「? ああ、それですか? それは表札ですよ~。シュウ爺さまが亡くなられたので、この納屋に封印してたんです。あ、そうです。せっかくですからこの表札を外に掲げましょう。シュウジさんも鍛冶屋を営むことにしたんですし~」

「それはまぁ、構わないけど・・・・・・、なんて書いてあるの?」

「そうでしたね~。シュウジさんはこっちの文字は読めませんでしたね~。これは“鍛冶屋 焔龍”って書いてあるんですよ♪」

「ふ~ん。って、なんだい? その格好」


 表札をまじまじと眺めていた修二だったが、ロレーヌの格好に今頃気付いたのか目を丸くして訊ねた。

 ロレーヌは首を傾げ、自分の格好を見ながら返答した。


「これはですか? この家に来たら、いつも着ていた服なんです。今日、思い出して着てみたんですけど・・・・・・、どこかおかしいですか?」

「いや、別に(ちょっと違和感があるだけで)おかしくはないよ、うん」

「そうですか? あ、ご飯の仕度ができたので、表札を外に掲げたらお昼にしましょう」

「あ、うん。そうだね」


 修二は返事をすると、表札を外に掲げに向かった。

 ロレーヌがお昼ご飯を作っていることに修二が突っ込まないのは、修二が作る包丁や小刀などに興味を持ったロレーヌが毎日通ってきては、お昼御飯ないしは夕飯まで作ってくれていたからである。

 完全に通い妻状態なのだが、ロレーヌは全く気にしていない。修二も最初は戸惑っていたものの、今では諦めの心境で普通に接していた。


「そういえば・・・・・・、そろそろリトールさん達が到着する頃ですね~」


 表札を掲げて裏庭の井戸で手を洗い、囲炉裏がある一階奥に作られた居間に戻ってきた時、ロレーヌの呟きが訊こえてきた。聞き覚えのない名前に首を傾げつつ、居間にあがった修二はロレーヌからお椀を受け取ると、リトールについて訊ねてみた。


「リトールさんというのは、シュウ爺さまの一番弟子にあたるお人です」

「ふ~ん。そう言えばリトールさん達って言ってたけど、何人ぐらいいるの? シュウおじさんの弟子」

「リトールさんを入れて十人ですよ」

「十人か・・・・・・、まぁこの世界に来てから150歳まで生きたって言うし、妥当な数か」


 修二はシュウがこの世界で生きていきた年数と家の掟を照らし合わせ、そう呟きながらロレーヌの手料理を美味しそうに食べていく。

 その呟きにロレーヌは、修二の顔を見つめて首を傾げた。


「そうなんですか?」

「ええ、まぁ。シュウおじさん、弟子を一人しかとらなかったでしょ? その人が一人前になるまで」

「そうですね~。理由を訊いてもはぐらかして教えてくださらなかったんですけど、シュウジはご存知なんですか?」

「・・・・・・まぁ、知ってるっちゃあ知ってますが、理由は教えません」

「むぅ。シュウジさんもですか~」


 ロレーヌは、きっぱりと『話さない』と宣言して料理を頬張っている修二をふくれっ面で見つめていたが、すぐに諦めて料理を食べ始める。

 修二はそれを横目で見つめると苦笑する。理由は教えないと言ったものの、修二自信は別に理由を教えても良いと思っている。しかし、シュウが話さなかったことを尊重することにしたのだ。

 そのため話題を変えようと口を開いた。


「そう言えば、シュウおじさんの弟子のリトールさん達が、この国に来るんですか?」

「ええ。シュウジさんが鍛冶妖精族(ドワーフ)だということで、世界中で鍛冶屋を営んでいるリトールさん達を王さまがセーレ国に召集したんですよ」

「はぁ・・・・・・」

「ふふふ。シュウジさんには何を言ってるのか分からないかもしれませんね~。これはシュウ爺さまの(表の)遺言なんですよ~。シュウ爺さまは唯一のドワーフで、その技術は卓越したものだったんです。他の鍛冶職人さんが一目おくほどだったんですよ」


 ロレーヌは、まるで自分のことのように誇らしげにシュウのことを語りだした。修二は料理を頬張りながら話を訊きつつ、いかにシュウが街の人たちに尊敬されていたのかを考えていた。


「皆さん声をそろえてこうおっしゃるんですよ。『未だ師匠の足元にも及ばない』って。リトールさんを始め十人のお弟子さん達は、その卓越した技術を受け継ぎ、今では皆、一角の鍛冶職人さんとなっているんですけどね」

「シュウおじさんは本当にすごい人だったんだね」

「そうですね。あ、話がそれちゃいましたね。シュウ爺さまの遺言って言いましたけど、それは“ワシと同じドワーフが現れたらリトール、リグル、リンバル、リール、リヴァル、リジル、リシュル、リオル、リンクル、リイルを召集してほしい”と書かれてあったんです。理由はそれぞれお弟子さん達に残した遺言に書かれてあることなんですけど、皆さん見せてくれませんでした」

「なるほどなるほど。で、その召集した弟子たちが、そろそろ着く頃ということなんだね?」

「ええ」


 修二は料理を平らげると腕を組んで、シュウの遺言について考えこんだ。歓迎会の時に出会った謎の人物との関わりもあるかもしれないからである。

 あれから修二は、大臣について調べみた。その結果、大臣は全く悪い噂がなくセーレ国のことを一番に考えている人物である印象だった。その大臣が、修二の鍛冶としての能力を狙っているというのがイマイチ理解しがたいというのが、修二の結論である。

 しかし、あの人物が嘘を言っているようには思えなかった修二は、何かと理由をつけて大臣との謁見を断っていた。


「(まぁ、考えても仕方がないな)さぁて、飯も食ったし、モーリンさんのご依頼の包丁の作成に取り掛かるとしようかな」

「はい♪ 頑張ってくださいね」

「ああ。期待に添えるように頑張るよ」


 考えてもこんがらがるだけだと判断した修二は腰を上げると作業場へと向かった。

 ちなみにこのやり取りも端から見れば新婚夫婦のような感じだったのは言うまでもない。

 

*****


「リンバル。本当に師匠と同じドワーフが現れたんかいね?」

「分からんなぁ。おらに訊くなや。リグルさん」

「王さまがおら達を召集しちゃっちゅうことは、本当に現れたってことじゃにゃいかい? リグルさん」

「なるほどリールの言う通りかもしれんち。なぁ、リヴァル」

「そうやのう。まぁ、王さまに謁見すれば分かることやき。本当かどうかは、本人に会ってからでもいいじゃないかのう。のう、リトールさん」

「そうやなぁ。皆もそれでいいかいね?」

「「「「「んだ。んだ」」」」」


 所変わり、ここはセーレ国の玄関口、港町のヴィアンカ。そこにいかにも職人然とした男たちが十人、着岸した船から会話しながら降り立った。


「リトール!」

「あ、姫さま!!」


 その時、港の入り口付近から声がかけられる。彼らが視線を向けると、そこには衛兵を数人ひきつれたエレナがいた。慌てて被っていたお揃いの帽子を取って一礼で挨拶した彼らの中で、真ん中の男が一歩前に進み出て口を開いた。


「御無沙汰しとりやす、姫さま。王さまに呼ばれたもんやき、皆と慌ててやってきたっち。ええと姫さまは?」

「このヴィアンカに用事があったんだ。それでそろそろリトール達がやってくるだろうと思ってな。港に来たが、正解だったな。今からセーレに戻るが、お前たちもいくかい?」

「それは願ってもねぇことだも、よろしいので?」

「かまわん。かまわん」


 エレナは頷くと懐から丸いガラスの様なものを取り出し、それを宙に浮かべた。その丸いガラスの様なものは回りだすと、着物で割烹着姿のロレーヌを映し出した。


「エレナさま、お呼びですか?(カーン、カン)」

「またシュウジのとこにいたのか? お前は」

「そうですけど?(カン、カーン)」

「たく。まぁ良い。それは後だ。ロレーヌ。たった今、リトール達が到着した」

「そうなんですか?(カーン、カン)」

「そうだ。今からセーレに戻る。頃合いを見てシュウジを町長の家に連れてきてくれ。そこでリトール達と会わせたいと思う」

「分かりました(カン、カーン)」

「頼む」


 エレナはロレーヌとの通信を終え、手元に戻った丸いガラスの様なものを懐に入れた。そして傍に控えていた衛兵に馬車を用意するよう命じる。

 その後、用意された馬車に、遠慮するリトール達をムリヤリ乗せると、自らも馬車へと乗り込んで城へと向かったのだった。


*****


「エレナさま、リトールさん、リグルさん、リンバルさん、リールさん、リヴァルさん、リジルさん、リシュルさん、リオルさん、リンクルさん、リイルさん。いらっしゃいませ」


 二,三時間後、セーレ国の城下町に到着したエレナとリートル達。

 町長の家の呼び鈴をならすと、いつもの黒いローブを身にまとったロレーヌが出迎えた。


「ロレーヌ。シュウジは中か?」

「はい。応接間で町長さんとお話をされていますよ」

「そうか。カールスにリトール達が来たと伝えてくれるか?」

「ええ。少々お待ちを」


 ロレーヌは一旦、奥にひっこむ。そして数十秒後、町長のカールスを引き連れて戻ってきた。


「これはこれは姫さま。お待ちしておりましたぞ」

「うむ」

「リトール達もわざわざご苦労じゃったな」

「師匠の遺言じゃけね。それで師匠のお仲間は中にいると訊いたがや?」

「うむ。おられるぞ。ロレーヌ、応接間まで案内しなさい」

「は~い」


 カールスはエレナとリトール達を招き入れ、ロレーヌに応接間へ案内させた。そしてロレーヌは応接間のドアの前に来ると、ドアをノックした。

 『はい』という返事と同時にロレーヌがドアを開けると、そこに修二が湯呑をもって寛いでいた。

 “師匠が若返って、そこにいる”

 これが修二を初めてみたリトール達全員が思ったことだった。そして修二がシュウのお仲間であると確信したのだった。

第7話をお読みいただきありがとうございます。

ご意見・ご感想、お待ちしております。


次回あらすじ

 修二とシュウの弟子たちが対面していた頃、セーレ城から西へ1km先にいった先にある小屋で、大臣と謎の人物が会っていた。そこで話されていることとは。

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