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鍛冶物語 ~異世界で鍛冶屋を営業中~  作者: 光闇雪
第1章 異世界へ
3/15

Episode:003 覚醒

文月杏様、コメントありがとうございます。


第3話更新しました。

良かったらお読みください。

「姫さま! 今、どこにおられるのですか!」

「うるさいぞナフィ。そんな大きな声を出さずとも聞こえている」


 宙に浮んだ丸いガラスの様なものが回りだしメイド姿の女性を映しだしたかと思うと、その女性が脱兎のごとく大声を上げた。その声があまりにも大きかったので、エレナは耳を少し押さえながら文句を呟いた。


「大きい声にもなりますよ! 何をしておられるのですか姫さまは!」

「ナフィ。そんなことよりもをエミール先生と衛生兵を呼んでくれ」


 エレナは耳を押さえながら簡潔に用件を伝えた。するとナフィと呼ばれた女性は、怒っていた表情を引き締める。


「・・・・・・何があったのですか? 姫さま」

「民からプリース浜に死体が打ち上げられていたとの報告を受けてな。私とロレーヌが向かったところ、確かに死体らしきものが打ち上げられていた。しかし、確かめたらまだ生きていたのでな。だから大至急、エミール先生を呼んできてくれ」

「・・・・・・分かりました。説教は姫さまが帰ってきてからたっぷりとすることにします」

「う・・・・・・っ」

「ではエミール医師と衛生兵を何人か向かわせますので、少しお待ちください」


 ナフィがそう言って、一礼し通信を切る。それと同時に回っていた丸いガラスの様なものは止まり、エレナの手に収まる。

 エレナはそれを懐にしまい込むと、ロレーヌに視線を向けた。ロレーヌは、修二の頭を膝に乗せエレナに微笑んだ。


「叱られてしまいましたね」

「うるさいぞロレーヌ」


 エレナはばつが悪そうにしながらも寝ている修二の顔を覗き込みまじまじと見つめた。

 修二は寝息を立てて眠っているようだった。しかし次の瞬間、修二の目が開かれ凄い勢いで起き上がったかと思うと、大声で叫んだのだった。


「いくらなんでもそれはないんじゃないか・・・・・・!?」


*****


 エレナがナフィに連絡をとっている頃、ロレーヌの膝枕で眠っている修二は夢を見始めていた。

 夢の中の修二もまた横になって目を瞑っていた。しかし現実の修二とは違って、意識はハッキリとしていた。しかも目を瞑っているはずなのに、周囲の状況が見えていた。

 もちろんこれが夢だと修二は思った。なぜなら修二は空を飛んでおり、下には幼い時の自分が走っていたからである。


(・・・・・・これは4歳の時の記憶か?)


 修二は、そう思いながら自分の姿を見つめていた。その走っていた幼き修二がとある入り口で立ち止まって、中を覗き込んだ。

 どうやらそこは鍛冶作業場のようである。修二の父親、修と祖父、修一郎が、仕事をしているのか、カン! カン!と金槌の音が、外まで聞こえてきていた。


(そうだな。この頃から僕は父達の仕事に興味を持ち始めていたっけ・・・・・・。懐かしいな~)


 修二はしばらく自分の過去を思い出していたが、突如として場面が変わる。

 それはあの日の出来事だった。女の子を修一郎に渡した直後の濁流に必死で耐えている自分の姿を見つめて、修二は自分がこの濁流に呑みこまれたのだと思い出した。


(これはアレか・・・・・・? 走馬灯という奴なのか? いや、それだと思い出す記憶が2つってことになるぞ・・・・・・?)


 色々考えた挙句、修二は自分を突っ込むべく、目を見開き身体を起き上がらせた。そして突っ込みの言葉を発した。


「いくらなんでもそれはないんじゃないか・・・・・・!?」

「きゃっ!?」

「うぉっ!?」

「って、あれ?」


 言葉を発した時に聞こえてきた声に修二は我に返ると、ここが夢の中ではないことに気付く。


「僕は・・・・・・、助かったのか?」

「あの~」

「は、は・・・ぃ・・・・・・」


 手を見つめながら修二が呟いた時、後ろから声がかけられた。修二は返事をし振り向き言葉を失ってしまった。

 なぜならそこには金髪をポニーテールで纏め西洋の騎士甲冑を身に纏った女性と茶色のセミロングで、黒いローブを身に纏い頭にトンガリ帽子をかぶっている女性が自分を見つめていたからだ。2人が修二の苦手な“外国人”女性だったことも原因の一つだろう。


「・・・・・・は、はうあーゆー?」

「「?」」


 やっと喋った修二の言葉に2人は首を傾げてしまった。

 それはそうだろう。修二が口にした言葉は“英語”である。ここは日本でもヨーロッパでもアメリカでもなく、異世界である。その住人に英語で話しかけても通じないのは当たり前である。ただ修二の英語で、英語圏の人たちでも通じるかどうかも疑問だが・・・・・・。


「大丈夫か?」

「あ・・・・・・、日本語・・・・・・」

「日本語?」

「ここは(日本なのか)・・・・・・?」

「ここはセーレ国だよ」

「セーレ国? だって、日本語を話して・・・・・・」


 修二は金髪の女性、エレナが“日本語”を話したためここが日本であると思った。しかし茶髪の女性、ロレーヌの言葉に首を傾げてしまった。

 エレナとロレーヌは顔を見合い首を傾げて、修二を再び見つめた。


「何を言ってるのか分からんが、まぁ詮索は後だ。身体は大丈夫なのか?」

「あ、はい。大・・・・・・、丈夫そうです」


 訳も分からず修二はエレナの質問に答える。両手を開いたり閉じたりしたり身体を動かしたりして自分が無事であることを確認していく。


「姫! エミール先生をお連れしました!」


 その時、騎士甲冑を身に纏った衛生兵の一人が修二たちのところに近づき敬礼した後、エミール医師を連れてきたことを告げた。その兵士の後に白衣を着た白髪で初老の人物が他の兵士とともに現れた。

 その初老の人物、エミール医師は兵士と入れ替わりに、エレナとロレーヌに近づき挨拶をした。


「姫さま。私をお呼びだとか」

「おお。先生、待っていたぞ。この者なんだが、今さっき目を覚ましてな。自分では大丈夫だと言ってるが、一応見てくれないか?」

「ええ。どれ・・・・・・え・・・・・・?」

「え? え? な、なんですか?」


 診察しようと修二の顔を見た瞬間、エミール医師は動きを止めてしまった。修二は訳も分からないまま話が進んだ上、動きが止まった理由も分からず困惑してしまう。


「いや・・・・・、なんでもないよ。えっと、君の名前は?」


 エミール医師はなにかの間違いであると思い気を取り直して、修二を診察しつつ名を訊ねた。


「金井修二ですけど・・・・・・」

「カナイシュウジか・・・・・・、変わった名だね」

「あ、いえ。金井が姓で、修二が名です」

「それはすまないね。私はエミール。この国で医師をやっているよ」

「あのここはどこなんですか?」

「ここはセーレ城の城下の街から500m進んだところにあるプリース浜という浜辺だよ」


 エミール医師に診察されながら会話をしていた修二だったが、訊いたこともない国名などで、更に困惑してしまう。これはどういうことなのかと自分を診察しているエミール医師やエレナ、ロレーヌ、そして浜辺の入口付近で整列している兵士たちを順番に見つめた。


(ここが日本じゃないってことは分かったけど、一体ここは・・・・・・?)

「シュウジとやら・・・・・・、聞きたいことがある」

「あ。は、はい」


 そんな修二にエレナが訊ねてきた。

 どうやらエミール医師の診察で、身体に異常がないことが分かったので、ここで事情を聴こうと判断したようである。

 修二はその剣幕に我に返って、エレナを見つめ返し質問を待った。


「生まれはどこだ・・・・・・?」

「日本です」

「日本? 訊いたこともない国名だ」


 出身地を皮切りにエレナが、色々なことを修二に訊ねていく。

 修二はそれらの質問に答えながら、漠然とある1つの結論に達した。ここが日本ではなく、ましてや地球ではないどこか違う世界に紛れ込んでしまったのではないかと。


(いやいや。そんなバカなことが・・・・・・、いやでも・・・・・・)

「・・・・・・最後に聞かせてくれ。君の職業はなんだ?」

「え? あ、はい。一応、鍛冶屋をやって(なんだって!?)え・・・・・・?」


 異世界であると否定していた修二が、エレナの最後の質問に答えた時、突然エミール医師が声を張り上げたため驚いて、エミール医師の方を見つめる。

 その大きさで入り口付近に整列していた兵士たちも、何事かとエミール医師を見つめる。しかし、エレナとロレーヌは驚きもせずに“やはり”という表情を浮かべていた。

第3話をお読みいただきありがとうございます。

ご意見・ご感想、お待ちしております。


次回あらすじ

 ようやく目覚めた修二。

 修二が鍛冶屋であることを知ったエレナ達がとった行動とは!

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