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鍛冶物語 ~異世界で鍛冶屋を営業中~  作者: 光闇雪
第2章 大剣と退魔師と王子
15/15

Episode:015 薬草

3年ぶりに、第15話を更新です。


待たせすぎだとお怒りの方、すいません。

良かったらお読みください。

時間は昼頃に戻る。

エレナを見送った後、結界師の詰所に向かっていたロレーヌは、黒いドレスに身を包んだ黒髪ロングの女性に声をかけられた。


「あらあら〜。ロレーヌじゃな〜い」

「・・・ふふ。お久しぶりです。サラマ(・・・)シア様」


立ち止まったロレーヌは、一瞬驚いた顔をするが、すぐに微笑んで返事をし、優雅に一礼する。

その女性は、ロレーヌの動作に対し、『も〜、かたっくるしいわねぇ』と呟きながらも、返礼して微笑む。


「10年ぶりぐらいかしらね〜? お元気〜?」 


彼女の名前は、サラマシア・ド・ランバン。

セーレ国とサーンジア国の同盟国の一つであるヒーリン皇国のランバン辺境伯の娘であり、今現在ヒーリン皇国の宮廷薬師を務める人物である。

15年前、セーレ国の国立ハナマ高等学院で5年間勉学留学しており、ロレーヌとはそこで知り合っている。

ちなみにエレナとロレーヌが同学年で、サラマシアは2歳上である。


「はい。元気です。ところでサラマシア様はなぜここに?」


宮廷薬師として自国であるヒーリン皇国で忙しくしているとエレナから聞いていたロレーヌは、首を傾げながら微笑んでいるサラマシアを見つめて訊ねた。

ヒーリン皇国からサラマシアがセーレ国に来ることなど、今朝の引き継ぎなどでも話題にあがらなかったため、疑問に思うのはあたり前である。


「ふふ。それは秘密よ〜」

「なるほど、分かりました」

「むぅ。そこは『ええ!? 教えて下さいよ〜』と言うところでしょ〜」


サラマシアはロレーヌの反応に頬をふくらまして見つめるが、ロレーヌは苦笑とともに肩をすくめるだけだった。


「サラマシア様は口が堅いですもの。秘密と仰られるのであれば、わたしがとやかく言うことではありませんもの」

「もう。相変わらずノリが悪いわね〜。まぁ、それがロレーヌだもの。仕方がないわね〜」

「ふふ。サラマシア様もお変わりがないようなので安心しました」

「あなたが言うと、嫌味に聞こえるわよ〜。ん?」

「? どうかしましたか?」


サラマシアも肩をすくめて苦笑するが、何かに気づいたのかロレーヌの後ろに視線を向けた。

ロレーヌは首を傾げながら、サラマシアの視線の先を見つめた。しかし、そこには何もなく長い廊下が先までのびているだけだった。


「何でもないわ〜。じゃ〜、(わたくし)は行くわね〜」

「あ、はい。いってらしゃいませ」

「は〜い」


サラマシアは首を横に振って笑顔になると、手を振りながらその場を後にする。

ロレーヌはその様子に首を傾げながらも、返事してサラマシアを見送る。そして、サラマシアが廊下の突き当りを曲がって見えなくなったのを確認してから、詰所へと向かったのだった。


*****


その頃、修二は目的の薬草が自生している場所に到着し、籠を下ろして背伸びをしていた。


「ふぅ・・・、あっちだと薬草は山田さんから買ってたけど、こっちは薬草を自分で摘まないといけないから一苦労だよ。まぁ、ご先祖様が残した薬草の自生場所一覧があるから、探さないでいいのは助かるけどね」


そう呟きながら、薬草を根ごと摘み始めた修二。

辺りには同じような草花が生えていたが、修二は祖父たちから薬草の管理を任されていたため、迷いなく正確に薬草だけを摘んでいった。


「ふう。この量があれば当分は摘みにいかなくても大丈夫かな。まぁ錆取りの薬剤作りを失敗しなければだけどね・・・」


数時間後、籠いっぱいに積まれた薬草を一瞥し、修二は背伸びをする。そして、辺りがだいぶ暗くなっていたため、腰にさげていた魔法ランタンを持って上部のスイッチを押す。

ウィーンという起動音とともに、ランプ部分で魔法陣が展開し、回転しはじめる。数秒後、そこからヴォンと青白い炎が灯り、周囲を明るく照らしだした。


「やっぱりすごいな、これ」


ゆらゆら揺れる炎を見つめながら、修二は呟く。

この魔法ランタンは、10メートルぐらい先まで明るく照らしだす優れ物で、城下町にあるロレーヌの実家の『マーナサラン魔法具店』がシュウのために作成した特注品である。その特徴は、周囲に漂う魔素を自動吸引し、魔力に変換するため、修二のような魔力を持たない者でも使えるというもの。

修二はシュウの親類ということで、ロレーヌから使用許可をもらっている。何度か試してその性能を見ている修二だったが、未だに感嘆の呟きをこぼしてしまう。


『シュウジさ〜ん。ご飯の時間ですよ〜』

「あ、うん。分かった。今から帰るよ」

『は〜い』


その時、ロレーヌの声が身につけていた腕輪から聞こえてくる。

修二は頷くと、薬草が大量に入ったカゴを背負って、坂を下っていった。


*****


「あ、シュウジさん。お帰りなさい」

「ただいま。ロレーヌさん。もうお腹ペコペコだよ」



店に到着した修二が作業場に籠をおくと、着物+割烹着姿のロレーヌがお玉片手に顔を出す。

修二は返事をすると、籠から薬草を取り出して木造の成分抽出棚に薬草を入れていく。

ちなみに、この成分抽出棚も『マーナサラン魔法具店』のオーダーメードである。


「ふふ。夕食もたくさん食べてくださいね」

「ありがとう。薬草を入れ終わったら、食べるね」

「は〜い」


ロレーヌは修二の言葉に笑顔で返事をすると、顔を引っ込める。

その入れ替わりにリトールが顔を出すと、空になった籠を見つめながら訊ねる。


「若、お帰り。ヤクソはちゃんと生えてたっち?」

「ただいま、リトールさん。うん。取れきれないぐらいにあったよ」

「それは良かったっち。師匠が床にはいちょったころから手入れをばしちょらんかったから。いくらか駄目になっちょったかと思っただすが」

「この薬草の手入れは必要ないよ。勝手に生えるから。むしろ間引かないと、他の植物に悪影響があるかも」

「んだすか・・・、あそこらへんの植物は大丈夫だったっち?」

「うん。見た感じは大丈夫だったよ。まあ、自生していた場所だし、大丈夫だよ。今後は僕が間引くしね」

「ワシらも手伝うっちよ」

「うん。お願いね」


修二は成分抽出棚の蓋を閉めると、上部のボタンを押し、稼働させる。


「よし。これで明日には作業が始められるかな」

「明日はリグルが来るだす。城からの依頼についてはワシがリグルたちに話しておくから大丈夫だら」

「うん。お願い」

『シュウジさ〜ん。リトールさ〜ん。支度が終わりましたよ〜』

「いま、行くよ! じゃ、行こうか、リトールさん」

「んだすな、若」


修二とリトールは作業場の灯りを消して居間に上がった。


「お待たせ、ロレーヌさん」

「いえいえ。では、お召し上がりください」

「うん。いただきます」

「「いただきます」」


その後、ロレーヌの手料理に舌鼓を打った修二は、リトールとロレーヌを見送りつつ、明日以降の作業について考えていくのだった。

第15話をお読みいただきありがとうございます。


ご意見・ご感想、お待ちしております。


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