魔人からの依頼
その様子に呆気に取られていたが、彼の持つ圧倒的な魔力に気づくのはそう遅くは無かった。
「僕たちはここにアンデットが現れると聞いて調査に来たんです。」
「ちょっとユイト!アンデットには言葉は通じないって忘れたの!」
そんなことは忘れていない。なんせローズに口酸っぱく教えられたからだ。例え言葉を発してもそれは、人を騙すために発しているだけだと。
実際ホーリーに着くまでに魔物や、アンデットとは戦い、その時も言葉を発していたが、このアンデットはどこか他のアンデットとは違う様に感じた。
「何故我にその様な口調で話される。」
「───────言葉が通じている!」
そう口にしたのはアサだ。続け様にアイが話す。
「ローズが言っていた!言葉を話し理解できるのはとっても強い魔物が進化した魔族だから離れなさいって!」
そう魔族…魔獣の一つ下の位の存在。一つ下とはいえ、魔獣なんてものは歴史上3体しか確認されていない存在。実質的には、魔物の最終進化は魔族となる。その強さは一体で小隊を相手に勝つことが出来るほどだ。
「何故ですか…それはあなたほどの強者が、村を襲わず夜に墓地にいるからですかね。魔族も魔物も、人を本能的に襲いたくなる。そうしないのは理性があるからに他ならない。そんなあなたを僕は尊敬しているからです。」
「尊敬か…そんな言葉をもらったのは実に70年前だな。お前の様な者を見ることができるとは思いもよらなかった。ぜひ名を聞かせてもらいたい」
「───────ユイト…僕の名前はユイトです。」
「ユイトか…其方に頼がある。私の生前の妻を探して欲しいのだ。生きていても死んでいても構わない。今どこで何をしているのかが知りたいのだ。」
「生前…あなたは元々人間だったんですね。」
アサは気づいたみたいだが、アイはぴんとは来ていないみたいだった。
「そうだ。我は元、人だ。実に50年ほど前に、この村に魔物が大量に攻めてきた時に我は兵を率いて戦い、我は敵の主将と共に倒れた。」
「人が死んだ時に強い怨念や後悔がある事と、強く、そして大量の魔力があれば、人は再び生き返る。魔人として。まさかおとぎ話だと思っていたら本当にそんなことが起こるとは…」
「───────あっそう言う事か!」
やっとモヤモヤが解消されたみたいな顔をしているアイと、今頃気付いたのかと驚いているアサを、横目に魔人は再び話し始めた。
「妻は綺麗な青色の瞳をしていた。我が頼み、頼まれてくれるか?」