厄災の再誕
その一撃はスノードロップに直撃し、薄暗かった洞窟に陽光が差し込むほどの衝撃を与えた。
その衝撃を生身で食らったスノードロップは、想像通り胴体が吹き飛び体は二つに砕けていた。
「────やはり想像通り!あなたは素晴らしい!私の5分の1の実力を持つ『氷人形』を木っ端微塵に砕き散るとは!」
そう言いながら”闇の中”から、今まで以上に強くそして濃い魔力を持ったスノードロップが姿を現した。その姿を見た瞬間今までのはただの人形で間違いなかったと、再確認させられる。細胞一つ一つが震えているそんな気さえして来た。
「私は十二分に楽しみましたし、そろそろ任務を終えて帰りましょうか。次会う時までには私の首に届くくらいまでは成長しておいてくださいね?」
そう言いながらスノードロップは三大魔獣の一つコモルドラが眠る祠に手を伸ばし、解術の呪文を唱えた。
『───────五十無双封印・開錠!!』
そう唱え終えると、スノードロップは愉快に手を振りながら再び闇の中へと消え去っていった。その瞳は子供の様な無邪気な笑顔を映し出している様だった。
そんなことを考えていた時、封印石が砕け散り、中からとてつもないほどの魔力が溢れ出て来た。その魔力によって今にも砕けそうだった洞窟は完全に崩壊し、国中の氷は一瞬にして砕け散った。氷だけではない。辺りの建物はおろか、雲さえ吹き飛ばし完全な地平線を作り上げていた。
そんな魔力の前になす術なく、僕達は溢れ出た魔力によって天高く吹き飛ばされた。その時その男は僕達を抱きしめ、語りかける。
「すまなかった。少しばかり遅くなっちまったがタイミングはバッチリだったか?ユイトッ!」
「ローズッ!タイミングならバッチリだよ!」
そのままローズに抱き抱えられながら更地とかした大地に再び足をつけ、転末を全て話つつ、コモルドラから離れていた。
「なるほどそれであのデカいトカゲみたいなのが洞窟から出て来たって訳か。」
「トカゲってよりかは大きなコモドドラゴンって感じじゃ無い?」
アイに言われて気づいたが黒い皮膚に、禍々しい爪、赤黒い瞳に長い尻尾確かに言われてみれば確かにコモドドラゴンの様な姿だったが、何より違うのは、その大きさだった。全長は、およそ1kmはあるであろう長さに、高さは500m程だろうだが、1番恐ろしいのは半径50kmあるホーリーの3分の1を更地にかえ、スノードロップの国中に広がった氷を全て砕いた魔力量である。
「───────これが三大魔獣…」
「こんなの勝てっこ無いよ…」
後ろで体制を立て直していた兵士達が口々に話始め、戦場は既に敗北したかの様だったその時、ローズが大きな声で叫んだ。
「──────お前達ッ!何故戦う前に諦めた!我々は騎士だ!愛する者のために矛となり、盾となり死ぬのが我々の使命だ!騎士にとって最も大事な事は”どんな時でも諦めない心の強さ”だ!それを忘れたのかッ!」
その声はまるで洗脳かの様な速さで騎士達の心に波紋の様に染み渡り、再び闘志を燃やした。まだ、終わっていない。まだ負けていない。何故ならまだ心を砕かれてはいないから。そう洗脳されている様だった。