白い本 ~水谷聖香のサイコメトラーシリーズ~
水谷聖香は一冊の本を読んでいた。それは近年、この街で起きた様々な事件の判例を簡単にまとめた物だった。聖香はパラパラと興味津々でページを捲っていた。
聖香は落ち着かなかった。もっとゆっくりと目を通したい。でもそれは無理な状況だった。なぜなら、聖香の目の前に彼が立っている。彼とは、警察官だ。紺色の長いコートを羽織った警察官で、齢30近くだろうか?無言で聖香を見つめている。背の高い警察官だ。
聖香の目に気になる事件が飛び込んできた。それは、女性がナイフで襲われた事件。犯人は奇妙な事に犯行後、奇声を上げ飛び跳ねて喜んでいたと書かれていた。犯行を喜んでいたのだ。犯人の男は被害者の死を確認しないまま、北へと逃走。まだ犯人は逮捕されていないとあった。
聖香が見ていると、目の前の警察官が言った。「借りていきますか?」どうやらこの本を貸してくれるようだ。だが聖香は迷った。「これを借りてもいいの?」と迷う聖香。警察関連の本だから官給品に違いなかった。それを借りてもいい?優しそうな雰囲気の警察官は言葉を発しない。聖香が彼を見ると、彼の唇が動いていた。「馬鹿野郎」そう言っていることに聖香は気付いた。
迷った聖香は、本を借りない事にした。「警察官は借りていけ」と言った。警察官が持つ資料を借りる機会なんて滅多にない。聖香は勿体無いと思う以上に、さっきの事件がとても気になっていた。聖香は持っていた白い本の白書を警察官に渡した。白い本にはもっとたくさんの事件の事例が載っている。
聖香は「もっと読みたい」という気持ちを我慢した。そして警察官に御礼をして外に出た。聖香が外に出ると、時刻は午後9時で真っ暗だった。外には暗闇の中で子供が3人ほど遊んでいた。遠くには何人かの人影が見えたのだった。