異世界青春譚4
家の裏手には森が広がっていた。アカツキは目の前に落ちていた適当な木の棒を拾う。
一回、二回と棒を振り、重さを確かめるとアカツキは素振りを始めた。「1、2、3,…」
そのまま一心不乱に素振りを続ける。「497,498,499,500!」ふぅと小さく息をつく。額ににじんだ汗をぬぐい、軽く深呼吸をして棒を構えなおし、もう一度素振りを始める。「1,2,3,4,5…」
「499,500」何千回と素振りを繰り返した頃だった。汗で濡れ、張り付いた服が引き締まった肉体を強調させている。「遅いな、アケボノ…」ぽつりとアカツキの口から言葉が漏れた。アケボノは10刻までには帰るといっていた。今はもう10刻を回ろうとしている。几帳面な性格のアケボノが自分で言ったことを破るとは考えにくい。
「迎えに行くか…」家に戻り、手早く着替える。家を出て、アカツキはふと気が付く。
「市場ってどこだ?」しばし考えこみ、思考を放棄する。アカツキはあまり頭がいいほうではないのだ。率直に言うと馬鹿である。「まぁ、行けばわかるだろう。」アカツキは魔力で身体能力を強化し、アケボノが去った方向へと走り出した。周りの景色が置いて行かれる。ただでさえ速い足は魔力の補助を受け、尋常ではないほど加速する。数分走ると、街が見えてきた。魔力強化を解き、アカツキも姿を変える。といってもアケボノほど匠ではなく、かなり面影が残っている。まぁ他人の空似で押し通せる範疇だろうと判断し、アカツキは街へと降り立った。