異世界青春譚2
「うあああ!!」破れかぶれになりながら距離を詰め、アケボノに剣を振り下ろす。のろい攻撃だと自覚しているそれを、アケボノはこともなさげに杖ではじく。「ああああ!!」力任せだ。太刀筋なんてまるでなっていない。また杖ではじかれる。もう一度、もう一度、何十回か無駄な攻撃を繰り返したころに、アカツキの心は折れた。手の力が抜け、剣が床に落ちる。静かな空間に刃と床がぶつかる音がやけに大きく響く。
「攻撃、してくれよ。僕に君は殺せない。」アケボノは何も言わない。ただ悲しそうな顔をしているだけだ。
「君だって、僕を倒さなければいけないんだろう?」アケボノは何も言わない。ただ悲しそうな顔をしているだけだ。
「ああ、そうか。」アカツキは気が付き、床の剣を拾い上げ、持ち上げた。刃を首筋にあてて、アカツキはアケボノに微笑みかけた。「だめ!」アカツキが何をするのか察したアケボノが白い肌からさらに血の気を引かせて叫んだ。「碌な人生じゃなかったけど、君に会えたことは僕にとって最大の幸運だ。ありがとう。さようなら。」アカツキがほほ笑む。「だめだってば!」アケボノが叫ぶや否や剣がアカツキの手からもぎ取られた。剣を握りしめているアケボノの手はざっくりと切れ、ぼたぼたと血が流れては、絨毯にシミを作っている。
「一緒に逃げましょう。アカツキ」紅玉の瞳は潤み、いまにも涙が零れ落ちそうだ。「貴女が好きです。一緒に生きましょう?」アケボノは泣き笑いのような表情でそう告げ、アカツキに手を伸ばす。窓から降り注ぐ月光が、アケボノを美しく照らし出していた。