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2-3 困ったときはお互い様

「あ、うん……コハルで合ってる、よ……。」


「あ、ああ……。」


 驚いてぎこちない反応になってしまったコハルに対し、水色髪の少女も気まずい反応を返し、二人とも一秒ほど沈黙した。

 彼女は出席簿のデータから自分の名前を確認したらしい。コハルもちらりと相手のコンソールを見て、彼女の名前が「エリー」であることを知った。


「えっと……その、問題、わからなくて、困ってるん、だよね……。」


「う、うん……。」


「よければ、解き方、教えて、あげ、ようか……?」


「え、いいの!?うあぁ……ありがたいよぉ。」


 コハルは少し感激して顔をほころばせる。エリーは謝意を向けられて恥ずかしそうにしながらも、肘掛の操作盤を操って座面の位置をコハルに近づけ、ノートを見せてくる。

 二人の肩と肩が触れ合い、エリーは「あ、ごめん……。」と身を引く。


「ううん、良いよ全然。」


「じゃ、じゃあ……。」


 二人は肩を並べ、コンソールをリンクさせてノートを共有した。

 「ここが、こうで、こっちの問題が……。」などと話している間に、教師の話は先に進んでしまっている。しかしエリーは特に気にしている様子もない。どうやら彼女は、かなり数学が得意なようだ。後でいくらでも追いつけるのだろう。

 顔を寄せ合っていると、二人の髪の甘い匂いが混ざり合う。空中のホログラムの上で二本の指が交差し、重なっては離れてを繰り返す。


 ああ、すごい……なんか私、ちゃんと人と仲良くできてる気がする!説明もわかりやすいし、なんか楽しい……。


 コハルはようやく、普段のペースを取り戻すことができた。次第に反応が大きくなってくるコハルに対し、相手の子は少し面食らっていたようだったが、向こうも向こうで段々慣れてきた。


「ありがとう、ほんとに!すっごくわかりやすかった!」


「ど、どういたしまして……。」


 少女は顔を赤くして伏せる。


「別に、たいしたことじゃ、ない、から……困ったときは、お互い様、でしょ?」


「そうだね!友達はいつも助け合うものだもんね!」


「え、友だ、ち……?」


「あ、ごめん。まだ友達は早かった?」


 コハルは距離の詰め方を間違えたかと慌てる。


「う、ううん……コハルちゃんが、それでいいなら……。」


 エリーは太腿の上に置いた手をそわそわと動かしながら言った。


「じゃあ、エリーちゃんが私の友達第一号だね!よろしく!」


「よ、よろしく……。」


 コハルの純度の高い笑顔に対し、エリーもようやく口元を緩めたのが見て取れた。


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