約束
「あの…俺、東雲夕矢っていうモノなんですけど」
あの一週間くらい前に友達と向こう側の高島水際線公園の方から庭の池を見たんですけど
「ゆっくり見せて欲しいと思ってきました」
男性は夕矢をじっと見て
「悪いが他人を屋敷の中に入れるわけにはいかないな」
と答えた。
夕矢は「あの」というと
「少しだけでいいんだ、本当に悪いことなんてしないし」
見るだけで良いから
「その館の中には入らないから池を見せて欲しいんだけど」
と門の格子を掴んで頭を下げた。
男性はふぅと息を吐き出すと
「何度言ってもダメだ」
ここは個人宅だからな
と腕を組んで夕矢を見た。
「余り騒ぐと警察を呼ぶぞ、坊主」
夕矢は顔を顰め
「…じゃあ、この屋敷の人に話をさせてもらいたいんだけど」
と告げた。
男性は呆れたように
「ダメだ!」
と言った瞬間に館から出てきた壮年に目を向けた。
「ご主人様」
夕矢はその人物を見ると
「あの、初めまして」
俺、東雲夕矢と言います
「屋敷の裏手の池を見せて欲しいんです」
と告げた。
「その池…底に…それを見せて欲しいんだ」
その人物は夕矢の前に立つと
「東雲…か」
と呟き、笑むと
「今は、ダメだ」
だが何れ見せてあげよう
「時が来るまで待っていなさい」
と告げた。
最後までお読みいただきありがとうございます。
続編があると思います。
ゆっくりお待ちいただけると嬉しいです。