思わぬ場所の光
貢は手帳を見ると
「それで明日の日曜から行く?」
と聞いた。
冴姫は頷くと
「私は良いけど」
東雲君も何時まで東京に入れるか分からないし
「動けるときは動いた方が良いと思うんだけど」
と告げた。
尊も頷くと
「そうだな」
と答えた。
詩音も頷いた。
夕矢は「急かせるようで悪いな」と告げた。
貢も冴姫も尊も笑顔で
「「「その方が楽しめるし」」」
と答えた。
翌日の日曜日に二子バラ園と東京白露美術館へ行くことを決めて解散したのである。
夕矢は詩音をホテルまで送りホテルの前に現れた愛染幸一郎を見た。
愛染幸一郎は夕矢に一礼すると詩音を見て
「詩音さま、実は」
と唇を開いた。
「栞様が眠ったままお目覚めにならなくなりました」
詩音は目を見開くと
「お母さまが…」
その、その事を直彦お兄様には
と聞いた。
愛染幸一郎は頷き
「今日、お伝えしました」
と言い
「恐らく、予感されていたのだと思います」
私に礼を言われて詩音さまのことを頼むと仰っておられました
と告げた。
夕矢は詩音を見つめ
「詩音ちゃん、もし」
と言いかけた。
それに詩音は振り向いてにっこり笑うと
「きっと、あの日」
お母さまは全てを話しに来てくださったんだわ
と告げた。
「お兄様に私に…大切な思いの全てを」
だから大丈夫
そう言って、夕矢の手を掴むと
「ごめんね、明日、皆と行けなくなっちゃったけど」
夕矢君、頑張って探してきてね
と微笑んだ。
「私、九州へ帰る」
お父様や樹のことが心配だから
「それで、これからどうするか…考えるわ」
夕矢は戸惑いながら
「…うん」
と小さく頷いた。
本当は。
一緒に探したかった。
いや、もしできるなら九州へ共に行って彼女の側について励ましたかった。
だけど。
夕矢は詩音の顔を見ると
「わかった、詩音ちゃん」
ただ忘れないで欲しいんだけど
「詩音ちゃんが俺を必要としてくれたら飛んでいくから」
一人で抱え込まないでいつでも頼ってくれ
と告げた。
詩音は大きく頷いて
「そういう夕矢君がいてくれるから…私、頑張れる」
いつでも私を思ってくれる人がいるって分かったから
「ありがとう」
と言い、愛染幸一郎を見ると頷いた。
詩音はその日の最終便で九州へと帰った。
最後までお読みいただきありがとうございます。
続編があると思います。
ゆっくりお待ちいただけると嬉しいです。




