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フォトリーズニング  作者: 如月いさみ


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30/123

写真探索再び

病院に着いたのは午後4時であった。

誰もが手術室の前に座り赤いランプを見つめていたのである。


隆と夕弦と剛士は白露元を見ると慌てて状況を尋ねた。

元の弟の白露允華と彼の親友の泉谷晟の目の前で夏月直彦が撃たれたのだ。


島津家の護衛を務める島津肇が辛うじて押し倒したので弾が貫通した位置がずれたということである。

なので、直後は意識があったらしいが直ぐに意識を失ったということである。


3人は更に肇から直彦の弟の夏月春彦もまた九州で同時に狙撃されて今手術を受けていることを聞き蒼褪めた。


自分たちが甘かったのだと理解したのである。


夕矢は兄たちを一瞥して少し離れた場所で蒼褪めて座っている詩音と護衛の愛染幸一郎を見ると駆け寄り彼女の姿に顔をしかめた。

服には血が付いたままで何も写していないように空間を見つめている。


間違いなく彼女もその場にいたのだ。

どんな思いでここへ来たのかと思うと夕矢の胸は強く軋んだ。

「詩音」

小さく呼びかけてそっと彼女の血に濡れた手を掴んだ。

「詩音ちゃん」

再度呼び掛けて彼女がピクリと反応して顔を向けると

「大丈夫だから、夏月先生…大丈夫だから」

とそっと抱き締めた。


陸奥詩音はそれに初めて涙を落とすと

「言ってくれたの…私のこと詩音って呼んでくれたのに」

私…何もできなかった

と夕矢を抱きしめ返した。


細い身体だった。

初めて会った時は驚くほど強くたくましく思っていたが、彼女はそのナイーブな心を一生懸命強がりというオブラートで包み込んでいたのだ。

それを今になって本当に理解した。


守りたい。

そして、彼女に本当の笑顔をあげたい。


夕矢は祈るようにランプを見つめると

「けど、いま詩音ちゃんを笑顔に出来るのは先生だけなんだ」

だから

「生きて」

彼女を救って欲しい

と心で呟いた。


隆はそれを横目で見て直ぐに月と父親の清道に抱かれている太陽に目を向けると

「太陽、大丈夫だからな」

太陽のお父さんは強いから

と笑みを見せた。


太陽は唇を噛みしめると小さく頷いた。

震えながら祖父に抱きつき涙を浮かべている姿が隆には在りし日の清美に見えた。


母親を失って家へと来た時の彼女だ。

その時の彼女はそれでも泣いてはいなかった。


散々泣いて泣いて、そして、強く歩き出そうとしていたように隆には見えて印象に残っていた。

だが、そんな同じ思いを大切な姪にさせたくはなかった。


隆は手術のランプを見つめ

「お前と清美ちゃんの大切な太陽を残して逝くなよ」

お前がいなければ…ダメなんだ

と呟いた。


夕弦も剛士も允華も晟も茂由加奈子も誰もが祈る思いでランプを見つめていたのである。


写真推理


最後までお読みいただきありがとうございます。


続編があると思います。

ゆっくりお待ちいただけると嬉しいです。

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