不吉な知らせ
入れ替わるように訪れたのは津村隆であった。
夕方に夕弦が仙台駅で待ち合わせをして家へと連れてきたのである。
隆は夕矢を見ると大きく目を見開いた。
身長は伸びて身体は引き締まり表情もどこか大人っぽくなっていたからである。
「夕矢、くんか」
夕矢は笑顔で頷くと
「お久しぶりです、津村さん」
と答え
「正月に春彦さんと会ってきたんですよね」
春彦さんどうでした?
「夏月先生と会って燥いでいたんじゃないかなぁって」
と笑って告げた。
隆はふっと笑うと
「ああ、かなり喜んでいたけどな」
と言い
「8月に会った時は君の方が子供子供していた気がしたが…凄く立派になったな」
と告げた。
そして
「三人に直接会って色々聞こうと思ってる」
と付け加えた。
そう、夏月直彦の出生の秘密や各地を回って特別な家系が持っている不可思議な置物のことなどだ。
夕矢は頷いて
「兄貴からの話もあるので話は長くなると思いますが、その前に俺の手料理楽しんでください」
と言い台所に立って調理を始めた。
「名コックの誉れ高い津村さんの評価が怖いけど」
隆は笑って
「いやいや、末枯野から君の腕のほどは聞いているから楽しみにしてる」
と答えた。
その夜、夕矢は4人で食事を終えると早々に自室へと戻って毎日の日課である勉強アプリで勉強を行った。
隣のリビングでは隆と夕弦と剛士の三人で綿密な情報の交換が行われた。
隆が持ってきた情報は春彦が九州で手に入れた情報であった。
それは突然消息を絶った秋月家ともう一つの特殊な家系である島津家の話である。
また、陸奥初男と磐井栞についてもかなりの部分で知っていたようである。
途中で夕矢は夕弦に呼び出されると例の写真を見せた。
隆は写真を全て携帯で撮り
「確かにこの写真の全てがあの多摩川河川の丘に似ているな」
と呟いた。
「そうだな、そこまでわかっているならこれは話しておいた方が良いかもしれないな」
と言い
「あの土地は元々咲良家からの特別地なんだ」
と告げた。
夕弦も夕矢も剛士も彼を見つめた。
隆は紙とペンを夕矢から借りると簡略的な家系図を書いた。
「津村家が特別な家系になったのは咲良家と結婚し一つになったからだと言われている」
あのシステム構築には咲良家や秋月家も関わっていて関東で始まったんだ
「それが当時の名士によって各地にそのシステムを置いたことが始まりだったんだ。それが今の特別な家系の誕生だ」
あの土地はその咲良家から譲渡され代々津村の家が特別地区として東京にも埼玉にも属しない場所として置いているんだ
「だからあの地には津村家の血筋以外の人間が同行していない場合は排除される仕組みになっている」
夕弦は腕を組むと
「なるほど」
と言い
「ということは朧がいたから夏月はあの土地に入れていたってことか」
と呟いた。
それに関して隆は腕を組むと
「今となってはわからないな」
と告げた。
「直彦が秋月の血筋でなかったらそうだったんだろうが…秋月の血筋というのが関係しているのかもしれない」
清美ちゃんが白露と結婚した後にも確かあそこへ行っていたからな
「俺も夕矢君があそこへ行っての話を聞くまではそんなことになっているとは知らなかったし」
剛士は納得したように
「確かに、津村は津村家だから弾かれることはないからな」
と告げた。
「それにそう考えれば他の13の場所も特別な家系の直轄地になっている可能性があるんじゃないのか?」
夕弦は頷いて
「そうだな」
その可能性が高いな
と告げた。
隆は少し考えると
「その置物の事や写真の件については咲良家との話も交えて白露と直彦には話をしておく」
と返した。
「それで東雲と末枯野にはこのまま続行してもらいたいんだが」
勿論、その写真集めも一緒にな
夕弦も剛士も頷いた。
夕弦は特に
「それは勿論だが、陸奥家の詩音ちゃんか…彼女も彼女の意志があれば一緒にとは思っているんだが」
と告げた。
夕矢は兄の夕弦がそう切り出してくれたことにパァと目を見開いた。
夕矢は隆に
「俺、彼女と一緒にその写真の謎を解いていきたいと思っている」
それはきっと兄貴の調べている事にも関係していると思うんだ
と告げた。
夕弦は小さく苦笑を浮かべて
「…まあ、特殊な置物を見れる眼があるのは弟だけだから」
と告げた。
隆は笑うと
「わかった、そこは任せる」
と告げた。
最後までお読みいただきありがとうございます。
続編があると思います。
ゆっくりお待ちいただけると嬉しいです。