不吉な知らせ
陸奥詩音が持ってきた絵と春彦から送られたリストのお陰で散らばっている絵の回収はスムーズに進んだ。
必要なものは絵ではなく二重キャンバスの中の写真なので修復専門家に写真を取り出して再び張り直してもらえれば絵が二つ揃うということになるので中には喜ぶ蒐集家もいたのである。
ただその条件としては他言しないということである。
時が来れば二枚を展示しても構わないということで蒐集家はそれを快諾した。
2月の間に西東北に住んでいた二人の蒐集家から絵を交換する条件で借り受けることが出来た。
詩音もそれに同行し立ち会っていた。
彼女は仙台駅の近くで陸奥家からつけられたボディーガードの愛染幸一郎と共にホテルで宿泊している。
経済的に困らないところが九州の特別な家系の経済力なのである。
そして、3月に入って直ぐに詩音は夕矢に
「明日…夏月直彦…お兄さんにあってこようと思ってる」
と告げた。
夕矢はインターバルトレーニングを終えて一息ついた時に彼女から聞き少し考えたものの
「…詩音が行きたいなら行ってきたらいいと思う」
凄く良い人だよ
「夏月先生は」
と笑顔で答えた。
「ちゃんと会って話したらまた戻っておいで」
俺待ってるから
詩音は笑顔で頷いて
「ありがとう」
と言い
「少しだけ手を貸して」
と手を伸ばした。
夕矢は彼女の気持ちがわかると手を握りしめて
「頑張れ、俺、応援してる」
と告げた。
詩音は頷いて
「うん、頑張ってくる」
と答えると
「それからまた絵から写真を取り出すの手伝ってね」
と告げた。
夕矢は素直に頼ってくれる彼女を愛しく思うと
「ああ、もちろん」
と答えた。
剛士はそれを横目で見て
「娘を嫁に出す父親の気持ちを味わってる」
と夕矢の成長を微笑ましく感じていた。
詩音はそう言って東京へと向かったのである。
3月6日の午前のことであった。
写真推理
最後までお読みいただきありがとうございます。
続編があると思います。
ゆっくりお待ちいただけると嬉しいです。




