怪盗クロウ
夕矢は頷くと
「そうなんだ」
と答え
「あの、その絵を先ず見せてもらえますか?」
と聞いた。
長浜昭二は立ち上がると
「どうぞ」
と二人を誘うように事務室を出て展示室へと足を踏み入れた。
入口のロビーは広々としてズンッと奥まで見通せるようになっておりそこから左に曲がるのが順路となっていた。
展示室は一階と二階に分れており二階は常設展示となっており一階がイベント展示であった。
今回は西洋美術との邂逅というタイトルでゴッホやセザール、スーザンなどが展示され、その中の一つがPオーキスのライン橋であった。
Pオーキスは有名な画家だったのでサインの特徴などは知識の一つとして三嶋から教わっていた。
夕矢は展示されている絵を前にサインのチェックを行った。
「まだ、本物だよな」
サインは本物ぽい
それには長浜昭二は慌てて
「手紙が届いたばかりなので…それに警報器も鳴っておりませんし」
と告げた。
夕矢は笑顔で
「けど、いつとない以上はもう変わっている可能性も否定できないし」
と告げた。
言ってしまえばそうかもしれない。
出すのと同時に入れ替えるというのは全くない話ではないのだ。
剛士は「ほぉ、なるほど」と呟いたものの
「だが、夕矢君」
それだと態々出す意味がないと思うが?
と告げた。
「こういう予告状を送る人物は自己顕示欲というか自分が盗るという行為を認識してほしいから出すと思われるから取った後に出すとは思えないが」
夕矢は目を瞬かせると
「確かにだよね」
と言い、単眼鏡を手にすると
「すみません、警報一時的に切ってもらえますか?」
と告げた。
「この絵だけでいいので」
長浜昭二は携帯で事務員に連絡をして警報を切った。
夕矢はガラスの上から拡大鏡を当てて経年劣化のひび割れを観察した。
ライン橋の作成は1870年代と書かれている。
つまり150年ほど経過しているのだ。
その間に修復されたりしているだろうことを鑑みての絵具の様子を見た。
恐らく本物であろうと夕矢は判断した。
最後までお読みいただきありがとうございます。
続編があると思います。
ゆっくりお待ちいただけると嬉しいです。




