怪盗クロウ
美術館は駅から車で20分程の広瀬川に面した緑の多い場所にあり庭にも幾つかの彫刻が飾られていた。
夕矢は剛士と共に美術館の事務室を訪ねて話を聞く事になった。
美術館の館長は長浜昭二と言い50歳くらいの壮年男性であった。
「よく来てくださいました」
と言い
「実は」
と話を続けた。
彼は一枚の手紙を置いて溜息を零した。
「これが今朝、郵便で届きました」
その手紙は新聞や広告の切り抜きで貼られた怪文書であった。
『Pオーキスのライン橋を戴きに参上する 怪盗クロウ』
剛士は腕を組むと
「怪盗…ですか」
と小さく呟いた。
そして、夕矢を見ると
「夕矢君は怪盗系に好かれるようだな」
と苦く笑って告げた。
が、夕矢は唇を尖らせると
「そうじゃなくて、こういう仕事だからだと思うけど」
とぼやいた。
「しかも、日にちも何もないっていうのは卑怯だと思うけど」
一年後かも知れないし
「百年後かも知れないだろ?」
…。
…。
屁理屈を捏ねれば確かにそうではあるが。
長浜昭二も流石にどこか微笑ましく夕矢を見ると
「それが、Pオーキスのライン橋は借り物なので今日から3日だと思っています」
と告げた。
つまり1月10日から1月13日の展示期間だということである。
最後までお読みいただきありがとうございます。
続編があると思います。
ゆっくりお待ちいただけると嬉しいです。




