表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
フォトリーズニング  作者: 如月いさみ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

18/123

詩音と直彦の秘密

三人は奥州街道沿いの小さいが気品のある温泉宿で一泊すると翌日の朝に青森へと帰った。

マンスリーマンションに戻り一息ついた時に夕矢に連絡が入ったのである。


『なおひこ』…つまり詩音からであった。

夕矢は布団の中で携帯を見て相手が分ると直ぐに応答ボタンを押した。


「…おはよう」


…。

…。


些か間抜けな挨拶であった。

が、彼女から

「おはよう」

意外と起きるの遅いね

と返った。


夕矢は時計を見て

「あー、7時半か、そうだよな」

と返した。


彼女は少し間を置いて

「もう、私のこと色々知ってると思うけど…会える?」

と聞いた。


夕矢は頷くと

「会いたい」

『なおひこ』じゃない

「陸奥詩音っていう…君自身に」

と告げた。


詩音はくすくす笑って

「新青森駅の改札の下の一階に座る場所があるの…バスターミナル側に」

そこで待ってる

と携帯を切った。


彼女はそこに座って全面ガラスになっている窓の向こうを見ると

「樹が言うんじゃ仕方ないよね」

私も信じるしかないか

と目を閉じた。


彼女の本名は陸奥詩音と言い、九州の特別な家系の一つ陸奥家の娘であった。

これまでの集めている絵の探索は彼女の異母兄弟である陸奥樹がしており、二人は一心同体で行動していたのである。


その陸奥樹から連絡があり

『ごめんな、全部話したんだ。俺は彼を信用しようと思ってる』

『詩音も本当はその子を信用しているんだろ?手を掴んだらいいと思う』

『俺も一緒に手を掴むからずっと詩音と俺は一緒だよ』

と言われたのだ。


樹が信じたのは夏月春彦という人物だった。

そう、自分の異父兄弟の夏月直彦の弟だ。


自分の母親が唯一子供と思っている『なおひこ』の弟だ。

詩音はずっと母親から『なおひこ』と呼ばれて生きてきたのだ。


だから嫌いだったのだ。

その名前が。


ただ、その樹が信用した夏月春彦が紹介したのが…東雲夕矢であった。

北海道から現場で出会っていた彼なのだ。


詩音は溢れ落ちる涙に頬を濡らしながら

「違うよ、樹は…陸奥家の唯一の跡取りだもん」

私はあの人の身代わりの人形だもん

「きっと今度も彼の中の誰かの代わりになるんだ」

三つ葉って子の変わりかなぁ

と小さく笑って呟いた。


瞬間に声が響いた。

「全然、三つ葉と似てないから!」


夕矢はズンズンズンと近寄ると手を出して

「俺、君を誰かの代わりになんかしないから」

と言い

「だから、手を掴んで」

と告げた。


詩音は唇を噛みしめると

「名前、呼んで」

と手を伸ばした。


夕矢は笑むと

「詩音、力になるから」

君のこと教えて

と手を掴んだ。


この二人のめぐり逢いが兄の夕弦や剛士、また直彦や隆や元がしようとしている日本を変える事に大きな影響を与えるとはこの時には気付きもしなかったのである。


最後までお読みいただきありがとうございます。


続編があると思います。

ゆっくりお待ちいただけると嬉しいです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ