新しい対決の時へ
10月11日に陸奥詩音から母親である磐井栞が亡くなったと連絡があった。
彼女の異父兄妹である夏月直彦や兄たちも九州へ行き葬儀に参列したのである。
彼女は泣きながら
「お母さんは一生懸命運命の中を歩いてきたんだと私は感じたの」
だから私も頑張ろうと思う
と言い
「今はお父さんの側でお父さんを支えていくつもり」
そして落ち着いたら
「夕矢くんの手伝いをしていいかな?」
システムの場所探しの
と告げた。
夕矢はそれに
「勿論、乙女シリーズの残り二枚の絵の場所を分かっているから手に入れることが出来るし」
後は西日本の各地にあるシステムの場所を示す地図を見ていくことになるから
「それはゆっくり回っていくつもりだから」
今は詩音ちゃんの大切なことをして
「そして落ち着いたら一緒に回って行こう」
と告げた。
彼女は「うん、ありがとう」と答え、通話を終えた。
夕矢は携帯の応答を切ると窓の外を見つめた。
磐井栞。
夏月直彦と陸奥詩音の母親でありシステムの写真を抱き締めていた人なのだ。
乙女シリーズのモデル。
正に作者にとっての乙女である。
だけど
「何だろう…あの人の死が一つの時代の終りを教えているような気がする」
夕矢は呟いて目を細めた。
写真推理
会議が終わると兄の夕弦も末枯野剛士も慌ただしく白露家へ出かけたり津村家へ出かけたりしていた。
夕矢はその間に専門学校東都アートスクールの試験に受かり4月から通うことが決まったのである。
親友である芒野尊も東都大学に受かりアルバイトをしながら将来は夏月春彦の探偵アシスタントをするらしい。
本人は嬉々として
「色々体験出来て楽しい」
と言っているので夕矢としては良かったと思っている。
三つ葉冴姫も桔梗貢も同じ東都大学に受かって三人で通っており、時折四人であって遊んでいる。
ただ夕矢は仕事優先で美術館から護衛の依頼があると最近は色々な場所へ出向いている。
そして梅が咲き始めた3月のある日。
末枯野剛士に三嶋悟から電話が入ったのである。
丁度、三人で夜食を食べている時であった。
剛士は携帯を切ると夕矢に
「…新富士美術館に絵画を盗むという手紙が届いたらしい」
明日から開催される女性の美展で展示される梶原牧男の『窓辺に佇む女性』が狙われているそうだ
と告げた。
夕矢は頷くと
「わかった」
新富士美術館な
と答えた。
剛士は笑んで
「怪盗だったら…夕矢君は怪盗に好かれていると言われるな」
と告げた。
夕矢はプッと頬を膨らませると
「それ嬉しくない」
と答えた。
夕弦は笑って
「頑張れ夕矢」
と告げた。
新しい、怪盗との対決の始まりであった。
最後までお読みいただきありがとうございました(/・ω・)/
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