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怪盗クロウと最期の対決

新潟の家を9月中頃に引き払うと東京のマンションへと戻った。

考えれば北海道に青森、そして、南下して新潟と夏月家の兄弟の狙撃事件で一時帰宅はしたもののそれでも一年経っていたのである。


夕矢は兄の夕弦とマンションの部屋に入り身体を伸ばした。

「んー、やっぱり家は落ち着く」


夕弦は笑みを浮かべて

「そうか」

と言い

「大切な話があるんだ」

と椅子に座った。


外は夕暮れ。

時刻は夕方の4時。


夕食前であった。


夕矢は兄の夕弦と向かい合うように座り

「何?兄貴」

と聞いた。


夕弦は夕矢を見て

「大学を探しておけ」

来年の4月

「大学へ行ったらいい」

と告げた。


夕矢は驚くと

「え?」

でも兄貴は?

と聞いた。

「俺、一人で東京に残るのか?」


夕弦は首を振ると

「実は津村から連絡があって状況が変わったらしい」

春彦君が下山陽や北陸などの幾つかの特別な家系に縁があって繋ぎが取れたらしい

と告げた。


夕矢は驚いて

「え!?春彦さんが?」

と声を上げた。


夕弦は頷いて

「ああ、それで俺はどうしても繋ぎが取れないところがあった場合のみポイントで調べに行くという形になった」

と告げた。

「その代わり、こっちで津村や白露と一緒に今後の方向性の話し合いと九州の方である会議に出席して情報を持ち帰る仕事に切り替わった」

その場合は長くても二泊三日だ


夕矢はパァと笑顔になると

「そうなんだ」

と言い

「わかった」

と答えた。


夕弦は微笑み

「それで明後日、末枯野とお前と三人で例の梶田幹一氏の美術館へ行って菱尾湖南の木蓮の話を進めようと思うが」

お前の予定はどうだ?

と聞いた。


夕矢は頷いて

「俺は大丈夫」

尊や桔梗や三つ葉にはまだ連絡取ってないから予定もないし

「また連絡とろうと思ってるけど」

それが済んでからにする

と告げた。

「また皆と会えるの楽しみ」


夕弦は心からの笑顔を見せる夕矢に

「そうか、分った」

と答えた。


夕矢は立ち上がると

「じゃあ、夕飯の準備買ってくる」

まだ四時だから作れるし

と告げた。


夕弦は笑って

「じゃあ、頼んだ」

と告げた。


夕矢は頷いて家を出ると近くのスーパーへと向かった。


その日は久しぶりの兄弟二人だけの時間であった。

数か月のあいだ末枯野剛士も一緒だったので夕矢も夕弦も少し寂しい気分を味わったのだが、翌日の朝には剛士と夕弦は白露家へと今後の打ち合わせへと出かけ、夕矢はジムへ行く準備を整えながら

「あ、今日は末枯野のおじさん夕食一緒するだろ?」

準備しとく

と告げた。


剛士は笑顔で

「ああ、悪いな」

頼む

と車に夕弦を載せて出かけたのである。


今までと同じような、でも、何処か変化した日常の始まりであった。


写真推理


夕矢は本格的な受験生としてジムで身体を鍛えつつも予備校へ通うことになった。


「お前は学校へ行っていない分だけ不利だから、予備校で埋めた方が良い」

と夕弦から勧められたからである。


10月から通う手続きを行い、東京へ帰宅して三日後に夕弦が言っていた通りに剛士を含めた三人で梶田幹一の美術館へと出向いた。


そこに菱尾湖南の『木蓮』があるからである。


個人の特別な美術館ということだが建物は二階建てと大きくはない洋館だが壁はレンガでしっかりとした造りであった。


三人が訪れると梶田幹一は

「おお!よく来てくれました!」

と喜び

「ゆっくり見ていってください」

その間に昼の用意をさせておきます

と告げた。


それに夕矢は

「あ、お気遣いなく」

と答え

「その前に話したいことがあって」

と告げた。


幹一は頷くと

「じゃあ、こちらへ」

と美術館の横にある自宅の応接室へと彼らを案内した。


夕矢と夕弦と剛士は応接室のソファに座ると正面に座った幹一を見て夕弦が唇を開いた。

「実は菱尾湖南の『木蓮』についてですが」


幹一は目を見開くと

「ほお、私が木蓮を持っていると知っておられるとは」

と告げた。


夕弦は頷いて

「ええ、俺達はその菱尾湖南の乙女シリーズを訳があって集めています」

と言い

「お持ちの『木蓮』をお借りしたいと思います」

その代わり

「同じ真作の『木蓮』も一緒にお渡しいたします」

と告げた。


幹一は目を見開くと

「そ、れはどういう?」

と聞いた。


夕矢は彼を見て

「菱尾湖南はほぼ同時期に乙女シリーズを訳あって二作描いているんです」

と言い

「一つは二重張りにして中にある写真を入れています」

そして

「一つはその事を悟られないために手元に置いていました」

と告げた。


幹一はジッと暫く夕矢を見ると急に笑って

「目が動かないですな」

と言い

「良いでしょう」

お渡しします

「二枚になるので並べて置くのも一興です」

と告げた。

「もし誤魔化したり嘘をついていたら断りましたが…その話本当だと思うので」

いいですよ


夕矢は立ち上がると

「ありがとうございます!」

と頭を下げた。


幹一は笑いながら

「いやいや、二枚になるこっちが礼を言いたい」

と答え

「今お渡しします」

と立ち上がった。


夕弦も剛士も顔を見合わせて安堵の息を吐き出した。


その後、夕矢と夕弦と剛士は彼の美術館の美術品を見て、豪華な昼食を食べて菱尾湖南の『木蓮』を手に自宅へと戻った。

が、駐車場に車を入れかけた時に津村隆から連絡が入った。


津村家が所有する東京太陽ミュージアムに怪盗クロウからの予告状が届いたとの連絡が入ったのである。


夕矢はそれを聞くと

「いく!」

俺も行く!

と告げた。


夕弦は頷くと

「末枯野、連れていってやってくれ」

と告げた。


剛士は頷くと

「じゃあ、連続だが」

と夕弦を降ろすと夕矢と共に東京太陽ミュージアムへと向かった。


文京区にあり津村家の所蔵の美術品が常設展示され、その時々に合わせた期間展示もある比較的大きな美術館であった。


そして、この日から期間展示で日本洋画展をしていたのである。


二人を出迎えたのは津村隆であった。

「よ!」

それから夕矢君、忙しいところすまないな


夕矢は首を振ると

「俺、怪盗クロウの予告待ってたから」

と答えた。


隆は「ん?そうなのか?」と告げた。

夕矢は頷いた。


隆は「そうか」と言うとミュージアムの中にある応接室へと二人を案内した。

そこで予告状を出した。


『9月16日に中村早雪の紅葉と仔犬をいただきに参上いたします 怪盗クロウ』

そう書かれていたのである。


剛士はそれを見ると

「明日か」

と呟いた。


隆は頷いた。


剛士は彼を見ると

「クロウは絵を傷つけないが盗む手法に関してはフライングぎりぎりの手段を選ぶ時があるからな」

と告げた。


隆は「なるほどな」と言い

「だったら、今日から警備を強化しておくか」

と呟いた。


夕矢はそれに

「俺も!今日から詰める」

と告げた。

が、それには隆も剛士も

「「だめだ」」

と告げた。

夕矢は唇を尖らせ

「でも、俺…クロウと対峙して伝えないといけないことがあるんだけどなぁ」

と告げた。


隆は顔を向けると

「何を?」

と聞いた。


夕矢は「えーと」と言い

「春彦さんに合わせないとダメなんだ」

と告げた。


隆は「春彦君か」と言い

「まあ、分った」

と笑むと

「だが、予告は明日だ」

未成年の夕矢君を徹夜はさせられない

「俺と末枯野に明日の朝までは任せてくれ」

と告げた。


剛士は頷いて

「そうだ、明日一番に迎えに行く」

と告げた。


夕矢は「わかった」と答えた。


剛士は安堵の息を吐き出し夕矢を連れてマンションへ行くと夕食を食べると東京太陽ミュージアムへと戻った。


そして、翌日。

夕矢を呼びに戻ったのである。


ただ。

そう、ただこの時、隆も剛士も夕矢も思わぬ助っ人が現れるとは思っていなかったのである。


最後までお読みいただきありがとうございます。


続編があると思います。

ゆっくりお待ちいただけると嬉しいです。

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