怪盗クロウと真贋の意味
修一郎は二人を連れて建物の裏手通路を通り地下にある保管庫に案内した。
「ここに所蔵品と借り受けた美術品を保管しています」
夕矢は保管庫を見回して
「展示していない美術品結構あるんだ」
と呟いた。
修一郎は笑って
「勿論、他の美術館でもそう言う感じです」
と答え、一番手前の棚のケースを手にすると
「上で」
と応接室へと戻った。
そして、テーブルの上でケースを開けると
「これが安積美術館から借り受けた写恵の伊勢街道14景の白子宿です」
海に近い場所を通るので海の風景が描かれています
「初摺なので色も美しい」
と告げた。
確かに色彩が美しい浮世絵だ。
が、夕矢はう~んと唸ると
「写恵って確か17世紀後半から18世紀前半の有名な浮世絵師だったと思うんだけど」
と呟いた。
修一郎は頷くと
「ああ、そうらしいね」
と言い
「安積美術館のオーナーである安積操江氏から浮世絵はどうかと勧められてね」
私は洋画専門だったので浮世絵は余り知らなかったんだが
「浮世絵の世界ってタイトルでイベント的にするのは悪くないと思って借り受けたんだ」
と告げた。
夕矢は視線を下げると
「これ、多分…初摺じゃないし…本物でもない気がする」
と告げた。
修一郎は目を見開くと
「は?」
と言い
「いや、まだ怪盗クロウの予告の日ではないし…借り受け時に確認してから今回が二度目だ」
と慌てて告げた。
最後までお読みいただきありがとうございます。
続編があると思います。
ゆっくりお待ちいただけると嬉しいです。




