小説を書くためには
書き方をひたすら特訓される。基本的な句読点の使い方や小学校で習う“てにをは”まで。表現の仕方も、一つの文章につき、考え切れる限り、全てのパターンを考えさせられた。
つまり、ただただ、同じような文章を大量に書かされる日々だった。唯一助かったところは、手書きじゃない点だ。手書きなら確実に腕が壊れた。1日12時間以上は毎日書き続けている。受験生のときでも、もう少し手を使わなかったと思う。そんなにも何を書いているかって思うだろう? 今までの俺の人生だ。それを物語調に書かされている。その時の感情を思い出して。……仕事できつかったことも思い出して、思わず感情がそちらに引きずられそうになった。しかも、素敵な世界の建物の中に監禁されて。
「うーん……まぁ、文としては読めるようになったんじゃない? じゃあ、これからは毎日、日記を書きなさい? 最低10000字。それくらいは書ける経験を毎日させてあげるわ? しかも、それを私が添削してあげるのよ? だから、夕食前までに私に提出しなさい。」
「わかりました。ありがとうございます。我が神」
神に添削してもらえるなんて、夢のような話のはずなのに、嬉しさが込み上げてこないのは何故だろう。この修行期間で、俺は、調教されたように絶対服従をいつの間にか身につけさせられている。恐ろしい。不思議だ。
基本的な文の書き方の合格をもらって、やっと外に出ることができるようになった。外だ! 念願の外だ! 元の世界でもいいくらい渇望した外だ! 夢の世界を見て回れるなんて、最高すぎる!!
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神の案内で街に繰り出した。ヨーロッパ調の異世界の美しい街並みだ。カラフルな煉瓦造りの家が愛らしい。売っている食べ物も香りも全てが俺にとっては、高級料亭の料理に見える……見たことも食べたこともないけど。道の石畳すら愛おしくて頬擦りしてしまいたい。あの街路樹の葉っぱで服を作って、一生着ていたい。行き交う人々もみな、元いた世界とは違う色彩だ。美しい。降り注ぐ日光が幸せすぎて、全裸になって日光浴をしたい。そんな俺を気味が悪いものでも見るような目で見て、神が問いかけてきた。
「ねぇ、らいとってどんな話が書きたいの? 今までは、異世界恋愛系書いてたじゃない? 読んだ感じ、恋愛経験なんてないんでしょうけど」
ぐさりと、何かが胸に刺さる音が聞こえた気がする。そうだ。彼女と言えるかわからない人が、過去に1人いただけで、豊富な恋愛経験なんてない。男同士つるんでた方が楽しいしな! ただ、そこは答えないでおこう。俺の名誉のためにも。
「異世界恋愛系は、ウケそうだなって書いてただけで、本当は、バトル系が書きたいです。恋愛とかハーレム要素ももちろんあった方が盛り上がると思うけど、主人公が魔獣をばっさばさ倒したり、俺tueee系がいいっすね……使える魔術がチートとか……」
夢見た顔で俺が語っていると、神が何やらメモを書いている。神の作品は、恋愛要素もあるけど、バトル要素も多くて読みやすいんだよなぁ。俺もあんなの書けるようになりてぇな。
「おっけー! わかった! じゃあ、魔術使えるように修行して、魔獣倒しまくろっか? 今までの文章読んだ感じ、らいとは、絶対に体験しないと書けないから」
「へ? え? わかりました」
思わず、了承したが、魔術を使えるように修行? 倒しまくり? 神がこの世界を作ったんだから、何か力を使って、俺をチートにしてくれるんか?
「じゃあ、とりあえず、あの山。登ろっか?」
そんな期待した俺がバカだった。この神、体育会系すぎん? 絶対、前世強豪校の体育会系の部活やってた男だろ。神が指差した先には、どす黒いオーラの漂う、急勾配が多そうな山が聳え立っていた。富士山よりきつそう。
「言っとくけど、作家時代の私は、心も身体も女だから。趣味はお菓子作り」
振り返りながら、俺の心を読んだかのように、怒った顔した神が言った。怒った顔もかわいいな……じゃなかった、心読めるのか? 心読めたら修行中の罵詈雑言も聞こえてるじゃねーか! それはまずい。神の作ったお菓子か……いい意味でも悪い意味でも、想像つかねーな。
そんなことを考えているうちに、神は意気揚々と山に向かって歩いていく。
「ちょ、神! この装備のまま行くんすか? 俺の武器は?」
「うーん? やっぱ、初期装備は木の棒でしょ!」
「死にます、ラスボス戦に木の棒で挑むようなものです。あの山見た感じ」
「ま、いろいろ出てくるけど、大丈夫だって! 死んでもなんとかしてあげる! 私、神だし?」
多分、普通に死んだ。死にかけただけだと思いたい。倒れた時に、何度か有名そうな川を渡り掛けた。渡ろうとしてるおじいちゃんおばあちゃんがたくさんいる川だった。俺もそれを渡ろうとすると、神が笑顔で止めにくる。ぶん殴られて引きずって元いた場所まで戻されるんだ。意識が朦朧としてるから仕組みはわからねー。ただ、一つ言えることがある。俺は絶対主人公をこんな目に合わせない。チートつけまくりにしてやる。……ちなみに、知ってるか? 俺がいるの、まだ山の麓なんだぜ?
小説の書き方はよくわかっていないので、適当なこと書いててすみません……ぜひ、みなさま書き方を教えてください。
そして、読んでいただいて、さらに、いいねやブクマ、評価ありがとうございます!嬉しいです。